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【アンビュラス】「マイケル・ベイらしさの到達点」

・マイケル・ベイ監督最新作『アンビュラス』を鑑賞して参りました。ベイ映画の大半は鑑賞して来ましたので本作は一体どの様な作品が観れるのかと勇んだ所、とんでも無く濃厚かつ濃密で能動的としか呼称する他ない最狂のベイ映画となっておりました。

・所謂マイケル・ベイらしさと言えば、スピーディーなカメラワークから連打されるカット数の異常な多さ、派手な爆発を伴ったカーアクション、下から被写体を映すあおり構図に緊迫感を常に感じさせるカメラの動的な挙動だ。そのマイケル・ベイらしさがこの映画、最初から最後まで延々と続くのだ。

・他のベイ作品でもここまでのフルスピードで展開の連続を描く作品は私の知る限りまあ無く、本作は恐ろしく観客のカロリーを消費させる代物だと言える。

・まさに今までの集大成なこの映画には今までの監督作を小ネタにしたメタ要素も含まれており、ザ・ロックやバッド・ボーイズが劇中の会話ネタとして使用されていた。(ザ・ロックのネタは同じく監督作品である『ペイン&ゲイン』にロック様が出演していた事から単なる勘違いギャグだけでなく、二段重ね演者繋がりのギャグだろう)

・ストーリーラインは至ってシンプルであり、銀行強盗を行った2人の兄弟とそれに巻き込まれた救命士の女性を主役に大派手な逃走劇を描く内容だ。しかしながら全編に渡ってアクションシーンばかりなのにドラマ性もしっかりと盛り込まれているのが素晴らしい所。血の繋がりがなくても家族の絆で結ばれた兄弟の生き方の違いと衝突を見事に描き、救命士の女性が患者とどう向き合うのが自分にとって本当に大切な事なのか、というドラマ性も劇中にきちんと納めてある仕事ぶりだ。まあ全体的な内容としてはこんな状況になるか?というツッコミ所やいや最悪な状況が運悪く起き過ぎだろ!?なんて思いたくなるのだが、有無を言わさずに突っ切り観客を納得させてしまうのがマイケル・ベイのヤバさだ。

・個人的にはマイケル・ベイは、もっとクライム映画を多く撮った方が絶対に面白いと思う。先程も挙げた『ペイン&ゲイン』は実際に起きたボディビルダー達による最悪の事件を描いたブラックコメディであり、低予算という事もあってかアクションはかなり控えめだがイカれた悪役を描いた映画としては滅茶苦茶面白い。打って変わって前作の『6アンダーグラウンド』は金の掛かったアクション映画であり派手さもしっかりとあるが、世界の悪人を成敗する正義の秘密結社というのは何だかチープでイマイチ乗り切れない部分があった。そういう面では『アンビュラス』は善と悪、そしてそれでは単純に割り切れない感情。その類いのバランスが非常に上手く、そのお陰かベイらしさに満ちた映像の世界観の波に乗りやすかったのだ。

・ジェイク・ギレンホール、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、エイザ・ゴンザレス。役者陣の良さもそうだが、特にジェイク・ギレンホールにこういう役柄をさせれば間違いなく最高になってしまう。(あの目力の圧は完璧)

・マイケル・ベイにはこれからも暴走列車が如く、我儘好き放題の映画を是非撮って貰いたいと願う。出来ればクライム映画でね。

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