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どついたるねん。

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きっと仕事のためにはならないでしょうが、暇つぶしにはなるかと思います。そんな、エッセイです。(2019/10/1〜2021/5/23)
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2020年4月の記事一覧

いきなり巨根説

新入社員研修が始まって少し経った頃、新入社員と人事の参加する飲み会が催された。 それは入社後初めて開かれる飲み会で、出席率はかなりのものだった。 参加者もそれなりの数だったから店を貸し切っての開催となった。 幹事を務めた男が、乾杯の音頭を取った。 「ここにいるみなさんで、うちを業界ナンバーワンにしましょう!」 などとそいつは言った。 人事の佐久間さんは、それを聞いて愉快そうに笑っていた。 飲み会が始まった。 最初のほうは平和な雰囲気だった。 みなまだあまり深

あのぐらいの寒さで

その週末は、その年の冬の寒さをいっぺんに詰め込んだみたいにやたらと冷えた。 雨は次第に牡丹雪へと変わり、地面に落ちた途端に溶けて、歩くたびに靴の中に入ってきた。 その週末は、そんな天気だった。 週明けのことである。 その日も週末の寒さを少し引きずりやや冷え込む朝となった。 私はいつもどおりに会社に出社し、いつものように仕事をしていた。 しばらくしてコーヒーを買おうと席を立った。 オフィスのカフェスペースにいくと、別の部署の先輩がいた。 彼女は「週末なにかしてま

これの美味さが分からないとは

ある日のランチに、同期と一緒にパスタを食べに行った。 私がトマトソースのパスタを頼んだのを聞いて、彼女は「私、トマト苦手なんだよね」と言った。 アレルギーなどではないが、食感から何もかもがどうにも――と。 「好き嫌いをするな」と子供の頃に口酸っぱく言われた人も多いだろう。 しかし、程度の差こそあれど、ほとんどの人には何かしら嫌いな食べ物があるんだと思う。 彼女のトマトもその一例である。 食べ物の中にも、嫌いであることを共感されやすいものがある。 パクチーやレバー

貴様いつまで「走る」つもりだ問題

テレビをつけると、永野芽郁が街を走っていた。 それはカルピスウォーターのCMで、新入社員である永野芽郁が「ドキドキしすぎて寝坊」して、会社に向かうべく走っていたのだった。 なんとかオフィスにたどり着き肩で息をしていると、先輩社員と思しき結木滉星に「間に合ってよかったな」と言われ、「またドキドキ」する――。 永野芽郁とカルピスの組み合わせで言うと、私のなかでは、BUMP OF CHICKENの「宝石になった日」とタイアップしたCMのイメージが強かった。 白いワンピースを

だってレシピを見ないから

先週の土日、東京都では外出自粛が呼びかけられた。 そうなると、普段は外食派である私も、のんきに近所のインドカレー屋とかに行くわけにもいかない。店だって閉められるかもしれない。しかし、ずっとコンビニ飯というのも飽きる。というか既に飽きている。 そんなわけで、私は久方ぶりに自炊をすることにした。 私が自炊をしないのは、いくつか理由があった。 生活が不規則で、買い込んだ食材を余らせて腐らせてしまうから、コンロが1口しかないなどキッチンが使いづらいから、エトセトラ。 けれど