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置いてきたのに

「BLUE GIANT」の映画を見て、漫画を一気読みしている。TSUTAYAで借りたら、ポイント2倍キャンペーン中だった!

その棚の近くに「ブルーピリオド」があった。「ブルーピリオド」が藝大(美術)を目指すお話で結構な鬱漫画ということは知っていた。その近くに同じ作者、山口つばささんの「ヌードモデル」という短編漫画集があった。

読んでみた。

いろんなものを置いてきて忘れたつもりでいたけど、思い出してしまって少し泣いた。

短編集には
三つのストーリーが収められている。

ヌードモデル
おんなのこ
神屋

「ヌードモデル」は私が1番共感できた。

美大進学を目指してる夏目さんという地味でポーカーフェイスな女子が、陽キャ男子に描いている絵を揶揄われるシーンがある。

また陽キャの括りだが、その中でも罰ゲームとしてなかなかなことを命令されている男子がいたり。

中学のときの雰囲気に引き戻された。

私もいわゆるジミーズで、容姿もイマイチで(気も使っていなかったが…。今もか笑。)
陽キャ男子からは変人として扱われていた。
また、半分遊びだが美術部に所属して、ピアノをそこそこ真面目にやっているという…
超マイノリティな立場だった。

学校自体、陽キャと地味ーズのカースト差がすごかった。人に対して振る舞える態度の許容範囲まで変わってくるのだ。

カースト上位でも安心はできない。
陽キャの中でも、いつもいじられて嫌そうな顔をしている男子がいたり、卒業式前後に仲間内みんなに裏切られたカースト最上位の女子もいた。

結論、中学生時代は、サバイブして過ごした。

ねぇ。そんな中でもさ。
何でだろう?
文化系って、カースト低いよね?

うちの中学の場合は、同じ文化系でも吹奏楽部はカースト上位だが、美術部・パソコン部になると途端に扱われ方が雑だった。

美術の授業、クロッキーでの自画像だっただろうか。「美術部だからって自分の顔可愛く描くなよ。」と言ってきた男子がいた。

美人でもないのだから美化して描けるわけもなく、そのままを描いたら「やっぱリアルに書いてるわ…。」みたいなやりとりのみで終わり、囃されることもなくホッとした。
今でも思い出せるということは嫌だったのだろう。

美術部は圧倒的にありえないレベルで絵上手いとか、パソコン部はプログラミングでロボット作っちゃうとか、誰の目から見てもすごいレベルだったら、舐められなかったのだろうか。

それは分からない。
今もそのままの雰囲気なのだろうか。

さあ。
その次は「おんなのこ」
話の意味をきちんと理解すると怖い。
そして気持ち悪かった。
主人公が自分の醜さと愚かさを、身をもって体験することになったのだが、まだ思春期に気づけて良かったと思った。

3話目は「神屋」
切なかった。とても。とても。
主人公の女の子がサチなのにね。
医者なのに血がダメというありえない設定なのだが、LINEのやりとり何コマかだけで、さりげなく毒親の要素を匂わせたり…。
自己肯定感も描かれているように思う。
あと、素朴な疑問。ホストにハマってる女子の資金源ってどっからなのかな…?

ということで、ネタバレにならないよう
かなり端折ってふわっと書いた。

一つのストーリにとても色んな要素が入っているのだが、あとから考えてみるとちゃんと繋がっているのだ。

身体をみせることと好意、他人に見せる顔。
性欲と劣等感・優越感、無意識の差別意識。
自己肯定感と自己犠牲、そして心や感情。

明確に分かりやすくセリフや画では訴えないが、読み手が察することができる。
重くて鬱鬱とするのだが、解釈のしようによってはロマンティックにも思えてくるし、「絶望」にまでは落としてこない。

それに加え、山口さんの絵が素敵だ。
書き込みがすごいわけではないのに、ディティールをちゃんと決めてくるし、細かい。
人物のニュアンスが「あー、実際に確かにこんな感じの人いるかもしれない…」というリアルさがあるのだが、フィクションのキャラクターとして、ちゃんと綺麗なのだ。
また、ページ見開きで見た時に、画角や配置がかなり計算されているように思う…。
多分。

私は、指先や足首などの人体の細い部分。
あとは特に「ヌードモデル」の夏目さんのうなじ、髪の生え際の形が、浮世絵の日本髪美人と似ていて萌えた。あれは意図的なのだろうか。
(江戸時代の女の人はうなじの毛を、好みの形になるよう小まめに抜いていたらしい。)

あぁ、それに皆さまお分かりでしょうが、露骨ではないけど、この短編集R15要素入ってるのですよ…。今更ですが。

それを踏まえて。
お顔は男女共に割と眉細めで美しく中性的に描かれているのですが、骨格&身体の書き分けにリアルな性差があるのです。

男性の肩の奥深さや、太ももの太さ、首の骨の張り方。

女の人の肋骨の狭さや腰の華奢さ、人によって違う胸の膨らみや肉のつき方。

漫画ってやたら胸を大きく書いたり、筋肉モリモリとか、すごく太っているキャラがいたり。誇張されていることが多いけど、ちゃんとリアル。
でも現実そのままではなく、絵として美しい。これが色気や雰囲気に繋がっているんだろうな。

基本、漫画を読み返すことはないんだけど、久しぶりに何回も読み込みました。

10年近く前、そのほかにも心に閉まってきた経験など、もう遠くに置いてきて、なんなら葬り去っていた気持ちを、雰囲気レベルで思い起こさせるくらいの漫画でした。

覚悟がいるだろうけど、ブルーピリオドも読みたい。


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