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【シン・ウルトラマン】「彼は人に堕ちる」

・庵野秀明&樋口真嗣によるシンシリーズ最新作『シン・ウルトラマン』を鑑賞。

・実は1週間程前に見ていたのだが中々文章を書く気になれずに今に至る。しかし、これは悪い意味では全く無いのだ。ウルトラマンについて詳しくない筆者でも十分満足のいく素晴らしくヘンテコで熱い傑作映画であったのだから。

・かつてウルトラQを全て鑑賞して、その後初代ウルトラマンを見初めたは良いものの途中で飽き視聴を辞めた過去がある。幼い頃から特撮作品は観た記憶はあるが、のめり込んだ記憶は無い。強いて言えばゴジラは好きだったぐらいか。

・そして本作シン・ウルトラマンに挑んだミーハーも良い所なのが私自身だ。結果として受けた印象は『シン・ゴジラ』より瞬間最大風速は劣るが、映画としての全体的な面白さと満足感は『シン・ウルトラマン』の方が圧倒的に上であった。

・バラバラの様なストーリーがしっかりと一本の筋道で通っている美しい構成。SF作品としての単純な面白さ、異星人を通した目で描く人間という生物の生き方。様々な策略とそこから偶発的に単純した人間と異星人の融合体ウルトラマン。彼が語る人間という生き物の魅力。神なる存在が地上に堕天した神話的なる物語。

・特に素晴らしいのはメフィラス星人という存在だ。本作のストーリーの根幹に重要に絡むこの異星人は人間という存在を甚く買っている。しかしその視点はウルトラマンとは全く異なる物だ。別の人が語っていた感想に鋭く適切な表現があった。メフィラス星人は我々人間が動物を育て利用する観賞する視点に近しい物を持っており、ウルトラマンは自らが野生に帰り動物回帰しようとする物だと。正しくその通りで、ウルトラマンの持つ異常性。人間の味方であるというのは人類にとっては有り難いが、ウルトラマン達もとい光の星に住む一族の価値観から逸脱したサタンだとも言えるだろう凶行。

・私はウルトラマンについて明るくないので拾えてないイースターエッグが余りにも多い。だが他者の感想を調べれば、とんでもなくオタクな愛に満ちた設定をばら撒きまくっているのだと気づく。シリーズファンであれば、楽しめる点も非常に多いみたいだが心配せずとも鑑賞に耐え得る実力がこの映画にはある。

・だが一点。現代的な物事の取り方での問題点が一つある。これについては人それぞれの受け取り方とも言えるし、創作物の自由性を阻害する考えとも言えるし、しかし現代では避けては通れない思考の一つだ。この作品にはセクハラを想起させる印象が確かに存在する。主演女優である長澤まさみを取り巻く描写に、少なからずの不快感を示す人々が居ると確実に思える演出が見受けられるのは些か残念でもある。

・色々と最後に言ったが、それでもこの映画は私にとって面白く興味深いSF映画であった。懐古的でもありながら、現代的でもある最高に洗練された変で熱い映画がこの『シン・ウルトラマン』だ。

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