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【ザ・スーサイド・スクワッド】俺達はヒーローか?ヴィランか?いいや、人間だ。

・待ちに待ったジェームズ・ガン監督の最新作はまさかのスーサイド・スクワッド。私だけではないでしょうが、このスーサイド・スクワッドという作品の実写化について並々ならぬ想いを抱えている人は決して少なくはないでしょう。今からもう5年も前になるデヴィッド・エアー版のスーサイド・スクワッド、超ハマり役となったマーゴット・ロビーのハーレイ・クインを産み出した功績はあるものの決して手放しで褒められるような作品ではありませんでした。個人的な見解としてはアレがDC作品とは無関係な作品であれば、そこそこに面白いアクション映画だったと評する事が出来るのになぁと当時は考えてしまう程。ヴィランであるキャラクター達の魅力を引き出せていたかという些か微妙であり、出番の削られたジャレッド・レトのジョーカーは殊更酷い扱いでした。アニメ版のスーサイド・スクワッドとも言える「バットマン:アサルト・オン・アーカム」この作品の方が何十倍にも決死隊の良さを引き出せていたと今でも思います。

・そして今回のジェームズ・ガン版のスーサイド・スクワッド、確かディズニーとガンが揉めていた辺りの時期に制作が発表された様な記憶があるが、まあその頃から不安と期待で本日まで待っておりました。ここから下記は控えめにですがネタバレするので注意!!!!


・鑑賞した結果は期待を大幅に超える大傑作で滅茶苦茶痺れた…。ジェームズ・ガンらしいブラックジョーク溢れる最高にハートフルな人間賛歌の映画がそこには構成されておりました。当初から懸念されていた数多く登場するキャラクター達をどう動かすのか?その答えは簡単さ、殺す、そう殺すんだ。しかも、最高にキラキラと輝かせてから殺すんだ。

・命というのは儚くも脆いもの、しかしそれはまたさんざめく様な輝きを放てる美しいものでもある。それをガンは己の才能を遺憾無く発揮して映画の中に詰め込んだ。呆気なく散っていく奴もいるが、そいつらの事を観客に強く印象付ける演出がもうとんでも無く上手い。もうべらぼうに上手い。あれだけの登場人物が居て、出番が一瞬の奴らだっているのに見終わっても尚アイツはこういう死に方をした、コイツはこうだったというのを覚えている。

・ヴィラン達を主役に据え置く効果として決定的なのは彼らの大半は躊躇なく人を殺す事が出来るって事。じゃあ彼らはヒーローみたいに葛藤したりしないのかって?いいや、違う。彼らはヴィランと称される囚人であっても人間だ。それぞれの価値観や物差しで事を図って生きている。善とか悪とかそんな尺度は関係なく、生きている事、そこに何の違いもありはしない。ドブネズミで社会の底辺だろうが命の瞬きは誰にだってあるものだろ?

・やはり驚かされるのは物語の圧倒的な構成力だ。初手の掴みからガツっと心を鷲掴みにされ。過去や現在を巧み交互浴させる事で観客を映画の世界に誘う、そこから登場人物のバカなやり取りで散々笑いを誘う。そんな中にあってもヒューマンドラマの挿入は欠かさずに、キャラクター達に感情移入出来るようにこれまた巧みに形作られている。しかもそいつらのオリジンをかなりサラッと、だけどかなり分かりやすく我々に伝えてくれるのも映画のテンポが崩れない見事な仕上がりになっている。映画の終盤のゴルフクラブのシーン、かなりスカッとするし超気持ちが良い。勿論、憂き目にあうあの人の立場上の行動は分かるのですが…それでもあれは良くやった最高だ!と言うべきでしょう。

・それぞれが各々の理念や生き方を全うする姿を映画という媒体を通して描かれており、キャラクターの特色がよく伝わる様に様々な手法を取って凝られた映像面も素晴らしく楽しめる作りになっている。それだけじゃなく、ジェームズ・ガンお得意の暴力的映像に音楽をガッツリと噛み合わせた気持ちの良い演出もふんだんに盛り込まれているのがこれまた最高なポイント。善とか悪とか関係なく皆んな生きてるんだよ!見てくれよ!という叫びがスクリーンから飛び出して気兼ねない重厚さで大満足させられてしまいました。

・そして今作より再びDCバースが再始動されるという噂を聞きました。しかし今までのシリーズ立役者であったザック・スナイダーは恐らくもう帰ってこないでしょう。今後再び、この世界観がどうなっていくのか今から不安ではあります。そしてここからは個人的見解ですが、ユニバースに拘る必要があるのか?と未だに考えてしまうんですよね。現に単独作品として「ジョーカー」という「キングオブコメディ 」を巧みにDC世界に落とし込んだ傑作がある訳だし、一応ユニバースではあるけど単独としても素晴らしいワンダーウーマンシリーズやアクアマンだってあるのに。MCUの成功に見習いたい気持ちは分かりますが、あれはあれで長寿作品特有の苦しい面もあるじゃないか。DCはDCらしく自由に映画化をしていったら良いんじゃないの?と思う気持ちが隠せない一観客の独り言でした。まあこれからもユニバースとそれ以外を両立して公開していく事を祈りますよ、アーメン。

・そして最後に言っておきたい事がもう一つありまして。本作を観てデヴィッド・エアー版のスーサイド・スクワッドは決して無駄な作品では無かったんだなと硬く強く感じました。あの作品があったからこそ、この映画の中で活きているエッセンスの数々が確かに存在します。ある意味これはガンなり愛のある皮肉なのかもしれません、しかし作品が作品を産むスパイラルは確固たる意思を持って映画の中に生きていたんです。そう、生きていたんです。

                 終

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