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【デューン/砂の惑星】砂の惑星のロマンと時代を超える挑戦

・未だに原作は未読、ドラマ版も未視聴。デヴィッド・リンチ版のデューンとホドロフスキーのDUNE(ドキュメンタリー)は鑑賞済みです。

・前置きとしまして、このデューンの映画化に纏わる騒動について紹介させて下さい。本来この作品はアレハンドロ・ホドロフスキーが最初に映画化をする計画になっていました。ホドロフスキーといえば「エル・トポ」「ホーリーマウンテン」を1970年代前半に公開し、その難解かつ哲学的で誰も真似出来ないレベルの芸術映画を世に打ち出した怪物芸術家として有名。

・そんなホドロフスキーが1975年から計画し、綿密で大胆な進行により撮影間近までに至ったのに実現しなかったのが「DUNE」です。結論としてはスタジオ側が過激な作品を撮るホドロフスキーでは興行収入を稼げないと判断し、制作を中止させてデヴィッド・リンチにバトンを無理矢理渡してしまったのです。

・そのデヴィッド・リンチもデビュー作で『イレイザー・ヘッド』などというトンデモ映画を作り出した人物ではありますが、そのデューンは彼にとってまだ映画制作の第3作目に当たる初期作品なんです。その上スタジオ側はリンチを縛り、監督であるのに関わらずデューンに対しての制作方針の決定権を十分に与えませんでした。その結果『デューン/砂の惑星(1984)』という中途半端なリンチ感だけが滲み出る退屈な駄作がこの世に生誕してしまいました。これが反動になったのか、リンチが後に公開していく『ブルーベッド』を皮切りとした作品群はこの経験を払拭するかの如く自由で縛られない彼自身の世界観を映画で発揮した物となっていきました。

・しかしホドロフスキー版のDUNEが世に打ち出されていれば、多くの方が語る様にSF映画史は今とは全く違う物になっていた可能性が多いにあります。スタッフや出演する予定になっていたメンバーがもう凄かったんです。後に『エイリアン』でその名を轟かす事になったダン・オバノンやH・R・ギーガー、シュルレアリスムの帝王サルバドール・ダリ、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー、映画史の巨匠オーソン・ウェルズ、プログレの先駆者ピンク・フロイド諸々。一部の名前だけを取り上げて紹介させてもらいましたが信じられないでしょ、この布陣。

・その上、ホドロフスキーは後の映画界に影響を与えまくる結果となる完璧すぎる絵コンテの数々をこの時に生み出しているのです。『スターウォーズ』『レイダース/失われたアーク』『ターミネーター』等にはこの時ホドロフスキーが作り出した絵コンテから影響を受けているという噂もある程。

・ホドロフスキーのDUNEはこの世に誕生しなかった傑作ではあるが、誕生しなかった事でこの世に沢山の傑作が生まれる事になった映画史のターニングポイント的な作品だったのです。

・まあ前置きがながーくなってしまいましたが、この度その映画化のバトンがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の手にやって来た訳です。近年になり『メッセージ』や『ブレードランナー2049』といったSF映画を手がけ、やっと評価され始めたドゥニはこの歴史ある作品の再映画化にどう挑むのか?本日はそれを確かめて来ました。

・ドゥニ版のデューン、現代技術の全てが詰まった素晴らしいSF映画だったと思う。アイスの蓋まで舐めとるような丁寧さで世界観を描くスペクタル映画であった事には間違いない。

・ただ先に一つだけ、言わせて欲しい…前情報を避けていた私の罪であるのだが一つだけ…。これ1作品で完結じゃなかったんかい!!!!

・鑑賞後に調べるとどうやら3冊ある原作の前半をほぼ映像化したのが本作だった。2部作だったんかい!!!それを知らない所為で打ち切りENDの様な締め方には少々肩透かしを食らってしまった。

・でも問題は個人的なミスによるそこだけであり映像としては中々に楽しめる素晴らしい作品であった。リンチ版みたいにとっ散らかった話で無理矢理一作に纏めるよりは、2部作にする方が英断だったと思いますしね。ただ人を選ぶ作品と言いますか、大衆受けをする映画でもないだろうというのも事実。真面目に長い話を描く作品だから退屈な人も居るかもって訳。

・しかしながら砂の惑星のスパイスを巡る謀略や複雑で超能力的な世界観を巧みな技で映像化しているのを見ていると、デューンの世界をスクリーン中へ全力で投影しようと挑戦するドゥニの想いが伝わってくる。登場するメカニックのデザインも目を惹く歪な無機質感があり超良かった。原作が最早古典故に旧世代的なスペースオペラ感は否めないが、それを現代の映像技術により斬新かつ壮大な物に作り替えていたのが見事な所。

・リンチ版でも唯一素晴らしいと言えたサンドワームも本作では更にパワーアップし、その巨大さには深淵を讃えるかのような恐ろしさが垣間見る事が出来た。

・まあ取り敢えず、もう原作読みます。完結作が公開される前までには読了しましょう。

・ホドロフスキーはかつて、DUNEを使いオリジナリティを加えて世界をひっくり返そうと企んでいた。ホドロフスキーは映像化に於いて原作に敬意を払うべきだが、全て同じ通りにやる必要が無いと言う。かく言う私もその意見にはそっくり同調するタイプである。

・しかし、ドゥニ版は原作を再現しまくっているようだし、このまま完結まで全て原作通り行うのか気になってくる所である。それを確かめる為に、我々が出来る事は原作を読み、全てを知る事にある、みな読もう!!!完結作が公開される前に!!!チャークサ!!!!チャークサが原作にあるのかも確かめなければ!!!!!!!!

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