心の通訳なしで: ホーバス監督の日本バスケ愛とリーダーシップ哲学
バスケットボール男子W杯の順位決定リーグO組で日本はカボベルデに打ち勝ち、今大会のアジア代表として1位の座を獲得。これにより、24年後のパリ五輪の出場権を得ることができ、76年モントリオール五輪以来、約半世紀となる48年ぶりの大快挙を達成した。この成功の背後には、21年東京五輪で女子日本代表を歴史的な表彰台に導いたトム・ホーバス監督の存在が大きい。
ホーバス監督のリーダーシップは、心理学的に見ると、彼の強烈な信念と、選手たちとの深い信頼関係に基づいている。彼は21年東京五輪での女子チームの銀メダル獲得後、その卓越した戦術眼と指導力が評価され、男子チームの指揮官として抜擢された。男子チームでの初めての経験となる中、彼は女子チームでの成功をもたらした高速なテンポと3点シュートを中心とした戦術を取り入れた。初戦での敗北など、挫折もあったが、彼は選手たちに「私は皆さんを信じています。だから私を信じて下さい」というメッセージを伝え続けた。
この信頼の深さは、選手たちが彼を「トムさん」と親しみを込めて呼ぶことからも伺える。彼は選手のポテンシャルを引き出すために、時には厳しく指導することもある。河村選手がシュートの積極性を欠いた時、彼は激しく叱責した。しかし、この叱責は河村選手の得点意識を高めるきっかけとなり、次のシーズンでの最多得点記録へとつながった。
男子チームの指導にあたって、彼はプロ選手のプライドや、実業団の女子選手とは異なる独特の距離感に最初は戸惑った。しかし、チームの絆を深める過程で、信頼関係の構築において男女の違いはないことを実感した。女子代表時代と同じように、選手たちへの信頼を核にして、真摯に向き合い、心からのエモーションで指導を続けた。彼が“Beleave”という言葉を大切にしているのは、信頼を絶対的な価値として捉えているからである。彼の言葉は、選手たちの中で強い共鳴を生んでいる。
ホーバス監督自身の経歴も、彼の指導哲学に影響を与えている。90年に日本へ移住し、トヨタ自動車のバスケットボールチームでプレー。選手活動と並行して、普通の会社員としてのデスクワークもこなしていた。彼の日本での実績は圧巻で、4年連続の得点王を獲得。その実績が認められ、94年にNBAホークスと契約し、世界最高峰の舞台でプレーを果たした。彼は日本での経験がNBAでのプレーに繋がったと感じており、日本バスケ界への感謝の気持ちは強い。
最終的に、パリ五輪の出場権をかけた試合でカボベルデに勝利を収め、ホーバス監督の下、チームは5試合を乗り越えて五輪出場権を獲得した。
心理学的に考察すると、ホーバス監督のリーダーシップは、信頼と真摯な対応、そして選手一人一人の可能性を信じる姿勢に基づいている。彼の指導には、選手たちの内面を理解し、彼らの最大の能力を引き出すための独自の哲学が感じられる。
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