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日に日に汚れる贅沢な部屋

呪縛から逃れるために出てきた東京
全てが上手く行った。
仕事が見つかり安定した収入、気の合う友人、
2年後の未来像、今までになかったものが一気に手に入った。
4日働き2日遊んで1日怠ける。
そんな普通の暮らしが僕を救った。
仕事から帰ると洗い物、洗濯、掃除をする
過去を洗い流して新しい自分を作り
自分に生きて自分を演じきった
しかし勝手に周りと比べて焦っているだけの自分に気づけなかった。
側が良くても所詮は僕だった
3日間一睡もできなくなり精神科を受診した。
躁鬱とパニックの再来
受診した時には遅かった。仕事、友人、食事、家事、全てが怖くなった。
「すみません、体調がすぐれないのでお休みさせていただきます」この言葉を毎日同じ時間に同じ体制で上司に連絡する。
ついにその日は来た。本社から解雇の電話だ
虚ろになって電話を切った。
今が壊れた。
机に増える睡眠薬のシート
排水溝に詰まる髪
油に溺れた食器
脱ぎ捨てられた側
日に日に汚れていく部屋をみて感じる
「なんて贅沢な部屋なんだ」と。

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