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覚えていて。春はきっと来る。/デイヴィット・ホックニー展

1.はじめて行きました、東京都現代美術館

開放的なエントランスに設けられたフォトスポット

2019年3月にリニューアルオープンをした東京都美術館。略してMOT。
場所は江東区三好、私にとってアクセスがいいとは言えない場所にあるため、今までなんとなく先送りにしていた美術館でした。今回、ホックニーを見るため、よっこら重い腰をあげて出かけたのですが…

素晴らしい建物でした!
美術館前の広場、エントランスホール、アトリウム、中庭。吹き抜けと大きなガラス窓の採光により館内は明るく、屋外とのつながりを感じる開放的な空間です。しかもエレガントな明るさ。
ステキなインテリアがしつらえられた美術図書室もあり、企画展がなくても楽しめそう。近所に住んでいたら絶対通う。来てよかった〜と思える建物でした。

こちらMOT公式サイト↓ 写真だけでも楽しめます。

2.デイヴィット・ホックニー展へ

フライヤーと鑑賞ガイド
鑑賞ガイドは公式サイトからダウンロードしました。ユース向けですが、参考になります。
出品リストは会場にも公式サイトにも見当たらず…

●会場は3階と1階。まずは3階から始まります。
今回、重い腰をあげた理由は、どうしても観たい絵があったから。
さてさて、どこで観られるかな〜? 
ワクワクしながら会場に入ると、なんと一番最初にお出迎え。早くも目標達成。

それがこちらの絵です。

「2020年3月16日 春の到来 ノルマンディー2020年」(2020)

ホックニーのメッセージも一緒に紹介されていました。

“Do remember
They can’t camcel the spring”
 ー春が来ることを忘れないで

このメッセージを知っているのと知らないのでは、絵の見方が全然違ってくると思います。
コロナ禍の中、描かれた花。夏の暑い時季には気配すら感じないのに、冬が終わる頃に地面から芽を出し、葉を伸ばし、やがて頭をもたげて咲くラッパスイセンです。「希望を持って。」というホックニーの願いが込められているように思え、ちょっと感動しました。
コロナに限らず、これからも真っ暗なトンネルに入ってしまうことはあるだろう。その時はこの絵を思い出そう。トンネルの先にはきっと光がある。---そんなことを思いながら、鑑賞しました。

3階の展示、気になる作品はたくさんありましたが、なかでも注目したのは肖像画のコーナーです。ホックニーが今の時代を生きているから、肖像画のモデルもブルーノ・マーズとかリアルに知っている人がいて親近感。

「自画像、2021年12月10日」(2021)

こちらの自画像、ポップでいいなと思って模写したのですが、予想より表情が難しい! 顎の角度とか、唇とか、線が微妙で、何度も何度も書き直しました。それでも上手くかけたとはいいがたい出来…。
そういえば、他の肖像画も表情やポーズが絶妙でした。モデルのみなさん、一言では言い表せないお顔をしていたと思います。だから、モデルの性格だけでなく暮らしぶりまで妄想がふくらんだのかもしれません。

たとえば、代表作と言われる「クラーク夫妻とパーシー」(1970-71)。
どうみてもこの夫婦、一波乱ありそうな雰囲気がプンプンしました。夫婦と言うより姉と弟みたいだし、2人の表情やポーズ、百合、画中画、猫、窓…。うーむ、意味深すぎる…と思ってググってみたら、案の定でした。

↓文春オンラインさまの記事です(これも文春砲なのかな?)

●階段を下りて、1階へ
途中、2階ではホックニーの画集や著書の展示をしていました。この展示アイディア、ナイスです! 3階から1階への移動中、鑑賞気分が途切れない効果があると思います。ホックニーの世界観を引き続き本で味わえるし、コンパクトな展示なので時間がかからないところもよかったです。

さて、1階は大作が続きます。
思わず見入ってしまったのは…

「春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年」(2011)

右から鑑賞しながら歩いて行くと、まるで景色が動いているような感覚に。そして、絵の中央にある道の正面に立つと、なぜか一時停止した感覚になり絵の中に一歩踏み込みたくなります。とたんに絵の端がぐるっとめくれて半円形になって私を取り囲み、さぁっと風が吹いて木の葉が舞い散る、そんな不思議なイメージが広がりました。

そして圧巻は、こちら。驚きの全長90m。

「ノルマンディーの12か月」(2020-21)
「ノルマンディーの12か月」(2020-21)

ちょうどコロナ禍の最中に制作されたものですね。あの混乱の中、こんなに穏やかな、心安らぐ絵を描ける精神力がすごい。
なお、こちらはiPadで描かれた絵。やはり油彩や水彩とはちがう印象が。絵の具の盛りや滲みがなく、色と色が重なってレイヤーになっていたり、同じ形のものが何個も存在しているのが特徴的でした。
それにしても、色鮮やか。この鮮やかさは、iPadのバックライトの上に描いた色だからなのでしょうか?
あと、絵巻物みたいだなと思ったのですが、よく考えたら日本の巻物は右から左へ観るのに対し、ホックニーは左から右へ観ます。縦書きと横書きの文化の違いなのかしら?

 ※全体の様子は「美術展ナビ」さまの公式YouTubeなどで観られます。

ホックニーの世界を「感じる」
ホックニーと同世代の現代美術の大家、ゲルハルト・リヒター。
先日行った「テート美術館展」にも1枚だけ展示があったけれど、あいかわらず「自分で考えろ」と言われ、背筋が伸びた思いでした。(^-^;
 ※詳しくは、こちらの過去記事をご覧いただければ幸いです↓

では、ホックニーは? …「感じてごらん」と言われた気がしました。

例えるなら、リヒターは交感神経を、ホックニーは副交感神経を刺激するというのでしょうか。(どっちも好きですけども)
ホックニーの世界を感じて、包まれる。そんな展覧会だったと思います。

※美術手帖さまのサイト。写真がとてもキレイです↓

3.常設展へ

フライヤー(もらい忘れたのでダウンロード)

常設展は、1階「被膜虚実」と
3階「特集展示 横尾忠則―水のように/生誕100年 サム・フランシス」

ホックニーのチケットで入場できますし、3階の「横尾とゆかりの深い作家の作品」コーナーにはホックニーの作品も数枚展示されていたので、かなりお得だと思います。(^^)/
各作品に「ガイドスタッフによるつぶやきトーク」というキャプションがあって、鑑賞のポイントを示してくれるのもうれしいポイント。

1階入口 文字だけなのにカッコイイ

私が最も目を奪われた作品がこちらです。

Pixcell-Deer #17(2009)  名和晃平

雪山で、野生の鹿にバッタリ出会ってしまったような気持ちになりました。
ガラス玉が光を反射して美しい。反射光が、鹿の体から発せられる湯気のようにも見えます。
鹿といえば春日大社=「神のお使い」というイメージがあるからか、とても神秘性を感じる作品でした。

鹿の背後に何も展示しないでいてくれて、MOTさん、ありがとう。鹿の世界に浸れました。部屋の中央に据え、真上から光が当たるような展示が潔くてカッコよかったです。展示室の天井が高いのをうまく利用している感じでした。(←えらそう)

PixCell-Bambi #10 (2014)  名和晃平

愛らしいバンビちゃん。写真だとよくわからないけれど、黒くうるんだ瞳が少し哀しくも見えました。
これらの作品は、鹿の剥製にクリスタルガラスの球体をつけているとのこと。ガラスの中には、以前、確かに命があったんだなぁ。

※常設展の公式サイトです↓

4.きょうのおみやげ

●絵はがき
今日の収穫は、上掲した「絵はがき 2枚」です。

他にもいろいろなグッズがありました。ホックニーの絵画は色彩が爽やかなので、グッズにすると綺麗です~。特にカレンダーとスカーフが素敵でした。横長の作品は、マスキングテープと相性がいいですね。

5.展覧会情報

●東京都現代美術館(2023年7月15日(土)- 11月5日(日))
※巡回はありません。残念!

※MOTさんはホックニーをかなりコレクションしているようなので、もしかしたら常設展で観られる機会があるかもしれません(勝手な予想です)

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