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普通においしい、新しい食の未来

 普通においしいカレー。言われてみないと(言われてみても)コオロギが原材料に入っているなんてわからない。コオロギと昆虫食を研究している「グリラス」の商品を食べている。

左からトマト、イカスミ、グリーンカレー。

 カレーの味は三種類あって、どれにもコオロギ粉末が入っている。らしいのだけど、試しにトマト味を食べてみたところ、特にそれらしい感じはなかった。普通に中辛のトマトカレーだ。肉は大豆ミートを使っているとのことで、噛み切りやすい。

トマトカレー。ご飯は玄米。

 次にクッキーとクランチチョコが届いた。こちらも原材料に「食用コオロギパウダー(国産)」と書かれている。写真は皿に乗せたクッキーと、大きさ比較のために置いた500円玉。

クッキー(ココア味)

 クッキーは、食べると口の中の水分が持って行かれる感じがある。粉っぽいと言うか……。個人的にはしっとりしているほうが好きだ。クランチチョコは若干ビターな甘さとしっかりした歯ごたえで、どちらからもコオロギは感じなかった。
 
 「昆虫食は食糧危機を解決する手段として熱い視線が送られている」……なんて話をときどき聞く。でも自分はいままで、昆虫食を食べたことがなかった。だってまちなかに売ってないし、わざわざ買ってまで食べる理由がないし。
 特に虫好きでもないので、昆虫の姿そのままで食べろと言われたら食べない。今回このシリーズを買う気になったのは、コオロギの影も形も見えないからだ。パウダーとして入っているだけでは、味覚の鋭敏な人以外、まずわからないだろう。
 
 昆虫感を期待する人はがっかりするだろうけど、「普通においしいのが食べたい。ついでに昆虫食とやらも試してみたい」人にはおすすめできる。自分がリピートで買うかはわからない。カレーはストック用にまた買ってもいいかな……。
 食用コオロギは「タンパク質豊富」というメリットがあるので、栄養を気にする人にはいいかもしれない。自分はそこまで成分にこだわりはないので、普通に食べられておいしければ食べる。カレーに入っていた大豆ミート(噛み切りやすい)はよかった。
 
 今回「グリラス」の商品を買ったのは、図書館で借りた本の中に登場したからだ。『最先端コオロギ学』なる本で、内容が(自分の知識が追いつかないからさっぱりなところもあるけど)おもしろい。
 たとえば「STAP細胞はあるかもしれない(p.101)」とか、コオロギが鳴くようになった過程はいまだ不明である(p.167)とか、ふーんそうなんだと読んでいたら、途中にこんな文章が出てきた。
 
 「本書において、コオロギが食用としても実験動物としても非常に有用な生物であることを紹介してきた。2021年、多くの企業がコオロギを用いた食料品の販売を開始している(p.203)」。
 「筆者は㈱グリラスを創業し、コオロギを”サーキュラーフード”にする事業を展開している。その一環として、良品計画と提携して、コオロギせんべいやコオロギチョコを販売するとともに、自社ブランドのクッキーやカレーを製作し販売している(p.205)」。
 
 そういえば無印良品が出してたコオロギシリーズ、あれの背後にこの人たちがいたのか……と思う。
 サーキュラーフードとは、捨てられる予定だった食品を活用してあらたに食料を生みだす循環(サーキュラー)、「環境にやさしい」食品を意味する。コオロギは食べ残しを餌にできるし糞は肥料になるしで、循環型食物として申し分ないらしい。へえ……。
 
 へえ、と思った勢いでホームページを見に行き、買ったのが今回のカレー、クッキーとクランチチョコになる。やっぱりよかったのはカレーかな、名前の通りちゃんとトマトだった。残りの二種、イカスミとグリーンカレーはこれから食べてみる。
 別にコオロギに思い入れはないけれど、普通においしいなら普通に買って食べる。

グリラス公式HP


書籍はこちら。野田澄晴編『最先端コオロギ学 世界初!新しい生物学がここにある』北隆館、2022年。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。