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【ボカロで学ぶ】ドラムってどんな音? ~ハイハット編~


ドラムの音解説シリーズ、引き続きまして第3回になります。今回はハイハット編!
ハイハットはいろんなことができる楽器で、ドラムセットの中でもどんな仕組みで音が鳴っているのか、どんな音があるのか知られていない方なんじゃないかと思います。
スネア編のように、ひとつずつ説明していきますね!




ドラムの"三種の神器"

これまでに解説してきたスネア、バスドラ、そして今回取り上げるハイハットを入れて「3点」もしくは「3点セット」と呼ばれます。文字通り3つあるからですね。
このような呼び方をされるのは、この3つがドラムの最も基本的な音を構成するものたちだからです。特にロックジャンルにおいて、「スネア」「バスドラ」「ハイハット」この3つが存在しない曲は基本的にないと考えて構いません。もちろん例外はあると思いますが、その曲はそれだけ特殊な編成をしているということです。それくらいドラムの中でも欠かすことのできない、中心となるのがこの3つ。
ライブを経験したことのある方なら、音の確認をする際に「3点ください」と言われたことがあると思います。それがこれ。当然その後に全体の音の確認もされますが、優先的に確認するくらい重要な要素なんです。



ハイハットってどんな見た目?

いつものドラムセットから。

今回の主役、ハイハットくんは・・・?

本日の主役

コレ!!
しかし手前にスネアがあるので、全容が見えません。

ハイハット ~全体図~

じゃん!
これがハイハット、正式名称ハイハット・シンバルの全容です。略称は"ハット"。ペダルがついていますが、どういうことなんでしょうか・・・?




ハイハットってどういう仕組み?

先ほどの画像で一番目につくのがペダルだと思いますが、まずは上の方に注目してください。よ~~く見ると、シンバルが2枚重なっているのがわかりますか?
横から見た図を貼りますね。

ハイハット ~側面図①~

シンバルをぴったり合わせたような形で閉じています。
しかし横からの図はこれだけじゃありません。

ハイハット ~側面図②~

なんとこのシンバル、開閉式。
じゃあどうやって開いたり閉じたりしてるの?という秘密を握っているのが全体図で見えていたペダルなんです!
ペダルを踏めばシンバルが閉じ、踏まなければシンバルが開く。こんな仕組みになっています。



ハイハットってどんな音?

では、いよいよハイハットの実際の音を聴いてみましょう。
例のごとくGaragebandさんを使用。

ハイハットは音が3種類。スネアも同じく3種類でしたね。(特に理由や意味はありません)
1つずつピックアップしてお話しします。


①クローズハイハット

略称は"クローズハット"
文字通り、閉じている状態のハイハットを叩いた時の音です。ちょうど側面図①を叩いた音のことですね。上に貼った3種類の音のうち最初に鳴っているのがこれ。
具体例を聴いてみましょう!

(0:10~0:39)

冒頭にクローズハットがある有名曲で一番わかりやすそうなのはこれかな。後で説明する音も混じってるけど…それは後述!
他にバスドラの音やクローズリムの音が入っていますが、どちらもこれまでの記事で解説している音です。わかるかな?


(0:48~0:58)

冒頭以外に使われているパターンをもう1つ。ここではBメロに注目してみましょう。
ドラム以外の音が多いのでさっきより聴き取りづらいかもしれません。その代わりドラムの音はバスドラとクローズハットのみです。「ツクツクツクツク」って鳴ってるのがクローズハット!がんばって聴き取ってみましょう。

ドラムだけを抽出したものを貼っておきます。これと原曲を聴き比べてみてください。



②オープンハイハット

略称は"オープンハット"
文字通り、開いている状態のハイハットを叩いた時の音です。ちょうど側面図②を叩いた音のことですね。上に貼った3種類の音のうち2番目に鳴っているのがこれ。(文章使いまわし)
こちらも具体例を!

冒頭(~0:01まで)

一番聴き取りやすい曲で真っ先に思いついたものを貼りました。笑
最初の「チーチーチー」って鳴っているやつがオープンハットの音ですね。


(0:11~0:19)

冒頭を終えた後のイントロ部分でオープンハットが使われています。バスドラとスネアも一緒に鳴っていますが、「ストラトステラ」で聴こえた音を参考に探してみてください!
こちらもドラムだけ抽出したものを貼っておきます。



③フットハイハット

さて、重要なところにきました。上に貼った3種類の音の、3番目に鳴っている音です。
先ほど「ペダルを踏めばシンバルが閉じ、踏まなければシンバルが開く。」と書きました。この、「ハイハットが開いた状態から閉じた状態にする時の音」をフットハイハットと呼びます。略称はフットハット・・・となるのかはわかりませんが、少なくとも私はこの略し方は聞いたことがないです。笑
こちらも具体例を挙げますが、この音は①や②と違ってこの音単体で用いられることが少ないです。

冒頭(~0:02まで)

たぶん一番わかりやすいのはこの曲。一番最初の無音の状態から「チッチッチッチッ」と鳴っている音、フットハイハットです!音が控えめなので、全然聴こえない!という方は耳を痛めない程度に音量を上げて聴いてみてください。

単体で使用されるのはこのような"カウント"を使用する場面がほとんどですが、このパターンもそれほど多いわけではありません。他にの用例としては、ハイハット以外の部分を叩いている時に踏まれているパターンがあります。これは音を増やす意図というより、演奏するドラマーがテンポを一定に保つために
じゃあ単体以外ではどんな使われ方をするのか。後述しますので少々お待ちください。




①と③は判別が難しい

フットハイハットの難しいところは、①で説明したクローズハットの音と非常によく似ている点です。本来クローズハットを使う場面で(おそらく)間違えてフットハイハットの音を採用している曲をごくたまに見かけるくらい似ています。8ビートで鳴るハイハットの音が全部フットハイハット、みたいな。
これは「ドラム知らないとわからないよね、しょうがないよね……」案件なのですが、このような悲劇を減らしたいという気持ちがあって今回のnoteを書いている節も大いにあります。

ハイハットの3種類の音からオープンハットだけ除外してみたので、聴き比べてください。前半がオープンハット、後半がフットハイハットです。
よ~~~~く聴いてみると、クローズハットの方は棒で叩いたような打撃音が鳴っているのがわかるでしょうか?
ここでそれぞれの音について説明した項目に戻ってみましょう。クローズハットは「閉じている状態のハイハットを叩いた時の音」、フットハイハットは「ハイハットが開いた状態から閉じた状態にする時の音」でしたね?
つまり、クローズハットはスティックで叩いているけど、フットハイハットはスティックで叩いていません。ここが両者を判別する上で最も大きなポイントです。逆に言えばこれくらいしかない。ですから他の音が混じっていたり、違いがわかりにくいドラム音源だったりすると私でもちゃんと判別できる自信がないケースもあります。

・・・がんばって判別しましょう!w




フットハイハットの真価

肝心の「じゃあフットハイハットっていつ使うんだよ」問題です。端的に言うと、オープンハットの音を止めるのに使います。
何度か説明したように、フットハイハットとは「ハイハットが開いた状態から閉じた状態にする時の音」。つまり、オープンハットをクローズするということです。オープンハットを鳴らしている途中にハイハットを閉じることで、オープンハットの音を止めることができるんです。たとえば別の楽器で、トライアングルを鳴らしてから音を止めようと思ったら、トライアングル本体を直接触りますよね?それと同じです。ハイハットが開いている状態で鳴らした後、ハイハットの上下のシンバルをくっつけることで音を止める。フットハイハットはこのくっつける動作のことを指します。

「オープンハットの音を止める」の原理を話したところで、具体的に説明しましょう。
一番わかりやすい例を出します。4つ打ちです。

極めてオーソドックスな4つ打ちです。
これが実際に何を叩いているのかというと・・・

フットハイハットを使った4つ打ち

上の音源のMIDIノートがこちら。赤枠部分がフットハイハットです。
この聴き馴染みのある4つ打ちは、表拍でフットハイハットを配置し(つまり表拍でハットを踏み)、裏拍でオープンハットを配置することで成立しているんです。オープンハットの音を細かく切ることで、シャキシャキと歯切れのよい聴こえ方になります。

さて、この4つ打ちのフレーズですが、フットハイハットだけを消すとこうなります。

フットハイハットを使わない4つ打ち

MIDIノートだとこう。さっきの赤枠部分がなくなっていますね。
こちらもれっきとした4つ打ちです。オープンハットをミュートすることがないので、先ほどの歯切れの良さは薄れ、ずっとハットの音が鳴っていることからどこか空間的な印象を受けます。
この2つを比較すればフットハイハットを入れることによる影響の大きさが伝わると思います。

ちなみにこの2種類の4つ打ちですが、前者のフレーズは「雨とペトラ」のイントロ、後者のフレーズは「花瓶に触れた」のイントロで実際に使われているフレーズになります。ご参考まで。


もうひとつ、今度は8ビートで例示させてください。

裏拍で細かく切ったオープンハットを入れてアクセントとしているフレーズですね。
こちらもMIDIノートを添えて説明します。

先ほどと同じで赤枠部分がフットハイハットです。ここではオープンハットとフットハイハットの間隔は均等になっています。
それでは次の音源と画像を貼りますが、赤枠の中でも一番最後のフットハイハットの位置を覚えていてください。

最後のオープンハットの音が、少し長く鳴っていたことがわかるでしょうか?MIDIノートを見ると、ノーツ1つ分(音楽的には16分音符1つ分)後ろにずれています。

なんならもっと後ろにずらしてみちゃったりして。これは1つ目の音から4分音符1つ分後ろの位置にしています。

このように、フットハイハットをどのタイミングで使うか(いつハイハットをクローズするか)でオープンハットの鳴る時間が変化します。この話は4つ打ちでは説明しにくかったので、8ビートを使わせていただきました。




おまけ:カウントについて

フットハイハットの項目で書いた"カウント"について、補足説明を。
カウントとは、そのまま「数えること」です。ライブなどで曲を始める直前に「ワン、ツー、スリー、フォー!」と歌っているアーティストを見たことはありませんか?あれがカウントです。このカウントは、ライブだけでなく音源でもよく使われています。

冒頭

冒頭、『取りんで 1,2 1,2』の部分

者の行進 わんっ つー さん しっ』の部分


一例だけでもモンスター級の楽曲が挙げられます。
そして、歌声によるカウントだけでなくドラムによるカウントも存在します。
実例を挙げますが、既にこの記事で2曲引用しています。
まず「リスキーゲーム」。これはフットハイハットの項目を読んでいただければわかると思います。
そして2曲目が、オープンハイハットの項目で挙げた「ストラトステラ」。冒頭で「チーチーチー」って鳴ってる音がそうだよと書きましたが、これがまさにカウントにあたります。3回叩いてるので3カウント(略して3カン)です。

このカウント、説明してしまえばいたってシンプルなのですが、実に多くのパターンが存在します。4カウントや2カウント、1カウントといった回数の違い、スティックでカウントするか、オープンハイハットでカウントするか、フットハイハットでカウントするかといった音色の違い、さらにはクローズハイハットとオープンハイハットを組み合わせてフレーズっぽくカウントした複合的なパターンなど、様々です。
今回はハイハットの解説の延長ということで深くは突っ込みませんが、皆さんもいろんなカウントを探してみてください。




まとめ

以上でハイハットの音についての解説は終わりです!
ハイハットもスネアと同様で、ここで説明した種類以外でも鳴らせる音はあります。代表的なのが「フットスプラッシュ」になると思うのですが、こちらは下手に説明すると収拾がつかなくなりそうだったので説明していません。興味のある人は調べてみてね!
あとは基本的に私がGaragebandを使っているので、Garagebandにある音に絞って書きました。

最後に、「フットハイハットの真価」の項目で説明したオープンハットのミュートについて。ここでは便宜上「フットハイハットを使う」という言い方をしましたが、実際は「クローズする」とか「ハットを踏む」といった言い方をすることがほとんどです。DAWの性質上フットハイハットのノーツを使ってミュートすることになるので今回はこのような説明をしていますが、オープンハットをミュートする意図で使われるものをフットハイハットと呼ぶことはあまりないということをご理解ください。基本的にミュートの話ではなくハイハットをクローズした時に鳴る音を指してフットハイハットと呼びます。

これで3点セットの説明が終わったわけですが、このうちハイハットは特に音の鳴る仕組みがわからないと音の種類についてのイメージが掴みにくいと思います。リスナークリエイター問わず参考になる記事にできていたら幸いです。

こんな解説がほしいとかここの説明が足りてないといった意見や質問などがもしあれば、ぜひ教えてください!



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