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AIチャットボットが「水」を大量消費しているという話

本記事は、2023年4月6日発表の論文「Making AI Less “Thirsty”: Uncovering and Addressing the Secret Water Footprint of AI Models(AIの「渇き」を癒す: AIモデルの隠れた水脈の解明・対処)」を要約したものです。

コロラド大学とテキサス大学の共同研究チームは、Googleの『Bard』や『ChatGPT』などのAIチャットツールのモデルのトレーニングに、膨大な量の淡水が消費される懸念があるとの論文を発表した。

AI訓練で消費される490万リットルの『水』

論文でチームが行った試算では、米国にあるマイクロソフト社のデータセンターでGPT-3を訓練した場合、70万リットルの澄んだ淡水(Clear fresh water)が消費され、効率が悪いアジアのデータセンターで訓練した場合は、その3倍の490万リットルになるとされている。

この水の消費は、データセンターの冷却システムに用いられるもの。サーバールームを冷やすために水が必要となるが、海水ではハードウェアが腐食する恐れがあるため、淡水であることが必須だ。

鍵となるのは、データセンターの気候

冷却に用いる大量の水。筆者はこの水の消費が環境問題を引き起こすと主張し、AIチャットモデルの水消費を効率的に行うための提案として、気温が低い時期や寒冷地でAIモデルをトレーニングすることが提案されている。

一方で、暑い気候の地域は日照時間が長く、太陽や太陽光発電を活用することができるため、テック業界でしばしば議論されるもうひとつの問題 - 二酸化炭素排出量を減らすことができるという利点もあるが、その気候故に水の排出量は多くなる。

論文では、ユーザーの責任についても触れられている。しかし、これは雲を掴むような作業になる。企業側が情報公開を行なっていないため、ユーザーが水の消費量が低い時間帯にあえてチャットボットを使用するということは難しい。

結論:水問題への取り組みは世界的な課題

AIモデルがいつ、どこで訓練され、展開されるのかについて透明性を高め、世界の水問題への取り組みに対処すること - AIモデルの開発者とデータセンター運営者には、これらの環境課題に対処することも求められる、と論文は結論づけている。

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