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どついたるねん。

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きっと仕事のためにはならないでしょうが、暇つぶしにはなるかと思います。そんな、エッセイです。(2019/10/1〜2021/5/23)
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#会社

「なめてんだろ!」

「なめてんだろ!」「やる気ないんだろ!」 これらは説教のときの常套句だが、この言葉ほど、どう対処したらいいか分からない言葉はない。 それらは所詮、主観の域を出ないからだ。 「なめてんだろ、お前」というのは、「俺は、お前が、なめていると思った」「兎角、俺はお前に腹が立った」という言明である。それ以上でもそれ以下でもない。 だから「なめてんだろ」と言葉にされた時点で、相手が「なめている」事実はほぼ確定なのだ。 以降はなんと言葉を返そうと、「いや、俺にはお前がなめているよ

社会人に肝心な「ツッコまない力」

社会人に必要なスキルは――なんて言葉を、入社前後の研修で口酸っぱく言われたことがある人は多いのではないだろうか。 曰く、マナー力だとか、論理的思考力とか、働きかけ力とか。 挙がるものは幾つかあるけれど、中でも一番大事な能力は「ツッコまない力」だと私は思う。 私は、ツッコミを入れてしまいがちな人間である。 「そんなわけねえだろ!」みたいなシンプルなものとか、「いや、サカナクションか!」みたいな喩えツッコミ――。 そのツッコミも、インターネットで文章を書くぶんには役立つ

彼女が可愛らしい後輩だからって

ある日、会社で私がトイレから自席に戻ろうと廊下を歩いていると、目の前を別部署所属で1年目の後輩が歩いているのが見えた。 正面のドアが開いて、同期の石森が出てきた。後輩は、その開いたドアからオフィスの中に入っていった。 私もそれに続いて中に入ろうとしたところ、石森に呼び止められた。 「なに?」と言うと、彼女は「今の娘めっちゃ可愛くない? 名前なに?」と訊ねてきた。 「知らない」と答えると、彼女は「知っとけよ」と不満げに言った。 後で知ったのだが、先述の後輩は、名を小川

顔を覚えるのが苦手な私と石森の話

今年の夏の真っ盛りに会社で研修があった。 グループ各社から年次もバラバラな若手社員が集められ、あらかじめ組まれたチームごとにワークを進めるタイプのものだった。 私の同期の石森と祢宜田は同じチームに割り振られていた。 始めにチーム内での自己紹介があった。 それぞれ所属と名前、あとは少し何かを喋る、よくある感じのやつだ。 祢宜田の証言によれば、石森は彼の自己紹介を聞いて、「あ、祢宜田って人、私の同期にもいます」と言ったということだった。 石森は人の顔と名前を覚えないこ