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【キングスマン ファースト・エージェント】喪失と誕生、悪には礼節をもった死を

・キングスマンシリーズ最新作『キングスマン ファースト・エージェント』を鑑賞して参りました。

・コロナ禍の影響により、かなり眠らされていた本作。それだけの時間価値が功を奏したのか、無駄な部分が全く無いスッキリとした構成の編集に仕上がっていました。

・正直な所、鑑賞前からそこまで期待はしていませんでした。キングスマン2作目も悪くは無かったが、あの時点で食傷気味な雰囲気があり、傑作と呼べる1作目に比べると少々微妙な映画だったと感じたのが当時の感想でした。

・その様な経緯から今更過去編をやってもなぁ…と期待値は少しばかり低かったのですが、実際の感想としては間違いなく面白い映画であったと断言出来る代物でありました。1作目にはやはり劣るが、毛色の異なる切り口で描かれた本作は非常に楽しい映画だった。

・本作は戦争映画の要素も兼ねているというか、第一次世界大戦を描く様は完全に戦争映画のソレであった。その様な雰囲気の中へ史実に裏で操る黒幕と裏で暗躍する英雄達を足し込んだのが、今回描かれたキングスマンの起源ストーリーの正体だ。

・予告編ではラスプーチンがメインの悪役の様に扱われていたが、実際は敵組織の幹部に過ぎなかったのは意外だった。まあしかしかなり濃い役柄となっていたので、序盤の掴みの印象としては最高だったと言える。

・この作品最大の見所は父と子の物語だ。主役親子を通して戦争の残酷さと冷酷さ、簡単に散りゆく命の儚さと犠牲の虚無を映画に克明に映し出している。勿論、他の殊更真面目な戦争映画に比べると多少は劣るかも知れないが、キングスマンの世界観を崩し切らずに巧妙に落と込んでいるのだからこれはお見事だ。

・前述にも挙げた通り、本作は非常にテンポ感の良い映画に仕上がっている。映像の撮り方も丁寧で、観客に伏線等の印象を自然と与えるのが素晴らしい。序盤での何気ない会話に登場するギリシア神話のイカロスも終盤の展開を示唆するアクセントとして密かに機能しているのが巧妙である。

・洒落たクールなアクションと泥に塗れたリアルな戦争描写の両方を良い所どりしたスタイリッシュスパイムービー。何故キングスマンエージェンシーという組織が誕生したのか?積み上げられた屍の背後から湧き出た平和を渇望する血潮のうねりを今スクリーンで刮目せよ!!!!

 終

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