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自分で考えろ/ゲルハルト・リヒター展

1. ゲルハルト・リヒター展@国立近代美術館

あれ? 何も伝わってこない。
それが、ゲルハルト・リヒターを観た第一印象でした。

私は絵を観るとき、内容(色彩・タッチ・モチーフ・表情など)を頼りに
作者は何を描きたかったのかを考えます。
けれど、リヒターの技法(絵を削る・ぼかす・オイルで上書きなど)が
電波妨害装置のようなはたらきをして、
作者の意図になかなかフォーカスできなかったのです。

「自分で考えろ」と言われた気がしました。

情報を受け取り、解釈することを習慣にしていた私に
絵に自ら入り込み、自由に想像しなさい、と。

いままでと違う絵画の見方に気づくことができた展覧会でした。
観終わった後の充実感と疲労感が凄かった…。

2. 技法について想像してみる

まずは、リヒターの代表的な技法を、ざっくりまとめてみます。

●フォト・ペインティング:写真を正確に描く
●グレイ・ペインティング:「なんの感情も、連想も生み出さない色(リヒター)」であるグレイを使って描く
●アブストラクト・ペインティング:一度描いた絵の上からスキージで絵具を塗り重ねたり、削る
●オイル・オン・フォト:写真に油彩具を塗りつける

自らの表現を、わざと隠しているようにさえ思える技法。
なぜ、このようなことをするのか、考えてみました。

リヒターの教えを受けた渡辺えつこさんによると、リヒターは「ストレートな物言いをする人」のようです。また、「極端な解決策」「偶然性を通して出てきた作品が作者を超える」とも言っていたとのこと。
参考サイト↓
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/gerhardrichter/

これ、ポイントになるような気がします。

あたりまえですが、リヒターはものすごく絵が上手です。
会場には静物画、風景画といった古典的な主題の絵画も展示されており、
どれも素晴らしかったです。

ストレートな性格であり、表現する技術も充分持ち合わせているから、
そのものすばりが描けてしまう。
この直接的な表現を嫌い、「偶然」を求めた「解決策」がこれらの技法なのかな、と。(あくまでも私の推論です)

例えば、「8人の女性見習い看護師」は、事件で亡くなった看護学生の新聞記事をもとに肖像画を描き、さらにそれを写真にしたもの。
主観的な絵画を写真という客観性のフィルターをかけることで
より一層、事件を具体的に表現しているし、観る人の想像をかきたてる気がしました。
参考サイト↓


3. きょうのおみやげ

左上から 4900の色彩・モーターボート・エラ・不法に占拠された家

今回は、めいっぱい想像(妄想)できそうな絵はがき4枚を選びました。

4900の色彩/2007
25色のカラーチップ、196枚を展示する空間に合わせて組み合わせた作品。
展示空間とカラーチップの組み合わせの「偶然」が見られます。
ということは、絵はがきと会場の作品は異なる組み合わせかも?
自分の部屋に飾るとしたら、どんな配置にしようか…

モーターボート(第1ヴァージョン)/1965
バカンスを楽しむ裕福そうな若者たち。(フォトペインティング)
ぼかしの効果か、スピード感と危うい雰囲気が感じられます。
このあと、何事もないといいけれど、と心配してしまう。

エラ(903−1)/2007
リヒターの娘さんです。確か9歳と解説に書いてあったような…(うろ覚え)
9歳にしては大人っぽいですね。こちらのぼかしは、子供の中性的な表現のように見えるし、子供時代の時間の速さ、移ろいも感じさせます。

不法に占拠された家 /1989
タイトルを見るまで、廃屋が描かれているのだと思っていました。
まったく人気(ひとけ)が感じられません。
黒い窓。外壁をつたう枯れた蔦。静寂。
この家で一体、何が起こったのだろう。いや、いま、起こっているのかも…。「ビルケナウ」を観たあとだけに、不穏な空気を感じます。

おまけ:
LEUCHTTURM1917(ドイツのノートブランド)のノートがすごーーーく
カッコよかったです。私には大きくて重いなぁと思ったので、購入は見送りましたけど。(グッズは、愛でつつ使う派)

4. 展覧会情報

東京国立近代美術館
https://www.momat.go.jp/am/

展覧会公式サイト


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