眠気から冴えるための、冴えないやり方
眠れないときにはどうすればよいのだろうか。眠いけれど、今寝るわけにはいかない、といったとき――。
たとえば一夜漬けの勉強中、自動車の運転中。
そして、オフィスでの仕事中。
眠気覚ましにコーヒーは王道である。
眠気を覚ますといえばカフェインだ。山といえば川みたいに。
しかし、私がナウ進行形の眠さを解消したいのとは裏腹に、どうやらカフェインに速攻性はないらしい。
レッドブルなどのエナジードリンクはカフェインと多くの糖を含む。
カフェインの効果については既述のとおりだ。
そして過剰な糖分の摂取は、まあ健康にはよくない。
また、上記の効き目や健康のこと以外にも、エナジードリンクには、「オタク」およびその属性の人が多い職業の人が常用するイメージがつきまとう。
作業中の机上にその空き缶を並べているような。
そんな「いかにも」な姿になるのは、なんだか「ぶってる」みたいで気恥ずかしいから、私はエナジードリンクを飲むことがあまり好きではない。
そこで私がしばしば使うのが、ミンティアと炭酸水を使用する方法だ。
ミンティアの刺激を受けている舌に、炭酸水のシュワシュワで追い打ちをかけるのだ。
これがすぐに、なかなかにガツンとくる。
刺激は時に痛みに達し、ちょっぴり涙が出そうになる。
あとは少し、自席とトイレとを一往復ぐらい歩けば、いい感じだ。
この方法の利点は、必要なものの調達がオフィス内で完結するところだ。
ミンティアも炭酸水も、それぞれ置き菓子コーナーと自販機で買えるのだ。
ミンティア美味しい! 炭酸水美味しい!
そういいながら、舌をいじめ抜いて眠気を覚ます。
ミンティアはもちろん、あの黒くて辛いやつだ。
絶対に身体にはよくないことをしている自覚はある。
医療従事者が聞けば卒倒するかもしれない。
だが、エナジードリンクよりも罪悪感が少ないのだ。
痛みがすぐ来るからだろうか。
それでもう罰は受けたと感じるからだろうか。
この方法を使いながら、しかしときどき虚しい気持ちになることがある。
どうして、こんなことをしてまで、仕事をしなければならないのだろう?
そう、我に返ってしまうのだ。
ここでべつに頑張らずとも、頑張れるときに頑張ったほうが明らかに能率は上がるのに――。
そう考えたことがある人は、私だけではあるまい。
それでも仕事はやってくる。
なんてことない雑務ばかりが。
それに追われるうちに、気づけば就業時間を過ぎている。
もう帰ろう。もう働く義理もない。
そう思って帰り支度をしているときに限って、上司からの着信がある。
電話に出る。
出た瞬間、気づかなかったふりをして帰ればよかった、と思う。
しかし、もう時すでに遅しだ。
喋りながら、ミンティアのケースを振ったときの粒が跳ねる音や、ペットボトルを開けたときの噴出音を思い出す。
仕事はまだ終わりそうにない。
【今回の一曲】
椎名林檎/やつつけ仕事 - 大名遊ビ編(2003年)
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