創作する事の呪い


 ここにはまとまりのない文章があるかもしれないけど、今書かないと書けないからここに残しました。


 自分にとって創作する事は呪いに近い。
 ゲームで言う呪われた装備といってもいい。強くて、カッコよくて。でも呪われているので一度でも装備したら最後。呪いを解くアイテムでも見つけない限り外すことはできない。

 もしかしたら“呪い”という表現にピンとくる人もいるかもしれない。僕自身、もしかしたら誰かが創作する事を”呪い”と表現していたのをどこかで見たのかもしれない。

 創作は喜びをくれる。僕の場合は文字を書くことで。何故かは分からないけど言葉と言葉を繋ぎ合わせ、自分の狭い引き出しをひっくり返し、頭の中の辞書のページを捲りに捲っていくときの集中している感覚は何故か心地よい。内に在るだけだった形の無い言葉を、外界から認識できる形ある文へと出力することが楽しい。これはもしかするとマラソンで言うランナーズハイにも似ているかもしれない。よく知らないけど。
 ただそうやって書いた分は大体の場合後で見直してみるとどこかがおかしかったりする。前後の繋がりが変だったり、演出がくどかったりとかで結局手直しする事が殆どだ。それも含めて書くのが好きだ。

 創作は苦しい。書けていないとそれだけで不安になる。書けていないと罪悪感が沸いてくる。今は趣味の範囲で別に誰に迷惑をかけているわけでもないし、締め切りがあるわけでも無い。それなのに書けない自分は無価値だとさへ思ってしまうこともある。明日はきっと書けるさと布団に入るときの自分への言い訳。

 創作に手を出したら創作をし続けなければならない。心が創作しろと言ってくる。「何故書かない」「内にある世界を表現しないのか」と、こういうふうに。溢れてくる創作欲は形にすることでしか満たされない。そしてその形を表せないことや、形を表す行為そのものが出来ないとそれがストレスになる。

 私生活のあることが原因で一切の創作活動が出来なくなった時期があった。そのときは心底その原因となった人物を恨んだ。その失われた時間については今も恨んでいる。あの時期さへなければもっと書けていたのにって。過激なことを言えばここがアメリカでなくて良かったと思うほどに。きっと自分か相手を撃っていただろうから。

 「創作は呪いだ」と何人かに言ったことがあるけど本当の意味で理解してもらったことは、たぶん無い。自分の事を話すのが嫌いだからこのことについて踏み込んで話す必要も無いなと思ったのもあるけど。

 楽しいけど苦しい。辛いけど面白い。形になってお気にいりの文章を読み返している時のフワフワした感覚。誤字脱字を見つけた時の落胆。読んでいて言葉が自分の中で繋がって脳内で映像となって動いて行く様子。情景を表す文字と言葉と文章が見つからずに断念した時の無力感。キーボードを打つ感覚。リズム。音。ふと我に返り自分の書いた文章が読みたくなくなる時もある。

 心地よい布団の中の浅い睡眠のまどろみの中で無意識に文章を唱えている時がある。何故かその時は無意識なのに意識が明瞭としているような矛盾した状態で、自然と頭の中で繋がれた言葉がとても心地よいリズムで流れていき、一つの物語となって完結する。それはファンタジーだったりSFだったり。詩的なリズムを含んでいたり。
 それなのにそれは目覚めと共に消えていってしまう。手の中にあったはずの言葉が霧散し、消えて、無くなる。確かにそこにあった。という不定形の実在感と何も無い手ごたえの紛い物を残して。その手ごたえを手掛かりに再現しようにも、するりと抜けていった文章は二度と手に入らない。のこされた文章もまた紛い物に思えてしまうから。

 僕が何故、文字を書くことが好きなのかというと良く分からない。なんとなくブログを書くことから始まって。日々のちょっとした日記から、映画やドラマの感想、ゲームの事だったり。そこから小説に流れて行って。間が空いたりしたけども結局書くことに帰って来る。そういうと言葉遊び、というのが近いかもしれない。
 たいして読書家でも無かった人間がこうして文章を書いている。一時は本を読んでも文章を読んだ先から忘れ、同じ行を何度も読んでやっと先に進めるような、言葉を理解できないような状態になっていた僕が小説を書くことに挑戦し続けている。今は活字に飢え始めてさへいる。

 創作は辛いけども、創作しないと心が死んでしまう。誰かの言葉なのかもしれない。それでもこれはとてもしっくりくる響きを持っている。書きたいから書くし、書かないと心が死ぬから書き続ける。これは創作する者の普遍的な悩みなのかもしれないけど、きっと少しづつ違うものでもあるのだろうと思う。
だから僕はこの呪いと歩き続けたい。そう思う。呪いを解除できるよって言われても「いらないよ」と答えるだろう。




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