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パワプロで同名の選手を作られることについて

ずっと疑問に思っていることがある。

どうして男は、パワプロで知り合いと同じ名前の選手を作りたがり、そしてそれをその名を拝借した当人に、能力値とともに言うのか、ということだ。


パワプロこと「実況パワフルプロ野球」は、コナミから発売されている野球ゲームのシリーズ名称だ。1994年に「実況パワフルプロ野球'94」が発売されて以来ほぼ毎年、最新の選手データを収録した最新版が発売されている。

野球ゲームなので、もちろん野球の試合をすることが大きな目的であり、そのためのモードも複数搭載されているが、それらと同様あるいはそれ以上に人気な「サクセス」というモードがある。

「サクセス」は、端的に言えばシナリオに沿って選手を作成できるモードである。主人公はパラメータの低い状態からスタートとなるが、練習したり、さまざまなイベントを重ねながら能力値を上げ、無事プロ野球選手になれれば成功(サクセス)となる。

ここで作成した選手は、カスタムのチームに入れて、実際の試合モードでも使用できる。


「パワプロでお前作ったんだよ」

そう言われるときは、この「サクセス」モードで、お前と同じ名前の選手を作った、という意味だ。

お前の能力はミートがBでパワーが――なかなか熱心に伝えられるのだが、所詮はそいつのゲームデータの中の話でしかなく、聞いていてとても困ってしまう。


彼らは、「お前を作った」の前後に「〇〇でチームを作ってて」と付け加える。「〇〇」には、「この部活」や「このサークル」などが入る。

前述の「カスタムのチーム」の部分で省略していたが、パワプロでは、実在のプロ野球選手やOB選手などの他に、「サクセス」にて作成した選手から好きな選手を選んでチームを作成できる。

彼らは、知り合いの名で固めた「チーム」を何故かやたらと作りたがる。


また、これを告げてくる人の属性には、あまり傾向がない。

野球ゲームをするぐらいだから得てして野球好きではあるのだろうが、そのほかはてんでバラバラだ。

ちょっとオタク気質な人ばかりかと思いきや、スクールカースト最上位のまま人生を歩んできたようなチャラい男もいたりする。

だから、会社勤めを始めてしばらく経った頃、飲み会でくだんのチャラい男に、「お前のこと、パワプロで作ったんよ」と言われた。

そいつもまた「会社の同期でチーム作っててさ」と言った。

そして、そいつも能力値を告げてきた。


自身の所属団体などで統一した名前のみでチームを作る動機ならば、なんとなく想像がつく。暇つぶしである。

この自粛期間は、多くの人が「あつまれどうぶつの森」で都市開発や観光事業に勤しんでいるが、このゲームがなければ、男はみなパワプロでチームを作っていたのかもしれない。


分からないのは、それを作成した選手の能力値とともに本人に告げる、という行為のことだ。

野球チームに所属できる人数は決まっているから、人数の多いコミュニティになれば当然そこから漏れる名前も出てくる。

だとすれば、作成した旨を告げる行為は、「お前はメンバーに選ばれたんだぞ」という、選抜入りの通告なのだろうか?

しかし、その場合、能力を告げる行為は何を意味するのだろう?

先の峻別の暴力性と異なり、「これだけ高い能力にしたんですよ」という自慢のほかにどこか媚びのような発話は――。また、その「へつらい」の割に楽しそうな彼らの喋りは――。


あれはなんだったのだろう? そう考えて、都度上記のような疑問の連なりに絡め取られてしまう。

私にはずっと疑問なのだ。

答えの候補はいくつかあるけれど、明確なそれを出せずにいる。


【今回の一曲】

乃木坂46/太陽ノック(2015年)


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