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脳の得手不得手

コロナ禍で中止されていた浅草サンバカーニバルが
4年振りに再開される。

昔のサンバの仲間から久し振りだから出ようよ!
という勢いのある誘いについ乗ってしまった。
 
もう年だし、気力がついて行けないと
9年前に引退したはずだった。
弾みで手を挙げたとしても、出るとなれば、
することは矢継ぎ早にある。
まずはエンヘードと呼ばれるテーマソングを
覚えなくてはならない。
丸暗記して歌えなくてはならない。
その上で担当の楽器であるクイーカの演奏である。
練習会に毎週のように出掛ける。
背広一着分ほどの衣裳代を払って買い揃える。
そして検定を受けなくてはならない。
演奏は長くやってきたから少しは自信があるが、
歌詞を空で歌えない。
いくら自習しても記憶できない。
呆けてきたのではなく、実は子供のころから
丸暗記が苦手だった。
 
中学生の時、学芸会の演劇の役をもらったが
セリフが覚えられず、忘れたセリフは小声で誤魔化した。
単純な暗算も数字を思い浮かべるのが下手で苦手。
仲間とギターでコーラスしてもみんな平気で空で歌っているが、
歌詞もコードも覚えられず一人、楽譜から離れられなかった。
身のほど知らずに有名な短歌を会話に織り込もうとしたが
途中で肝心な言葉が出てこなくて、恥ずかしい思いもした。
 
こんな記憶弱者が、よくぞ大学を出て仕事ができて
家族を養ってこれたと感心する。
それでも、人の顔は忘れないし、古い映画の情景も忘れない。
専門書や小説だって出版できた。
 
技術者の脳、文学者の脳、音楽家の脳、数学者の脳、政治家の脳、
芸術家の脳、演劇役者の脳と、きっと人の顔かたちが違うように
脳のタイプも特性も随分と違っているに違いない。
 
脳の得手不得手があることは分るが、検定は目前まできた。
苦手の脳を叩いてみても、何も変らない、悩める日々である。

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