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【読書記録】四畳半タイムマシンブルース

四畳半タイムマシンブルース
札幌での旅のお供として読了しました。
森見登美彦さんの小説では、特に「夜は短し歩けよ乙女」が、映画も併せて私のお気に入りです。

ここからは完全に私の文章での感想になります…

サークルにも勉学にも励まず惰眠を貪り、これまで有意義な夏など過ごしたことがない等と嘆く、腐れ男子大学生。
むさ苦しい夏の下宿は四畳半。炎熱地獄から抜け出しひと皮むけ煌びやかな大学生活を送るための打開策は まさに、クーラーのリモコンである。
盆地の熱溜りのようなアパートに集められわざわざ撮る必要のない映画を撮影し、挙句の果てには希望の光であるクーラーのリモコンまで壊してしまう。まさにどうしようも無い腐れ大学生活のひとときが、思わぬ事態へと転回する。

誰もが恨めしく思う泥濘のような男子大学生の日常を、もう取り戻せない若者のすべてのように感じた。
煩い蝉の鳴き声が遠くに聞こえたまま、じっとりとした湿度を運ぶ夏の風に風鈴が揺れる。汗が垂れて、伸びた前髪が額に張り付く。
鬱陶しい夏の隣には彼女が座っている。彼女の頬には雫のひとつも無く、涼し気な顔をしてどこかを見ている。そんな夏である。
前作にも続き、明石さん(黒髪のヒロイン、いや主人公なのかもしれない)も麗しく、キャラクターの個性も健在だった。
すごく面白かった。
私の出身の沖縄県は夏が長い。私には夏の思い出が多い。やはり夏は良い。



気に入ったシーン↓
ここにひとりの人間があり、もうひとりの人間を好ましく思い、「ちょいと一緒に出かけましょう」という、ただそれだけのことではないか。これまでに無数の人類がやってきたことであり、平凡といえばこれほど平凡なことはない。どうしてそんなに平凡なことがこんなにも容易でないのだろう。口がカラカラに渇き、私は置物のように固まっていた。

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