情熱は国境を、国籍を越える➂

今思うと、私はその時に出会ったアンティークジュエリーのディーラーさんに
恵まれていたんだと思う。

私はバイヤーで、彼女はディーラーで、
彼女にとって私はジュエリーを買ってくれるお客であることは間違いない。
それでも、英語もままならない、日本人の私に優しくしてくれた。
そのディーラーさんの家族全員を紹介してくれたし、
自宅で個人的に買い付けもさせてもらう。
一緒にディナーしたり、
ディーラーばかりのランチ会に私を混ぜてくれたりもする。
もちろん、日本人は私だけで、他は全員イギリス人だ。

誰がいいディーラーで、誰が良くないディーラーかを、
こっそり教えてくれる。
この子は「日本人のバイヤーのリサ！」と仲間に紹介してくれた。
毎度、私の質問には永遠と、、答えてくれる。

「リサには情熱があるから。
買い付け価格が安いからという理由で、アンティークを選ばないから。
ちゃんと、本物を買おうとするから。
アンティークのコピーなど、この世にはたくさんある。
でも、ちゃんと見極めて、少しずつでいいから、
グレードの高いアンティークも扱えるバイヤーになりなさい。
バイヤーとして、成長していきなさい。
この仕事はバイヤー歴など、関係ないの。
何十年やってたって、何も学びもなく、
永遠に本物を扱えない、ディーラーやバイヤーもいる。」

アンティークというものを扱う以上、責任は重い。
お客様の中には、はじめてアンティークを買われる方や、
アンティークを知らない方も多い。
誰がいいバイヤーなのか、これは本物なのかさえ、
プロでなければ、判断は容易ではない。
プロでも、判断できない人もいる世界だ。

だからこそ、絶対的に知識をつけること、
確かなものしか買い付けしないことが大切になる。
ご購入頂くお客様への、私が精一杯お返しさせて頂けることは、
それしかない。

そして、彼女は私に言ってくれた。
「私が本物を扱いなさいという意味は、
そうでなければ、この世界では生き残れないから。
本物を扱えば、そういうお客様がリサについてくださるから。
大丈夫。」

私が、ずっとジュエリーの世界で生きていきたいという覚悟は、
ちゃんと彼女に伝わっていたんだ。
私をバイヤーとして、認めてくれていたんだ。
もちろん、私のレベルはまだ彼女の足元にも、及ばないけれど。。

バイヤーになって、数年後、
1700年代のダイヤモンドゴールドリングを買い付けできるようになった時、
本当に嬉しかった。
私が、拘って拘って、選んだ本物のハイランクのアンティークジュエリー。
自信を持って、100年後も美しいままと言えるジュエリー。
数多く揃えることはできないし、
安くお出しすることもできない。

でも、私は、このラインを大切にしていこうと思っています。
お客様に一生寄り添うジュエリーを、、、
ひとつずつ。

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