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読書記録「友情/武者小路実篤」

昔読んだ作品の中に登場したタイトルとして記憶していた本
旅行先で、薄くて手持ちのバッグに入りそうという軽い理由で購入したけれどとても好きな作品でした。

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野島はあらゆることを親友の大宮に共有してきた。学問、仕事、気に入らない知人、そして恋愛。

野島の語る杉子への恋はどこか現実味が無く、終始美しい彼女を通して"理想の女性"に恋をしているようであるが
それでもその恋は当人にとっては間違いなく人生を賭けたものであり、大宮もそう理解している。

一方で、野島の大宮への信頼はそれまでの長きにわたる関係性によって積み上げられてきたものであることが感じられる。

大宮から野島へのそれもまた同様で
野島を褒める言葉は友人の恋の後押しのための口八丁では決してない。

互いに尊敬し、認め合い、理解し合える間柄。

恋をとることで友情を失うことを恐れた大宮の告白。
それを目にした野島が最も嘆いたのは
この喪失を共有できる相手がいなくなってしまったことだった。

たしかにまちがいなく、これは友情の物語だ。

***

人生を賭けた恋の終わりを野島はひとりで乗り越えなくてはいけないけれど、大宮はどこまでも友情に対して真摯であったし(野島を愛することは死んでもないとか言われてる手紙を公表はしてるけど)
野島も杉子と一緒になることを選んだ親友を裏切りとは感じていないと思う。
2人がまた以前のように語り合う日は必ず来るんだろうなぁ。
杉子の言うように、野島が現実の中で一生を共にできる女性と出会って杉子のことは憧れだったのだ、なんて大宮に話していたりするかも…
そうであったら嬉しい。

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