ワンオペサロンの倒産リスクが高まる5つの原因を深掘りしてみた - ④経営の戦略性
前回までの続きです。
①集客力不足とその対策
②業務効率の悪さとその対策
③お客様の満足度の低さとその対策
帝国データバンクのまとめによると、2024年国内で倒産した脱毛サロン(含むクリニック)の軒数は、14軒にもなるとのこと。
大手だけでもこの軒数なので、水面下で閉業を迫られている個人経営の脱毛サロンはかなりの数あると予想できます。
個人サロンが閉業するとき、共通して次の5つの原因があると考えられます。
集客力が足りない
サロン業務の効率が低い
お客様の満足度が低い
サロンの経営に戦略性が乏しい
セルフマネジメント能力が低い
この5つの原因の解説と、対策についてお伝えしていきます。
なお、このシリーズは主に「メンズ脱毛サロン」についての解説になりますが、
個人経営
美容サービス提供サロン
男性のお客様メインで集客
経営者がお客様対応の全てを担当
という個人サロンなら、どの分野でも当てはまると考えてOKです。
今日は「サロン経営の戦略性」について、ワンオペサロンで陥りがちなポイントと、その対策について考えていきます。
ワンオペサロンの経営に攻めも守りもないとどうなる?
[戦略不足①]競合調査ができず料金設定を見誤る
美容や健康の仕事を個人でやれば稼げるだろう、という考えで開業した場合、近隣の競合調査が疎かになりがち。
どんなサロンがどんな価格帯で集客しているのかを知らずに、「安くすればお客様が来る!」と短絡的に料金を決めてしまうと、手元に残る利益が確保できない、といった状況に陥ります。
ちょっと前のメンズ脱毛業界では、「出店即売上」と謳われていたので、こういうパターンで開業された方が結構多かったのではないでしょうか。
しかし、そもそも今の時代、安ければ必ず売れる、というわけではないので、料金設定にも戦略が必要になります。
[戦略不足②]行き当たりばったりでマンネリ化する
安くても売れないのは、お客様がサービスを見る目がひと昔前より断然厳しくなったから。
どのサロンでも見るような安易なキャッチコピー、変わり映えのしないメニュー、常に開催しているキャンペーンはスルーの対象です。
サロンのサービスがマンネリ化していると、お客様への刺激が足りず、飽きられる原因になります。
脱毛ならリピートありきのビジネスなので、最後まで通っていただくための創意工夫がないと、本当の意味でのリピーターはつきません。
[戦略不足③]無計画で現状打破できないまま資金不足に
このように攻めも守りもない、行き当たりばったりの経営で売上が悪くなっていくと、メンタルがどうしても悪化。
現状打破のアイディアが思いつかなくなっていきます。
特にメンズ脱毛は、大量の広告のせいで、お客様のより厳しい目線にさらされています。
アイディア不足で身動きが取れなくなると、その分資金不足に陥ることに。
広告も出せないので集客も悪化。
経営が下り坂のときの守りの姿勢を知らないので、どんどん負のループにハマります。
そもそも経営って、いつまでに何を達成する、といった計画ありきで進めるもの。
開業前に融資を申込むとき、事業計画を作っているならまだしも、思いつきで開業していると、常にその場限りの経営しかできず、いつどれくらいの売上が必要か目標がありません。
個人サロンが不安定になりがちなのは、こういった理由のせいです。
それではここからは、ワンオペサロンが倒産に陥らないための経営戦略をお伝えしていきます。
読んですぐ実践できるものもまとめています。
ぜひ参考にしてください。
ワンオペサロンが取るべき戦略的経営はこれだ
[経営の戦略化①]料金設定を総合的に見直す
まずは、エリア内の競合サロンが、自店と同じメニューをどの価格帯で売っているかを調べ尽くしましょう。
Googleで「業種+エリア名」で検索し、店舗のアカウントを20軒前後ピックアップして調べることをお勧めします。
ここで調べた他店の料金や、営業形態、大手・個人店の別など、特色をまとめれば、それだけで戦略の骨組みが見つかります。
最低限必要な情報として、できるだけ早いうちに調べておきましょう。
メンズ脱毛で言えば、部位ごとの料金を全て調べます。
ヒゲ、VIO、全身などの、どこでも人気なメニューはもちろん、腕や脚など、とにかく公表されている全てのメニューをチェックしてください。
同じ部位でも、サロンごとに施術範囲が変わります。
よくあるのは、全身というメニューにヒゲとVIOは含まれない、というものですね。
他にもチェックすべきは、腕や足に指と甲は含まれるのか、胸と腹、背と腰はそれぞれ別なのか、Iライン=陰部は陰茎・陰嚢に分かれるのか、など。
細かい調査になりますが、これが他店との差別化のヒントになるので、ぜひ入念に調べてください。
その上で、20店舗の料金の平均より、やや高めに攻めるのか、より安くお得な価格帯でアピールするのかを、決めればOK。
今来ていただいているお客様の傾向を見て、相場からの上下を決めると、より今のあなたのサロンに合った=お客様に受け入れられやすい料金設定が可能になります。
また、これらの料金情報をまとめて、ブログなど長文コンテンツで発信するのもあり。
お客様が自分で調べる手間を省いて、サロン選びのポイントを伝えられるので、十分有益な内容になります。
[経営の戦略化②]施術にかかる原価を調べよう
料金設定に必要な原価も、ぜひ調べてください。
脱毛で言えば、マシンの稼働時間に必要な電気代、ハンドピ―スの照射数、使うジェルの量、タオルの枚数、使い捨てのシートなど、とにかくお金がかかる項目を全て洗い出します。
これに加えて、あなた自身の人件費も必ず上乗せしましょう。
一般的には、原価と人件費の合計額が料金全体の2~3割になるよう、料金を設定します。
上乗せされる金額が、あなたのサロンの利益になります。
ここまでの工程を省いて、料金の安さで集客しようとすると、サロンの利益そのものが少なくなるわけです。
なので、予約対応で忙しくなってもお金が足りなくなる、といった状況に陥ってしまいます。
原価から料金を設定すると、このリスクが抑えられます。
地道な作業ですが、戦略的に経営を続けていくためにも、ぜひやってみてください。
エリア内の相場との兼ね合いもあるので、上乗せ分の金額は適宜調整してOK。
1回の施術に、純粋に何円かかるのかが分かれば、お客様に提供するメニューの金額も自ずと決まります。
なお、単価が高い=一度にまとまった金額を受け取れるメニューでは、原価の割合は少なくなる傾向があります。
割合は少なくなるものの、低単価のメニューの利益と比べると、金額そのものが大きくなるので、問題ありません。
原価と利益の金額、メニューの金額を見るときには、この「割合」と「実際の額面」の両方から見るようにすると、より適切な料金設定ができるようになります。
[経営の戦略化③]プランの選択の幅を広げてみよう
料金がだいたい決まったら、回数券やコースなどの、「まとめ買い」のプランも作ってみてください。
これはお客様が、ご自身のお財布の中身と相談して、より賢くお金を遣えるようにするために必要な作業です。
ご来店の都度お会計をする都度払いが、今の世の中もてはやされています。
1回ごとの出費で、お財布へのダメージは少ないし、通うのを止めるか続けるかも、お客様側で決められるので、喜ばれます。
しかし、例えば10回通ったときのトータルの費用で見た場合、回数券やコースの方がお得になるように料金を設定すれば、都度払いを選ばなくなるお客様も出てきます。
予算に余裕がある方や、カードや決済アプリのポイントを貯めたい方などは、まとめて支払った方がプラスになると考える傾向にあります。
大手の倒産が相次いでいる脱毛業界では、昨今、高額なメニューは危険視されています。
しかし、その高額メニューはお客様のメリットにもなると、経営戦略の知識として覚えておくべきです。
サロンにとっても、高額メニューは一度に多くの利益を確保でき、設備投資などの資金作りにも役立ちます。
必要に応じて使えるように、アイディアだけでも出しておくことをお勧めします。
脱毛のように終わりのあるサービスでは、1から10までトータルでサービスを提供するコースを作れば、お客様が余計なことを考えずに、最低限の手間暇だけで通える環境も作れます。
高額=悪、という考え方を手放して、お客様のプラスになるメニューやプランを作ってみてください。
[経営の戦略化④]サービスの内容をより充実させる
サロンで提供できるサービスがマンネリ化すると、お客様が離れてしまうので、定期的な見直しをしましょう。
脱毛で言えば、メインのサービスのクオリティは、マシンにかかっているといっても過言ではありません。
資金が貯まったら、買い換えを検討しましょう。
安い買い物ではありませんが、長い目で見て、性能の悪いマシンでお客様の満足度が上がらないままサロンを続けるのは、得策ではありません。
逆に思い切ってマシンを買い換えただけで、お客様の満足度が爆上がりする、ということはよくあります。
脱毛以外でも、施術の効果がイマイチ上がらない、お客様の満足度が低いまま、というサロンは、メインのメニューで使う機器や化粧品類のグレードアップを前向きに検討することをお勧めします。
メインメニューのレベルUPができれば、他のオプションメニューを追加する余裕も出てくるでしょう。
メニューを複数設定すると、それだけ設備を増やすことにもなるし、ご自身で学ぶべきことも増え、手間暇が倍増します。
しかし、お客様にとっては、そのサロン一か所で全てのケアができるので、あちこち行く必要がなくなります。
この「一か所でトータルケア可能なサロン」という環境がお客様に提供できれば、それだけで満足度を上げることができます。
一つのメニューだけで勝負するのは、より専門的でプロフェッショナルなサロンとしての打ち出しができますが、そのメニューが必要じゃないお客様を100%逃すことになります。
あくまでメインのメニューが軌道に乗ったらで良いのですが、複数設定することで、倒産リスクを下げられるということは、ぜひ覚えておきましょう。
[経営の戦略化⑤]季節ごとのキャンペーンで売上の波を作ろう
年末年始、夏休み、冬休み、新年度、GWなど、お客様が羽を伸ばし、お財布の紐を緩めだすタイミングで、キャンペーンを開催しましょう。
期間限定のお得なメニューや、いつも通ってくださっている方への還元など、多くのお客様が喜んでくださるような内容を考えてみてください。
キャンペーン開催で大事なことは、お客様が求めている内容になっていることと、サロン側の利益がいつもよりも多く残るような価格設定をすることです。
お客様が求めているかどうか、その確率を可能な限り上げるには、日々の接客でのヒアリングが大事になります。
とは言え、お客様が真に求めていることは、無理に引き出せるようなものでもありません。
雑談の中でぽろっとこぼれてくる本音が、キャンペーンのヒット率に関わってくるので、見逃さないようにしましょう。
この工程を踏まずに、サロンの目線だけでキャンペーンを計画すると、大抵滑って売れないままで終わってしまいます。
仮に売れたとしても、十分利益が出るほどは売れません。
お客様が求めることは、季節によっても変わります。
正月や新年度スタートのタイミングでは、自分の変化や成長のために自己投資をしたいと考える方が増えます。
夏になると、肌の露出が増える関係で、脱毛の需要が増えますし、日焼け対策でスキンケアの需要も高まります。
冬になるにつれて、乾燥肌が気になる方にもスキンケアのアイテム、メニューが売れやすくなります。
夏と冬のボーナスが出る前には、お金の使い先を探すお客様が増えるので、そのタイミングでキャンペーンの告知をするのも効果的でしょう。
ただし脱毛の場合は、最終的な効果=要らない体毛がなくなるまでに時間がかかるので、そこから逆算してキャンペーンを企画する必要があります。
『真夏に自信を持ってファッションを楽しみたいなら、逆算して秋冬に始めよう』といった感じですね。
こういうお客様の希望に沿ったキャンペーンが実施できるようになると、普段の売上の2~3倍の売上を楽々確保できるようになります。
キャンペーンが成功すると、お客様は毎シーズンごと何かお得なことが起きないか期待してくださるようになります。
その回でキャンペーンに応募されなかった方が、別の回で応募されることもよくあります。
不定期でも良いので内容の良いものを開催できるよう、常にアイディアだけはストックしておくことをお勧めします。
[経営の戦略化⑥]サロンの経営を年単位で計画していく
何の目標もなく、自由気ままにサロンで働くのもありです。
個人経営だと、「生活に必要な分だけ稼げれば良い」という考え方もできます。
しかし、それはご自身の身体が自由に動くことが前提。
事故や病気でいつ働けなくなるかもしれないことを考慮に入れて、現場を引退することまで視野に入れて、年単位でサロンの経営の計画を立てることをお勧めします。
人間、何か目標がある方が活力が生まれるものです。
売上高はもちろん、年間の客数でも、クチコミの評価数でも何でも良いので、いつまでに何をどのくらい達成するか、目標を決めてみてください。
多店舗展開を考えている方は、特に最初の段階で綿密な計画を立てておくことが、後々の計画遂行に効きます。
利益重視でなくとも、自分が頑張れる目標を決めておくと、サロンを経営するモチベーションは高まります。
1か月ごと、四半期ごと、半年ごとに計画と実績を見比べてみて、方向修正をしてみましょう。
今経営が苦しいという方は、なおさら計画性が必要です。
安定させるのが難しいときには、経営の専門家に相談して、一緒に今後の方向を決めるようにしてください。
計画を立てるのが苦手という方は、前年の実績を基にして、それを毎月1%でも良いから超えることを目標にすると良いでしょう。
常に右肩上がりの経営を計画的にできるようになれば、倒産のリスクは最小限に抑えられます。
サロンの経営が続くことは、お客様が頭の先から足のつま先までトータルでサロンのお世話になるということにもつながります。
お客様があなたのサロン一か所で、骨を埋められるように、計画的な経営をぜひ。
【経営の戦略化まとめ】
それでは最後にまとめていきましょう。
ワンオペサロンが倒産リスクを下げるための戦略的な経営とは、具体的に次の6つの内容になります。
近隣の市場調査をした上で料金を設定する
原価を算出して、それに伴った料金を設定する
プランの選択の幅を広げてお客様のお財布のニーズに応える
設備投資とメニュー開発でマンネリ化を防ぐ
シーズンごとのキャンペーン開催でお客様の期待値とサロンの利益を上げる
経営の計画を立てて、自らのモチベーションを高めながら仕事をする
ぜひ意識してみてください。
続いての回が最終回で、「セルフマネジメント」について低下する原因と、対策をお伝えします。
Coming soon…
メンズ脱毛サロンの経営を知識とアイディアで極めよう
メンズ脱毛ロードマップでは、個人経営のメンズ脱毛サロンの、
潰さない
競合に負けない
お客様を離さない
こんなサロン経営を、2015年から継続中のワンオペ現場経験を基にサポートしていきます。
今後も続々と更新予定です。
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