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きたよ、老

治らない……甘く見ていた。こんなにもずっと痛みが続くとは……。

左肩関節周囲炎
通称「五十肩」である。

半年ほど痛かったのに「四十肩の経験者だからわかる。こういうのは何をやっても治らんけど、何もしなくても知らん間に治るのだ」とたかを括って甘く見ていたら、どんどん痛みが増し、寝返りのたびに痛みで目が覚めるようになってしまった。
ネット検索してみたところ「五十肩と思って放置していたら、腱が断裂してることもある」って書いてあって、マジこれやだ!とやっと重い腰を上げて近くの整形外科に駆け込んだ。

私の整形外科のイメージは最悪である。今まで膝の痛み、足底の痛み、ぎっくり腰などで受診したことがあるが、軽く問診されたあと、レントゲンを撮って骨や腱に異常がなければ湿布か塗り薬を処方され「リハビリやってく?」と2階のリハビリ施設に送られ、老人に混じってあったかいもので温められ、電気のビリビリをかけられ、理学療法士さんに10分ほどモミモミされて終了。申し訳ないけれどそれで治った!と実感した試しがないのだ。だいたいゆるゆるのリハビリに何度も通うことなく痛みは自然に消えていった。だから湿布でも塗り薬でも、リハビリでもなく「いずれ痛みは消える」「日にち薬」という鉄則が頭の中にこびりついてしまったのだろう。

しかし今回は別。なにしろ「腱が断裂している可能性もある」という文字を見てしまった私はその後の「そうなったら手術しか方法はない」という記述を見て震え上がってしまった。

ここ数年で両方の両親をたてつづけに亡くし、頭の中は自分たちの老後でいっぱい。そろそろ相続対策、年金や保険の計算、障害のある次男ちょびの親亡き後など、経済面のことばかり考えていたが、老後で一番大事なのは、お金とともに「健康」なのだ。健康があってこその老後の生活だ。

もう一つ老後の健康の不安のもとになったのは、春にパパりんに無理やり受けさせたがん検診である。胃カメラをしたのに、そのおまけてやってくれた膀胱や前立腺のエコーと血液検査のおかげで、ものの見事に前立腺がんが見つかった。前立腺がんといえば「あまり命に関わるがんじゃない」で有名だが、パパりんの場合精査したら他の臓器や骨に転移はしていないものの、かなり悪性度が高いものだと判明。長男が卒業した医大病院で全摘手術が決まっていたのだ。

一人でやってる開業医が入院手術するって、本当に大変だ。もちろん休診になるし、その間のスタッフの給料も発生する。これからの工面や予約の調整に神経をすり減らしているところに五十肩の痛みで眠れない。

治さねば。健康な、スマートで綺麗ではなくとも、せめて自由に動ける体だけは維持しないとやってられん。

そんな思いで駆け込んだ整形外科。レントゲンの結果は「典型的な五十肩ですね」とのことで、骨や腱の断裂などは見られなかった。スマホゲーム(3Dマッチ)のやり過ぎであるという自覚が胸いっぱいに広がっていたが口には出せず、おとなしく塗り薬とリハビリの処方箋をいただき、2階のリハビリ室へ。

今回、最初に当たった理学療法士さんがよかったのか、的確に「肩甲骨の周りがガチガチに固まっている」所見と、その動かしかた、ピンポイントの「力づくでの肩甲骨はがし」を経験し、まじめにリハビにに通う気持ちが芽生えた。老後の動ける体のために。

今のところリハビリに週2回くらい、合計で13回ほど通っている。一進一退ではあるが、可動域は確実に広がり、とりあえず前面の上下は80%ほどは取り戻しただろうか。問題は背面に左腕が回らないことだが、上下にさえ動けばなんとか着替えも工夫してひとりでできるもん。

理学療法士のMr.ゴッドハンドに教えてもらった肩甲骨を開く運動を毎日しながら、夜は必ず全身のストレッチを欠かさず、食事にも気をつけ、とにかく痛みなく動ける老後を目指している。

60歳になっても「五十肩」と言われたのがちょっと嬉しかったのはここだけの話。

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