読了報告#6『僕が君の名前を呼ぶから』
面白かった。みんなも読もう!
書籍情報
タイトル:僕が君の名前を呼ぶから
著者:乙野四方字
出版社:株式会社早川書房
前の二作について
『僕が君の名前を呼ぶから』と同じ世界観を共有する物語に、『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』があります。この2作に関しては、おそらく5~6年ほど前の作品だったと思う。当時、中学生だった時にぶらりと寄った本屋で遭遇したことを覚えています。
そして今回も、特に目的もなく行った本屋で本作とも出会った。
今回も衝撃的だった。
不条理と人の輪
今回改めて大人になってからシリーズに触れなおしたわけだが、改めて好きなシリーズになった。
世界観
設定や出てくる用語、世界観は完全にSFな今作。
ある日、科学的に並行世界の存在が認められる。
しかも人々は並行世界を行き来しながら過ごしているという。
そんな中、人々はどんな風に暮らしていくのか
という感じの概要。うーむ、SF。
だからと言って難しいことはなく、普段SFを読まない人でも読みやすい作品だと思う。現に私もSF読まないし。
今作が読みやすいのはそのテーマにあると思う。
テーマ
といってもこれは私的な考えなので悪しからず。
シリーズに一貫されたテーマに、『人と繋がる』というものがあると思う。
というのも、どの作品でも主人公は英雄的に振る舞うことがほぼない。
この世に生を受け、自分の生を必死に生きて、そして彼岸へと去る。
まぁ、当たり前のような人生が書かれている。世界を危機から救ったり、怪物を倒したりなんてことは一切ない。
ただ一人の人生が記されているだけ。だけどそれがいい。家族や周りの人と繋がって、別れて、時にはすれ違って、また出会ったり。どこにでもあるような人生が書かれている。
並行世界という不条理
テーマだけ見るとありがちに写るかもしれないけれど、ここで並行世界という不条理が強烈な説得力、カタルシスを呼ぶ。
どうしようもない現象にひたむきに向き合うしかない人たちが、必死になって生きている様。確かにヒロイックではないかもしれないけど、どことなく格好良くて、素晴らしい生き様だなと、しみじみ感じられる。
あまりしゃべりすぎてもネタバレになってしまうので、深くは掘り下げないけれど、すごく良い。ある種凡庸にも感じられる人々の交錯は、凡庸さ故に共感を呼ぶ。
本作を読んで、心温まりもすれば苦しく辛い気持ちにもなれる。人と触れ合い、繋がることの大切さ、ありがたさが身につまされる気持ちになった。
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