冷蔵庫と待ち合わせる 1.ココア
特技と呼べるものはあまりないけれど、強いて言えば冷蔵庫の掃除が得意だ。
大まかに使うものを決めて週末にまとめ買いすることが多いので、木曜日頃には冷蔵庫がほぼ空になる。豆腐とヨーグルト、林檎だけ必ず入っている。これらはチビの大好物なので、切らすと大変。基本的に汁物以外の作り置きはしない。だから、大鍋がドーンと入っているか、空席が目立つか、どちらかといった感じだ。
そんなわけで、冷蔵庫は事務的なパートナーとして私と生活している。開けるとひと目で全体が見渡せて、必要なものだけ取り出す。その場の仕事だけを手伝ってもらう存在だった。
そんな考えが変わったのが1週間ほど前。冷蔵庫に明日の分の軽食を作っておくというシンプルな記事を見たのがきっかけだった。その場その場で使う「仕事道具」だけではなくて、自分へのご褒美をそっとしまっておくという考え方も、そういえばあるよねと思った。
そこで試しに作ったのが、アイスココア。いつも朝作ってその場で飲むところを、そっと冷蔵庫に隠してみた。午前中チビの遊びに付き合い、昼食の支度をし、ふと疲れた頃にアイスココアをしまっている冷蔵庫を思い出す。取り出して飲むと、作ったその場で飲むより、謎の達成感があったりする。
一介の主婦が使うのには少し恥ずかしい例えだけれど、なんだか仕事のパートナーだった冷蔵庫が、プレゼントを用意してくれている恋人に変わったような気分だ。ちょうど夏も始まるので、暑くて忙しい毎日に冷たいプレゼントを用意してくれる恋人としばらく過ごす事にする。
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