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どついたるねん。

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きっと仕事のためにはならないでしょうが、暇つぶしにはなるかと思います。そんな、エッセイです。(2019/10/1〜2021/5/23)
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2019年10月の記事一覧

車みたいに走れたら

ある会社の新卒採用面接を受けに行くため降りた駅の改札を出てから、似た名前の隣駅と間違えたことに気がついた。 降りた電車はアポイントに間に合う最後の電車だった。 私は、遅刻がほぼ確実という危機的状況に追い込まれていた。 私はまず会社概要のアクセスを検索した。降りた駅からも、隣駅からより時間はかかるものの、徒歩で行けるらしかった。 次に地図アプリでルートと所要時間を確認した。 間に合うかどうかはギリギリの線だったが、少なくとも次の電車に乗るよりは望みがあった。 私は走

新しい恋を始めました

学生の頃は、私もサークルというものに所属していた。 ある春の日、見たことのない先輩がサークルにやってきた。しばらく旅に出ていたから、と誰かが言った。 先輩は旅人だった。 私はどういうわけかその先輩に気に入られていた。 私の同期には、玲奈という女の子がいた。口の大きな女の子で、彼女もまた先輩のお気に入りだった。 先輩は、キャンパスから駅までの、バスで20分ほどかかる道のりを歩いて帰るのが趣味だった。 私たちはその趣味に付き合うようになった。 だから、一緒にいる時間

ノーベル文学賞発表の日に考えたこと

ノーベル文学賞の受賞者が発表された。 今年は、発表が見送られた昨年度すなわち2018年度分も含めての発表となり、ポーランドとオーストリアの2名が受賞した。 そのことが私は本当に悔しかった。 村上春樹が受賞しなかったからじゃない。受賞者が日本人でなかったからでもない。 受賞者の予想が外れたからだ。 私は毎年、ノーベル文学賞の受賞者を予想し、SNS等で発表している。友人が予想していたのを真似たのが最初だったと思う。以来、なんとなく惰性でそれを続けている。 机に置いてい

経費精算とは友だちになれない

子供の頃から、自分は天地がひっくり返っても医者にはなれない、と思っていた。 成績が悪いからとか、家が貧乏だから、とかの理由ではない。 手先がものすごく不器用だったからだ。 医療ドラマの花形は外科医と相場が決まっている。これは手塚治虫『ブラック・ジャック』の頃からのお約束だ。 まず病がある。その病が何かを医者が推理し、手術というバトルを以て解決する。このミステリ的なプロットと、少しでも手元が狂ったらいけないというスリルが、物語として映えるのだ。 メディアを通じて形成さ