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失敗してもいいんだよ!職場の心理的安全性を高める

上司に質問や相談をしたいけれど、「そんなことも分からないのか」と思われる不安から、質問や相談を躊躇してしまう。
ミスを強く叱責されることを恐れるあまり、報告しないでいて、後々大きなトラブルになってしまう。
こんな経験をしたり、見聞きしたりしたことはありませんでしょうか。

このような状態が日常的に続いてしまうと、仕事へのモチベーションが低下してしまいます。また、円滑なコミュニケーションが取れなくなり、人間関係も悪化してしまうでしょう。

しかし、職場を何でもモノを言えるような空気感にすることで、ミスを無くすことや、イノベーションを興すことができるようになります。

この記事では「職場の心理的安全性」について考えます。

心理的安全性とは

ハーバード大学の組織行動学者エイミー・エドモンドソン教授は、世界で最も影響力のあるビジネス思想家に選出されており、「心理的安全性」の第一人者です。

チームの心理的安全性とは、対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え
" a shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking "

Amy Edmondson
(1999)"Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams"

▷Googleが発見した、チームに圧倒的重要な要素

「職場の心理的安全性」とは、欧米ではTeaming(チーミング)と言われる分野として、1960年代から研究が進められています。

そしてGoogle社が2012~2015年までの4年間に行った生産性向上のための労働改革プロジェクトにおいて、Google社が成功した理由として「心理的安全性」が挙げられました。

このレポートをきっかけに、世界中の多くの企業が「心理的安全性」に注目するようになりました。

▷ミスについて率直に報告し、話し合う

エドモンドソン教授は「良いチーム、良い患者ケアチームほど、ミスが少ないのか?」というテーマにおいて、医療施設での投薬ミスの割合を調べ、評価する調査を行いました。
チームの有効性を評価するために標準的なチーム調査手段を使用し、訓練を受けた看護師の調査員が 2つの病院の様々な病棟を6か月間、数日おきに訪問しました。
また、追加の調査では、研究助手を派遣し、職場環境のオープンさについて評価させましたしました。

Amy Edmondson"Building a psychologically safe workplace"TED Talksより当社作成

このように、ヒューマンエラーとみなされた投薬ミスと、職場環境のオープンについて相関関係は非常に高いことがわかります。

エラーについて議論する意志があるか、能力があるか、そして実際に話をしているのか、という点で大きく異なるということがわかりました。
実際に、調査対象チームの内いくつかは、常に、積極的にミスについて話をしており、ミスを減らす新しい方法を見つけるために一緒に努力し、協力しようとしていた、ということでした。

なぜ「心理的安全性」が注目されるのか

昨今、日本においても「心理的安全性」が注目されつつありますが、それにはどのような背景があるのでしょうか。

▷失敗が許されない文化

令和2年度の厚生労働省委託事業である「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」があります。
その調査結果によると、パワハラが起きやすい職場の特徴として、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」といった項目が、5位として挙げられています。

東京海上日動リスクコンサルティング株式会社(令和3年)「職場のハラスメントに関する実態調査」より当社作成

さらに、パワハラを受けない職場ほど、「悩み、不満、問題を会社に伝えやすい」環境であることが分かります。
これらの結果から、何でも気軽に話し合えて失敗の許容度の高い「心理的安全性」を確保できる職場ほど、パワハラの発生を抑えられることが読み取れます。

東京海上日動リスクコンサルティング株式会社(令和3年)「職場のハラスメントに関する実態調査」より当社作成

職場の風通しがよくなることで職場の人間関係が改善し、仕事に集中しやすい環境が維持できます。また、メンバーが発言しやすい環境ができます。
そのため、質問や意見、ミスの報告をする際の心理的なハードルが低くなり、イノベーションが生じやすくなったり、情報の共有が迅速にできるようになったりします。

▷休職、退職につながるメンタル不調

メンタルヘルスは決して他人ごとではなく、日本では約15人に1人が、一生のうちに一度はうつ病にかかるといわれています。
働く人にとって、職場の環境はストレスの大きな要因となり、メンタルヘルスの悪化を引き起こします。

厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和3年(2021年)のパートタイムを除く一般労働者の離職者数は約413万人となっていて、前年と比べると約20万人も増加しています。
さらに、メンタルヘルスで休職している人の退職率は、がんに次いで高いことも分かります。

労働政策研究(2013)「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」より当社作成

さらに、メンタルヘルス以外の身体疾病の場合は、元の職場に復帰する割合がほとんどになります。しかし、メンタルヘルスの場合は、約25%の人が離職してしまっているのです。

労働政策研究(2013)「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」より当社作成

従業員の退職は、会社に様々な損失を発生させます。その損失は、大きく分けると金銭的な損失と非金銭的な損失になります。
金銭的な損失は、一般的に年収の約半分といわれ、勤続年数によっては1,000万円以上におよぶ場合もあります。

さらに、非金銭的な損失としては、次のようなものもあります。

  • 蓄積された知識の損失

  • モチベーションの損失

  • 会社イメージの損失

このような大きな損失を防ぐためには、心理的安全性を確保した職場にすることが必要になってくるのです。

さらに、ストレスが軽減されれば、仕事のやりがいを感じやすくなり、会社に対して愛着が生まれます。すると、仕事へのエンゲージメントが向上することにもつながっていくのです。

心理的安全性が高い職場を構築するには

では、オープンな環境はどのように構築するのでしょうか?チームを率いる
リーダーであれば、多くの人が「心理的安全性が確保された職場にしたい」と考えていることでしょう。

エイミー・エドモンドソン教授は以下の3点を原則として挙げています。

1.仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える
2.自分が間違うということを認める
3.好奇心を形にし、たくさん質問する

Amy Edmondson"Building a psychologically safe workplace"TED Talksより当社翻訳

まず、仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉えます。仕事において不確実な事柄や、互いに力を必要とする場面が数多くあることを認識し、明確にします。経験したことのないこと、予期できない未来に立ち向かうには、チーム全員の頭脳と意見が必要です。それが、声を上げる理由になります。 

次に自分自身の誤りを認めます。間違いを犯すこともあると自分自身も分かっているはずです。そしてこれは部下や同僚などにも当てはまります。そうすることで、声を上げるために必要な、心理的安全性が高まります。 

最後に、好奇心を形にし、たくさん質問します。これによって必然的に意見を述べる機会が生まれます。

アクセルではなく、ブレーキを緩めること

ここで多くの方が懸念される点は、モチベーションや責任感との関係性です。エドモンドソン教授は、「心理的安全性」はブレーキを緩めるという意味で、アクセルを緩めるという意味ではないといいます。

Amy Edmondson"Building a psychologically safe workplace"TED Talksより当社作成

モチベーションと心理的安全性、どちらの課題にも取り組まなければ、無関心ゾーンに入ってしまいます。
心理的安全性のみに取り組んだ場合、「心地よいゾーン」に入りますが、会社の利益は二の次になってしまいます。逆に、仕事を完璧に遂行する責任ばかりを求めて、人々がお互いに安心して話ができる環境づくりを怠った場合、不安ゾーンに入ってしまいます。
エドモンドソン教授が目指す、ここでの一番の理想は学習ゾーンのずっと上の方だと言います。


上層部が「失敗なんて気にしなくていいよ」と言ってくれるようなオープンな職場であっても、そのような状態や空気感をつくることは簡単ではありません。また、ヒエラルキー構造になっている組織の場合、このような状況を実現することは難しくなっているでしょう。

しかしどの職場においても、目の前の困難な仕事に全力を尽くすことができる人材が必要です。「心理的安全性」が保たれた職場では、チーム内のメンバーが、自由にモノを言え、提案することができます。さらに、自らの失敗を躊躇なく明らかにすることができます。
人々に学びの機会を与え、貢献できる人材を育てることができるような職場を作るため、心理的安全性の確保は不可欠と言えるでしょう。

参考文献

  1. 加藤裕之(令和 3 年)「心理的安全性 ~安心して発言し、失敗から学ぶ組織づくり~」コンセプト下水道【第21回】

  2. 日本看護協会 コラム 「職場の心理的安全

  3. NTTラーニングシステムズ 「エンゲージメントを高めるには? 4つの具体策を解説

  4. 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト 「上司・同僚の方へ:ご存知ですか?

  5. 厚生労働省(令和3年)「雇用動向調査


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