小噺①

20XX年、地球は将来的なエネルギー問題に直面していた。
環境破壊に繋がる生産施設は世間の声を受け軒並み廃止され、そうでないものでは生産量が足りない。
持続可能なエネルギーの発見が目下最大の課題となっていた。

そんな夢のエネルギーは発展し切った人類の科学が探索し尽くした地球には見つからず、いよいよ宇宙へと目を向けるべきではないかという声が上がり始めていた頃、日本の山奥の村に住んでいたある少年が空に屋根・・ができていたことに気づいた。

「夜が来た」

突如現れた未確認飛行物体を、日本政府は便宜上Xと呼称。
自衛隊機による調査結果が待たれた。
しかし、結果はXからの攻撃対応による全機墜落。
ここに後に「略奪戦争」と呼ばれる大規模な戦争が幕を開けたのだった。

日本はまず、周辺国家に対して協力体制を呼びかけ、自衛隊による周辺地域住民の避難、及び攻撃行動を開始した。
Xのサイズは日本の横幅を超え、ユーラシア大陸寄りに、ロシアの一部まで覆うように縦長、或いは横長の機体を持っていた。
故に、日本が仮に壊滅した場合には他国への攻撃を開始する可能性があり、他人事ではなかったために、ロシアを初め多くの国が戦争に参加した。

また、Xがどのように浮遊しているのか判明してないために、未知のエネルギーを機体維持に使用している可能性が高く、むしろ戦争への参加権・・・・・・・が争われる程に各国は挙ってエネルギーの利用権を主張した。

故に、この戦争は「略奪戦争・・・・」であり、人類史初の、一丸となっての戦争となった。
この間、Xに乗っているであろう存在に関してはどの国も触れなかった。
もちろん、突如現れた存在が攻撃してきた事実はあったが、それでも乗っている者が人間に類する存在であれば、それらを殺害してしまうのは道義的にどうなのかという声もまた世界で上がっていた。
自分達が抱えた問題を、争いによって解決するのか。
彼等の疑問提議は正しく、正しかったが故に結論を出す間は無かった。

Xはエネルギー不足で墜落した。

墜落し、その後日本政府によって接収されたXの中身は、継続的な生活が可能なエリア、銃器、資源等を積んだ倉庫エリア、全体の操作を担う管制エリア等、幾つかに分かれており、それら全てに現人類では及ばない高度な技術が行使されていた。
最も注目されていた原動機と見られる部分には未知の技術こそ見られたものの、切望されていたエネルギー問題を解決するような部分は見られなかった。
一点、生活エリアにはまるでたった今、人が消えたかのように大量の衣服と靴が散乱していたのだった。

そうして、戦争は終結した。
結果的に、最初の攻撃によっての被害以外には損害なく現れた敵の技術を接収できたことも、「略奪戦争」の所以だった。
日本が中心となり、戦争に参加を表明し武力を提供していた国家から順にXの機体は提供され、その未知の技術は世界全体の技術レベルを大きく引き上げた。
しかし、エネルギー問題を解決することはなく。

そして、「略奪戦争」で一つになった経験を活かし、国際的にXを研究する機関が産まれ、大きな技術革命が訪れた。

それから100年後、エネルギーの枯渇は現実となり、発展した技術だけが人類には残っていた。
そこで、100年前にやってきたXを参考に宇宙船を作り、広い宇宙にエネルギーを求める旅に出るプロジェクトが始動した。
思えば、継続的な生活が出来るように機体内部に生活エリアがあったのも、Xを操作していた何者か等は、我々と同じ問題を抱えていたのかもしれない。
こうして、宇宙船の開発は始まり、発展した技術は10年で宇宙船を完成させた。

完成した宇宙船はタイムマシンだった。

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