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ピアノ

2、3日前に「Ella and Louis」という
エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングをボーカルに据えたJAZZ アルバムを聴いた。

今ね、伴奏している合唱団で「上を向いて歩こう」を弾いてるんだけど、自分のスイングが下手で、たまに盆踊りなのよ。
バロックのイネガルも付点つけすぎて、不自然だったんだよなぁ…。

Apple Musicにお世話になりつつ、色々聞いて研究しているうちに、自動再生で上記アルバムの中の「Moonlight In Vermont」が流れてきた。

ボーカルをかなり前に立たせて、バックミュージシャンをかなり後ろに置くミキシングなんだけど、ピアノがコードをアルペジオで奏でていて、素晴らしさが際立っていた。

フラミンゴみたいなピンク色のパステルカラーで、重みが少しある綺麗な布がフワッてする優しーい感じ。
アルペジオでハープのように和音を奏でる時の理想形だ…と思った。

また「Cheek to Cheek」のバッキング
(JAZZ用語の使い方これで合ってる?)
が、サビを歌うたびにさりげなく音も増えて
豪華になっていくの。
ガガ様×トニー・ベネット、手嶌葵×平井堅とかの「Cheek to Cheek」を聞いてきて、どれも好きなんだけど「Ella and Louis」のバージョンはノリノリというよりわりと固めのテンポで心地よく時を楽しむ感じ…。

ピアニストが誰か気になったでしょ。

オスカー・ピータソン

今、彼のトリオとかソロとか聞いてるけど
完成度が高すぎる。
優秀なミキシングエンジニアも勿論ついてるんだろうけど、録音じゃなくてliveでもクオリティが変わらない。

どこが好きかって?

最大の魅力は音。
JAZZピアニストって、ガラスや尖った鉛筆のような硬めで尖った、輪郭がハッキリした音を弾くのかなと勝手に思ってたの。
それかパッションとパワーに振り切った音とか。
チル系とか…。

彼の音やタッチはつぶつぶして軽くて明瞭。
アタックを勿論つけるんだけど、余計な力をかけないからキツくないし、音をビジュアル化してみるとお菓子売り場でたまに見るピンクパール色のアラザン。
銀色じゃなくて、ピンクのアラザンなのは、輪郭の明瞭さ意外に、ほわっとした優しさがあるから。
優しいけど、どんなに速弾きしても、アラザンの丸い形はつぶれない。

和音の全ての構成音が混じり合う弾き方。
拍の正確さ。音形の登り下りのスピード感。
エグい。ミスがほぼない。
そして「なんかこれはイマイチ…」っていう録音がない。全ていい。(暫定。今のところ。)

私の新たな楽しみです…。

もう一人はクラシックのピアニスト。

ジェルメーヌ・ディッサン=ヴァランタン

オランダ生まれ、パリ音一等賞の女性ピアニスト。Wikipediaによると1902年-1987年の間に生きていたらしい。

フォーレ演奏の大家。
(フォーレは超簡単にいうと、フランスの作曲家でフワフワとした、どこに向かうかよく分かんない夢のような作風の曲が多い作曲家です。)

珍しいのが子育てと家庭のために20年弱ピアニスト活動を休止。40代になって活動再開したそう。

ジェルメーヌも、おそらくApple Musicで知った。部屋を真っ暗にして「フォーレ 夜想曲全集」から「夜想曲第一番 変ホ短調」を聴くのが好きだ。

しかしオススメしておきながら、素晴らしいところが言語化できない。

ラヴェル、フォーレ、ドビュッシーとかのフランス人の作曲家は、やたら綺麗に美しく弾かれる場合も多いし、かえって本場フランス人ピアニストはキレキレな演奏をしていたり。

ジェルメーヌも基本は楽譜に書かれていないことはやらないというスタンスの表現なのだが、アタックや重みがある箇所、夢見るような高音、和音の重心の掛け方や色の付け方、音形の動きやスピード、レガート。
細かなニュアンスに彼女の想いや感情の起伏が感じられる。

うーん…。宝石で例えるとね。
ダイヤモンドや真珠のような、いかにもジュエリーみたいなキラキラ・ツヤツヤ・ピカピカじゃないの。
灰色が強い黒真珠とか、カメオ、磨きすぎていないペリドット。
でも、琥珀や翡翠、メノウのような石とは違う。
光っているし、佇まいにエイジレスな透明感や美しさはある。光沢を放つという表現でしょうか。(どーでもいいけど、ジェルメーヌってジェルネイルみたいな語感だな…。)

恋愛小説的に書くなら。
主張はせず、そこに存在しているだけなのに。
楚々とした綺麗さや美しさを感じる雰囲気をまとった人…。

調子乗りました。例え多すぎますねw

まとめると。
本当に上手い人たちって、個性を求めずとも、表現しよう!じゃなくとも、言語化できない、言語になる前の想いや感情の起伏が演奏から感じられるんだよな…。

あと、ここからは私の独断なんだけど。
いくら素晴らしくても、世界に入り込んじゃってる人は嫌いなんだよね。
舞台と客先の間に、壁がある人。
「おーい!聴いてる人置いてかないでー。」
「巨匠ぶんなよ。」
「お前の自○を見にきてんじゃねーよ。」

もう二人とも亡くなってるから、生では聞けない。実際の演奏は分からない。
録音を聞く限り、周りの空気・空間にも広がって溶けていくような演奏。
かといって、聴いてる人への圧は全くない。
余計なことは一切しない演奏。

ジェルメーヌは疲れた日に。
オスカー・ピータソンは朝とか、夜に。
洋風の朝ごはん、1日終わりのお酒と共に。

ピアノなんかやらなければよかったと何回思ったか分からないし、来世があるとしたら
選ぶか分かんない。

でも、2人の演奏を聴くと ピアノっていいなと
思ってしまう。
ぜひ聴いてみていただけたら嬉しいです。


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