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どついたるねん。

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きっと仕事のためにはならないでしょうが、暇つぶしにはなるかと思います。そんな、エッセイです。(2019/10/1〜2021/5/23)
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2020年3月の記事一覧

社会人に肝心な「ツッコまない力」

社会人に必要なスキルは――なんて言葉を、入社前後の研修で口酸っぱく言われたことがある人は多いのではないだろうか。 曰く、マナー力だとか、論理的思考力とか、働きかけ力とか。 挙がるものは幾つかあるけれど、中でも一番大事な能力は「ツッコまない力」だと私は思う。 私は、ツッコミを入れてしまいがちな人間である。 「そんなわけねえだろ!」みたいなシンプルなものとか、「いや、サカナクションか!」みたいな喩えツッコミ――。 そのツッコミも、インターネットで文章を書くぶんには役立つ

好みの異性のタイプを答えよ

「芸能人だと誰が好き?」 数ヶ月前、会社の飲み会で先輩の女性社員からそう訊かれた。 どう答えたものかに迷い、私はただ口ごもってしまった。 恋ならば、誰もがしたことがあるだろう。 ラブソングは100万人のために唄われるのだから。 恋バナが「鉄板」になるのも、どうやらそういう理由らしい。 「芸能人だと誰が好き?」 この質問も、カルチャーの話としての質問ではなかった。 「芸能人で言うと誰がタイプ?」「芸能人だと、誰と付き合いたい?」と同様に、すなわち好きな異性のタイ

父のとんかつ

センター試験からおおよそ一週間経ったある日の夜は、母が不在だった。 高校はもう自由登校になっていたが、家に居たくなかったので、私は自習のために開放されていた高校の教室に毎日通っていた。 その日、家に帰ると、父が「今日の夕飯は俺が作る」と言った。 父はその日、とんかつを出してくれた。 なんてことはない。近所のスーパーに売っているとんかつを、家で再度揚げて温めたものだ。 「受験に勝つ!」 父は、陽気な声で、手垢にまみれた冗談を言った。 私が出願した大学は、センターリ

犬かキャットかに触れて人の心を取り戻そう

先輩の家に何人かで遊びに行った。 インターフォンを押すと、先輩は、飼い始めたばかりだという小型犬を抱きかかえたまま出迎えてくれた。 「キャン!」と犬は、嬉しそうに一鳴きした。 犬はとても人懐っこくて、私たちに飛びかからんかの勢いで「遊んで! 遊んで!」とせがんできた。 その姿はとても可愛らしかった。 可愛いなあ、可愛いなあ、とその犬を撫でながら、私は不意に、同期とのいつぞやの会話を思い出していた。 ある日、私は定時に仕事を上がり、エレベーターホールへと向かっていた

大人の持つ傘を買いたい、買えない

去年の12月、私にしては珍しく、朝から往訪があった。 その日は朝から冷たい雨が降っていた。 電車が遅延し、最寄り駅についたのはギリギリだった。訪問先に一緒に向かう女性社員は、改札を出たところで待っていた。傘がない、というので、私の傘に入れて走った。 去年の9月、「オードリーのオールナイトニッポン」で、春日が若林に誕生日プレゼントとして傘をあげていた。 LOFTの、ちょっとお値段のするちゃんとした傘を。 それを若林は「大人の持つ傘だ」と形容していた。 傘に入れてあげ