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新型コロナ禍のもとでマインドフルネスが果たすべき役割

改めて触れるまでもなく、世界中で危機が広がっている。かつて世界の人々が自らの身に差し迫った危機をこの規模で同時に体験したことがあっただろうか。リーマンショックの時は金融市場が引き金となり、実体経済に大きな影響を及ぼした。しかし自らの命が直接的に脅かされていることを感じることは、ほとんどなかったのではないだろうか。遡れば、冷戦や第二次世界大戦が現在と似た雰囲気だったのかもしれない。おそらくその当時でも、当事国でない国の人たちや国家のリーダーが自分の命が危険にさらされているという感覚はなかったのではないか。

現在、我々が直面しているのは地球レベルかつ個人レベルでの危機である。新型コロナウイルスの特性が明らかになるにつれ、それに立ち向かう方法も明らかになってきた。「3つの密」を避ける必要性が周知され、日本ではまだロックダウンまでは指示されていないが外出自粛が求められている。これを継続することができれば、いずれは感染はピークアウトするのかもしれない。しかし数ヶ月間にわたり外出禁止を行った場合、経済活動がほぼ停止することになる。これに関しては一定程度、政府がサポートしてくれるだろう。感染さえしなくて、お金が回れば最低限生きていくことはできる。

懸念しているのは身体の健康ももちろんだが、私たちの「心の健康」だ。新型コロナは大きく分けて3つの経路で私たちの心の健康を蝕むだろう。第一は言わずもがなであるが、感染への恐れがある。ネットやテレビで感染者数や感染してしまった人々の情報に毎日触れることになった。日に日に増加する感染者数や、日常生活の制約などによりじわじわと不安が押し寄せている。これだけでもメンタルへの影響はかなり大きい。第二が経済的な不安だ。大企業のサラリーマンや公務員は比較的ましかもしれないが、日本の雇用の7割を生み出している中小企業の従業員や経営者、フリーランサーやアルバイトなどの非正規雇用の方達は大きな不安を抱えている。そして実際に仕事がなくなったり解雇されたりすれば、精神的に非常に大きなダメージを受けてしまう。第三は人間関係の希薄化や孤立化だ。人と人との関わりは幸福度と大きな相関性があり、孤独は人間のメンタルを蝕む一番大きな原因の一つとされている。外出自粛により家で家族と過ごせる人は良いが、一般世帯の35%にあたる単独世帯の方にとっては外で人と会えなくなることのインパクトは大きいのではないだろうか。

総じて言えるのは、世界全体で不安とストレスがかつてない規模とスピードで拡大しているということだろう。心のケアが感染防止や経済対策などに対し、後回しになってしまうのはやむを得ないかもしれない。しかし心の問題も早めに手当てが必要になってくるだろう。このような状況においてこそ、マインドフルネスが果たす役割は大きくなっていると感じる。これまでの生活はしばらく戻ってこないだろう。その上で、一つのスキルセットとして自らの心を守るツールとしてマインドフルネスを利用してもらいたい。ほとんどお金もかからないし、いつでもどこでも誰でも使える実践的な方法だ。

今この瞬間に自分が感じている不安や焦り、ぶつけようのない怒りや悲しみ。これは世界中の人たちが同じように感じている。これから目を背けるのではなく、その感情を受け取っている自らをただ受容していく。自分の心の中を静かに観察してみる。マインドフルネスで行うのはこれだけだ。それから同じような不安を感じている家族や友人、同僚にも思いを巡らせてみる。更に世界中の人たちにも。物理的な繋がりが絶たれている今だからこそ、自分の心の中にある人との繋がりを意識してみよう。孤独を感じていたとしても、それは自分だけではない。この戦いに最終的に人類が勝利して、再びハグをして桜の下で酒を酌み交わすことができるようになることを切に願っている。

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