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【ラストナイト・イン・ソーホー】理想と現実、過去と亡霊と欲望の因果

・エドガー・ライト監督最新作『ラストナイト・イン・ソーホー』を鑑賞。年末の怪物、個人的には今年No. 1の映画と言っても良いでしょう。前情報を一切入れずに観たので、あまりの完成度に圧倒され凄く好きになってしまった。間違いなく円盤購入コースです。

・エドガー・ライト監督と言えば『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』『ワールズ・エンド』のサイモン・ペッグ&ニック・フロスト三部作の印象が強い。他にはカナダコミックの実写化『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』、力を入れて企画を立ていたのに監督降板を余儀なくされた『アントマン』その挫折の後に公開された快作『ベイビードライバー』など正に優秀なヒットメーカーだ。

・そして今作『ラストナイト・イン・ソーホー』、エドガー・ライト監督の最高傑作だと私は思います。今までの監督の作風とは少しばかり違い、シリアスなサスペンスホラーとなっている本作。自分の好きを全てこの作品に詰め込んでいるのだろうなぁ…と感得させられるクオリティ。

・霊感あるエロイーズは服飾デザイナーを目指す若者。幼くして母親を亡くした彼女は祖母と暮らし、その影響から60年代を愛するレトロ好きでもある。そんなエロイーズはロンドンの服飾学校に通う事になるのだが、田舎生まれの彼女は中々都会にうまく馴染めない。学生寮でも孤立した彼女はある貸部屋の入居者募集の貼り紙を見つけ引っ越す事を考える。喧騒から逃げる様に訪ねたそこは自分の理想に近い古臭さ溢れる部屋であった。喜んで入居したエロイーズはその部屋で眠りに落ちた際、奇妙な夢を見る。自分の理想であった60年代のロンドンに彼女は入り込み、彼女はサンディというブロンドの女性になっていたのだ。歌姫を目指すサンディの夢を魅入られていくエロイーズだが、ある日これは夢では無く実際の出来事の追体験だと気づく。欲望と夢に満ちたかつてのロンドン、悪意と現実の残酷さが色めく醜悪な世界の真実と隠された事件の真相が彼女に襲い狂う………。

・というあらすじ。至る所に伏線とミスリードを張り込んでいるので後からあっ!なるほどそういう事だったのか、と腑に落ちるポイントが非常に多いので観ていて楽しい。その上映像構成が滅茶苦茶美しいので終始映画の世界に引きずり込まれてしまうのだ。主役のエロイーズを演じるトーマシン・マッケンジーも非常に絵になる美しい女性であり、どこを切り取っても映えるカットばかりで最高。

・ホラー演出にも抜かりがなく、奇妙で不気味な体験が出来るのでそういう面でも高く評価してしまう。快進撃を続けるエドガー・ライトという恐ろしい監督。彼がこの後もこんな素晴らしい映画を世に送り出してくれるのかと思うと良い意味で気が遠くなる。

・いつかまたサイモン・ペッグ、ニック・フロスト、エドガー・ライトで映画を撮ってくれないだろうか。今の成熟しきった監督ならばきっとトンデモない映画を作るに違いないだろうから。

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