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時間のない世界、悟り

 時間というと過去から未来に流れる、時計で表される時間のことを思います。この時間を感じるのは「意識」です。「意識」には時間の概念があるので、記憶を時系列にまとめる機能(エピソード記憶)があります。
 そして「無意識」にも時間はありますが、「意識」の時間とはまったく異なります。道元禅師有時(うじ)中山正和さんのパロール時間というものです。
 例えば「走る」という行動にも、後と先があります。木が燃えると、元には戻りません。覆水盆に返らずですね。このように「意識」のかかわらない「無意識」にも時間が組み込まれています。短く、時系列には並びません。これを有時、パロール時間というのです。
 つまり本来の時間は、ブツブツと細切れになっていて、つながってはいません。つなげるのは「意識」です。「意識」の少ないイヌやネコなどの動物にはつながった時間はなく、細切れの有時、パロール時間しかありません。だから過去にも未来にもとらわれず、安心立命しているのです。
 これこそが仏教の求める悟りなのです。座禅、荒行、念仏、題目で、無意識主体となり、有時、パロール時間の世界に浸るのです。禅の「今ここに生きる」です。

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