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びしょ濡れになった話

朝起きる。今週はずっと雨の予報だったのに、今日は降ってない。今だけかもしれない。

そう思ってしまうと最後、かねてから済ませたかった用事のために、家を飛び出し自転車を漕いだ。

私には、移動手段が自転車か徒歩しかない。大阪のおばちゃんみたいな傘スタンド(下写真)も持ってないので雨の日には自転車に乗れないし、傘を差して歩く距離にも限界がある。その日の天気が行動の鍵なのだ。

用事に時間もかからないし、降ってないうちにちゃちゃっと済ませて戻って来ちゃおう。


傘スタンド

さて用事を済ませて建物を出ると、嫌な予感。

細長い雨が風に横流しにされながら、ざあざあと降っている。傘は持って来ていない。

自転車で15分か・・・帰ったらお風呂だな。

びしょ濡れになりながら走る私は、今日はついてないな、と思った。

* * *

少し逸れて、これは小学校低学年のころのお話。

私は友人との学校帰り、たった1度だけ、大粒の雨の土砂降りの中持っている傘を差さずに帰ったことがある。

とにかく雨が楽しくて、濡れるのがおかしくて、大笑いしながら下校した。

徒歩15分くらいの道のりをずっと濡れ続けて帰ってきた私を見てぎょっとする母親をよそに、私はすっかり満足した顔をしている。

友人も散々お叱りを受けたに違いないが、びしょ濡れになりながら走った私たちはきっと、今日はいい日だ、と思っていた。

* * *

漫画『よつばと!』1巻第7話、「よつばとおおあめ」にも、似たような話がある。

主人公のよつば(5歳)が、雷の音が聞こえた瞬間家を飛び出し、降り出した大雨に打たれ、びしょ濡れのなか両手を広げながら「おおー!!すっげー!!ひゃー!!」と喜ぶシーン。

それを見たとーちゃんが、「なんでも楽しめるよつばは無敵」だという。

これが例の、大人になると忘れてしまう、でも忘れたくないあのころの気持ち、ってやつなんだろうか。


びしょ濡れになっただけなのに、現実と思い出と漫画がリンクした、不思議な経験をしてしまった。

まだ雨降ってるけど、ちょっとお散歩してみようかな。

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