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『わが心のヒロイン、降臨』展示開催中です

現在、東京都板橋のカフェ百日紅さまにて開催中の『わが心のヒロイン、降臨』展に出展中です。

わが心のヒロイン、降臨
3/7-25
15:00-23:00(火・水定休)
カフェ百日紅
(東京都板橋区板橋1-8-7)

(画像タップでカフェ百日紅さまの公式Tumblrに飛びます)

この展示は小説の女性キャラクターをテーマにした作品が集うグループ展で、私は吉川トリコ著『マリー・アントワネットの日記』より、主人公のマリー・アントワネットをテーマにした作品を展示しております。

こんなのです。
年季の入った古時計をデコりにデコり、文字盤でアントワネットがDJをしております。

本をテーマにした展示は過去にも一度出したことがあり、そのときは坂口安吾の『堕落論』をテーマにしました。

今回は作品単位ではなく特定のキャラクターをテーマとして選ぶ必要があったため、自分の好きなキャラクター、描きたいキャラクターについて考えました。

魅力的なキャラクターの条件とは、第一に意思決定力だと私は思っています。善だろうと悪だろうと、賢かろうと愚かだろうと、正気だろうと狂っていようと、成功しようと失敗しようと、とにかく自分の意思で考え、決定し、行動することで物語を動かしていくキャラクターです。ドラクエの主人公みたいな物語の操り人形はだめです。ドラクエというゲームは面白くても主人公には魅力がない。ゲームの場合はプレイヤーの意思決定が存在するためそれでいいのですが、小説や漫画の場合、ストーリーのためにキャラクターを作るのではなく、まずキャラクターありきの作品であることが重要だと思います。生きたキャラクターとリアルな舞台があれば、あとは最低限のシーンと結末を決めるだけで物語は自然に動きますし、そういう作品こそが魂の宿った作品であると言えます。

今回のマリー・アントワネットは、そういった意思決定力の面では文句なし。フランス王朝の古くて煩瑣な慣習に「ノン!」と言える王妃でございます。詳しい話は展示会場のパネルに書いたので割愛しますが、しきたりと戦い、王妃の責務と戦い、男尊女卑と戦い、セクハラと戦い…現代人の感覚で見れば地獄というほかない世界に苦しみながらも戦い抜く強い女性です。

そしてこの作品のアントワネットがそこらの伝記小説と違うのは、まさしく文字通り現代人そのままのアントワネットだという点です。ギャル語、ネットスラング、ヒップホップ用語などを平然と使うマリー・アントワネット像にまずバカウケしてしまうわけですが、このアイディアはインパクトだけの出オチネタなどでは決してなく、悪女イメージの強いマリー・アントワネットを私たちの親しみやすいキャラクターに描く上でたいへん効果的であり、さらに先述の通り現代社会のフェミニズムやセクハラの問題をブルボン朝の崩壊と重ねて描き出す見事な叙述上のギミックになっているという、一石三鳥の発明なのです。これがもう本当に素晴らしいと思います。未読の方はぜひ読んでください。

この発明の欠点は、賞味期限が短いということ。流行り言葉はすぐに風化するので、今読まねばなりません。既に少し古くなっている言葉もあるくらいですので、すぐにでも。女性の社会問題についても、この先少しずつ変わってくると思うので。ぜひ。

マリー・アントワネットの日記 Rose/Bleu
https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/180130/
https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/180131/

最後に、写真を撮っていなかったのですが、作品の裏面にも少しセリフが書いてあります。表向きはどこまでも気丈におどけて振る舞うアントワネットに、終始まとわりついた呪いの言葉。

「疑問を持ったら不幸になるだけ」。

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