3Dモデルの導入で作画スピードが12倍に!『未来の飛行機野郎ハルト』 作者 S.濃すぎ先生インタビュー
こんにちは、秋葉原で3Dデータ制作と3Dプリントのサービスをやっている株式会社メルタです。リモートワークに合わせて引っ越した先のオフィスで、社長とバーチャル社員が戯れたりしています。
メルタは3D関連の様々な仕事をしているのですが、この1年で「漫画・イラスト用3Dデータ制作」のご依頼をいただく機会がグッと増えました。2019年に紙と電子コミックの売り上げが逆転したように、作画のデジタル化も当たり前になってきたことが影響していそうです。
引き続き、もっと多くの漫画家・イラストレーターの皆様にご利用いただきたいのですが、「そもそもどうやって3Dデータを頼めば良いのか?」「3Dデータを使うとどんな良い事があるのか?」といった声も聞こえてきます。
そんな疑問にお答えするため、メルタの3Dデータを使って漫画を連載されている、S.濃すぎ先生にインタビューをさせていただきました!「3Dモデルを使ったら、体調を整える時間ができました」と語る先生の変化とは一体...?
空飛ぶファンタジー&ラブコメディ 『未来の飛行機野郎ハルト』
こちらがメルタの3Dモデルを活用した作品『未来の飛行機野郎ハルト』。KADOKAWAの漫画誌『ASUKA』のリニューアルに合わせ、7月号から初回1話2話同時掲載 115ページの大ボリュームでスタートしました。
舞台となるのは「空」が禁忌とされる世界。空を見上げることも許されない世界に現れた少年ハルトは、恋した少女サヨナの呪いを解くため、自作の飛行機「リーベmark Ⅱ」を駆って大空を目指していく...!というストーリー。
階層状になった世界を移動するための重要なアイテムが「飛行機」。整備して、飛んで、時には落ちて(?)を繰り返しながら、都市・ジャングル・西部劇風の街など、目まぐるしく変わる世界を冒険していきます。
「ジュブナイル系のコメディが描きたくて、そこに恋愛要素を盛り込んだ」と語る先生の言葉通り、キャラクター同士のポップなやりとりが楽しく、どんどん読んでいけるのが魅力。軽妙な雰囲気の中にも時折ミステリアスな世界が謎を覗かせ、色々な読み方のできる作品です。
今回ご依頼いただいたのは、ハルトたちの乗る飛行機「リーベ mark Ⅱ(以下リーベ)」の3Dモデル制作。細部まで手の込んだリーベは作中でも重要な役割を担っていますが、その完成までの経緯について伺ってみましょう!
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連載開始に3Dモデルを間に合わせる
ーー リーベの3Dモデルをご依頼いただいた理由を教えてください。
S.濃すぎ:もともと飛行機は好きだったので、モデルがなくても描けるかな?と思っていたんです。でも「ストーリーが決まって、あとは作画だけ」となった段階で、最初の締切まで1ヶ月しかなかったんですよ。
このスケジュールでは、自分で描くにせよアシスタントさんにお願いするにせよ、3Dモデルがあったほうが良いだろうと思い、知人の助けも借りながら急いで3面図を起こして依頼することにしました。もし初回の連載にモデルが間に合わなくても、今後の役に立つだろうとは考えていましたね。
ーー これまで手がけた作品でも3Dモデルは利用していたのでしょうか?
S.濃すぎ:はい、現代ものであれば有料の素材も売っているので、よく購入して使っていました。ただ、オリジナルの3Dモデルの制作をお願いすることは初めてだったので、ネットで検索して、個人のモデラーさんや企業をいくつかあたりました。
メルタにお願いした理由は、Webサイトに漫画素材の見本があってイメージが湧いたことがひとつ。後はとにかく時間がなくて納期が重要だったので、会社として、しっかり納期を示してくれることからメルタを選びました。
1時間かかる作画が5分になった
ーー 3Dモデルの制作は先生と弊社ディレクター、弊社モデラーの3人で進めていきました。このやりとりの中で、何か気になったことはありますか?
S.濃すぎ:飛行機のディテールを伝えるのが大変でしたね。飛行機が浮くための形状なんて、普通の方は当然知らないじゃないですか。それを3Dに起こすとなるとさらに大変なので、図と一緒に文章も添えて説明していました。
ーー 3Dモデルが届いてから、作画にどんな変化がありましたか?
S.濃すぎ:いやぁ、もうすごい助かりました(笑)。とにかく、作画にかかる時間が減りましたね。リーベを1機描くのに1時間かかっていたところが5分くらいになりました。話の中に何コマも出てきたら、それの倍々で時間がかかりますから、やっぱり3Dモデルを作って良かったなぁと。
漫画家は本当に時間に追われているので、時間の制約でコマ数や構図を変えたりするんです。締め切りに間に合わせるために見えなくしたり、省いてしまったりするようなコマも、出し惜しみせず描けるようになりました。
角度やパースを自由に決められるのも3Dモデルの利点ですよね。パノラマや魚眼レンズを通したような、奥行きのあるカッコ良い構図もスピーディに描けるので、表現の幅も広がったと思います。
ディテールの描画で飛行機の世界に触れる
ーー リーベの3Dモデルを製作した後、計器盤やコクピットなどのモデルもご依頼いただきました。漫画の中でも操縦法などが描かれていますよね。
S.濃すぎ:まずは外観をお願いして、作画で必要になると思ったものを後から追加していきました。特に計器盤は大変なので、大助かりでしたね。
読者の方も飛行機の細かいことは分からないと思うのですが、「こうやって飛んでるんだよ」「結構飛ばすのは大変なんだよ」と知ってもらえれば楽しいかなと。ファンタジーの世界なので、ディテールはいくらでも逃げられるんですけど、満足してもらえればと思いながら描いています。
ーーファンタジーな世界の中でも、こうしたリアリティがあることで、グッと深みが出るように感じました。
S.濃すぎ:ありがとうございます!
3Dモデルのコストは「時間との天秤」
ーー 正直なところ、コストパフォーマンスはいかがでしたか?
S.濃すぎ:3Dモデル化された分の作画時間が減ったので、アシスタントさんを増やす必要がなくなりました。本当に忙しい時は単発で募集をかけたりするので、そうした何人分かの人件費は浮きましたね。
でも正直、金額のことはそこまで考えていませんでした。何より時間の短縮になったので、そことの比較ですね。私も含め、漫画家はとにかくギリギリの中で描いているので、少しでも手が軽くなってほしいんです。
ーー 漫画家は本当にやることの多い仕事だと感じました。弊社の3Dモデルが、少しでも負担の軽減につながっていれば幸いです。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!
あとがき
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
株式会社メルタは、全ての人に「やさしいものづくり」を掲げ、標準3日の3Dプリントサービス「3Dayプリンター」や、あらゆる用途・形式に対応した3Dモデル制作サービス「モデリー」を運営しています。
今回ご紹介したような、漫画・イラスト用3Dモデルの制作も、どしどしご相談ください!
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※ 12/23(木) 13:10 追記:文章の一部修正、および追記を行いました。
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