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米国メディテーション市場視察

noteデビューの記事です。写真はMELONのブログにアップしていきますので、そちらをご覧ください。(www.the-melon.com)

12/22からアメリカに出張に来ているので雑感を記録しておこうと思う。前回視察を行ったのは起業直前の4月の中旬だったので約8ヶ月経ったことになる。今回の旅の目的は前回行くことができなかったスタジオの訪問と、前回訪れた場所の定点観測だ。また街や人の雰囲気、各種メディアの報道や広告など実際に直接目にしてみないと分からないことを感じてみたいと思っている。クリスマスシーズンの真っ只中だが、予定を空けられそうなのがこのタイミングしかなかったので、今年は家族とのクリスマスパーティーを1週間前倒しにしてもらった。今回はL Aに3泊とN Yに3泊の予定である。前回は西海岸はサンフランシスコを中心に回ったのでL Aはほぼ見ていない。今回楽しみにしているのはL Aに2拠点あるUnplug Meditationというスタジオと、カフェとコワーキングスペースを併設しているSuperslowというスタジオだ。NYではWoom CenterというヨガスタジオとThree JewelsというNPOが運営しているカフェ&瞑想スタジオを楽しみにしている。

まずはUnplugについて。こちらはSanta MonicaとWest Holloywoodにあるメディテーション専用のスタジオだ。以前から西海岸のメディテーション事情に詳しい人からは一度行ってみた方が良いと言われていた。到着したのは日曜の朝10時。空港到着が朝8時頃だったので、スーツケースを引きずりながらUberで直接向かった。Santa Monicaのスタジオは建物が古く、予想に反し外観からはオシャレ感は全く伝わってこない。。大丈夫なのかという不安を胸にドアを開けると、中には既に5、6名のお客さんが談笑をしてクラスを待っていた。スタジオ自体はいたってシンプル。ロビーではクリスタルなどの石や瞑想関係の本、Tシャツなども販売している。チェックインを済ませ時間になるとスタジオの中に案内される。まず目についたのは椅子。カチカチっと角度の調整できるよくある座椅子だ。今まで自分が見てきたスタジオでは座布団やクッションなど、背もたれがないものを使っている場合がほとんどだったので若干違和感もあったが、お客さんはこちらの方が楽なのかもしれない。(個人的には呼吸のしやすさと眠気防止のために背もたれなしをお薦めしていますが。)日曜の朝だというのに人数は多く、30席中20席弱が埋まっている。女性が7割で年齢層はかなり幅広い。このあと訪れた他のスタジオでも同様だったのだが、60代以上と見受けられる年配の方も結構来ているのが意外だった。インストラクターはキャップとジーンズに無精髭を生やした体格の良いカリフォルニア感120%のイケメンアラフォー。個人的にはこの人のファンもお客さんには多いのではないかと感じた。クラス内容はSound Bathという音を浴びる瞑想で、このクラスではクリスタルボウルという楽器を主に使用していた。日本でもそうなのだがSound Bathはリラックスを目的にすることも多い癒し系のクラスで、自分は眠くなりやすい。時差ぼけもあり、半覚醒状態でウトウトしていたらあっという間に時間が経ってしまった。瞑想はできていなかったかもしれないが、とても気持ちの良い時間だった。終了後、せっかく来たのだからと2クラス目も受けてみた。こちらはベリーショートのかっこいい黒人女性がインストラクターを担当する呼吸法のクラスだった。クラスの中ではマントラではないがシンプルな言葉を発声してその音を感じる練習をしたり、コシチャイムというきれいな音色が出る楽器を使ったりして面白かったのだが、詰め込み過ぎかつ口調が強めで自分は少し苦手だった。しかしこちらのクラスも多くのお客さんが入っていたので人気はあるようだ。

Unplugの次に向かったのはSuperslowだ。こちらは瞑想よりヨガのクラスを主に提供している。外見はヨガスタジオというよりカフェに見えるが、カフェとコワーキングスペースの奥に扉があり、そこを開けると通常のヨガスタジオのフロアがある。こちらに伺ったのは月曜の午前中だったので、コワーキングスペースでは数名がMacを広げて仕事をしており、その横でローカルの女性たちが従業員と談笑をしていた。ヨガのクラスの前になると受講生がそのスペースを通ってスタジオに入っていく。ここにも数名シニアのお客さんがいらっしゃったのが印象的である。ヨガ自体はいたってスタンダードなプログラムで久しぶりの自分にもついていけるものであった。Superslowは個人的にかなり気に入った。デザインなど気張っていないのだが、地元に根付いている雰囲気があって、従業員やお客さんも自然体で仲良く話している感じがした。ローカルコミュニティを作っている感じ。これはMELONにも取り入れていきたい。あとフレンドリーな店員さんが作ってくれたカフェラテが美味しかった。

このあとすぐ近くにあったDEN Meditationというスタジオも訪れたが、あいにくクリスマス休暇で閉店していた。こちらの雰囲気は色使いなども少しハードなイメージ。壁のグラフィティは落書きなのかオリジナルのデザインなのか気になった。グラフィティと瞑想とはかなり尖っている。また機会があれば伺ってみたい。

そこから1ブロックのところにModo Yogaというホットヨガのスタジオを発見。中まで見る時間はなかったが、月曜の昼間なのにそこそこお客さんは入っていた。日本でもホットヨガは痩身のイメージを謳ってかなりメジャーになったがアメリカも同じなのかもしれない。赤い顔をしたお客さんがヨガマットをぶら下げて店から出ていく姿が心に残った。

翌日はUnplugのWest Hollywoodにも行ってみた。こちらはSanta Monicaと違い、オシャレなショッピングエリアにある新しい商業施設の2階。内装は白を基調としたシンプルなデザインで、スタジオの中はピンクのライトで若干ミステリアスな雰囲気もある。今回は前回と違う呼吸法のクラスを受けてみる。担当してくれたのはニット帽を被った若いインド系アメリカ人の女性で参加者は男性4名、女性1名。このクラスはかなり刺激的だった。まず基本の呼吸法を教えてもらう。口呼吸でお腹で80%、胸で20%の割合で息を吸い、口から一気に吐く。前回の視察で訪れたサンフランシスコのAnchor Meditationでも同じ練習をしたが、自分はこの呼吸が苦手で咳き込んでしまう。この基本の練習の後に、突然「それでは笑いましょう!」と言われる。「・・・?」戸惑うのも束の間、慣れている様子の他の受講者が大きな声で笑い始める。「え?なに?」と思いつつも、ここは一緒に笑わなければとちょっと控えめに笑ってみるが正直気持ちが追いつかない。とりあえずこの瞬間は乗り切ったものの、この後に更なるハードルが・・・。「それでは叫びましょう。」という声と共にインストラクターが太鼓を打ち鳴らす。ここから30秒ほど参加者が絶叫を始めた。「ああああああぁぁー!!」とか「おおぉぉーー!!!」という絶叫の中、ちょっと怖くなってきたが、半ば躊躇しながら「あー!」と叫んでみる。「自分の中に抑制している気持ちを全部吐き出して」的なことを言われ、いやそんな気持ちないんだけどと戸惑う。このシャウトの時間はまさに怒号、阿鼻叫喚という言葉が相応しい。最後はセルフコンパッションのための瞑想を行なって、ピースフルに終了。このクラスには正直入り込めなかったが、リピーターがいるのは事実なのでニーズはあるのかもしれない。普段は呼吸に意識を向けるシンプルなマインドフルネス瞑想しか行なっていないので、他のメソッドやその効果も体系的に学んでみたいという気持ちにはなった。(後で調べたところによると、こちらで経験したのはOSHOダイナミック瞑想というメソッドに近いようです。)

LAで最後に訪問したのはBe Crystal Clearというスタジオ。こちらは外から見てもブルーのライトがスピリチュアルな雰囲気を醸し出している。店名から想像できるように、ロビーではクリスタルなどの石をかなりの種類売っている。スタジオは古さも感じられるものの、天井が高くて小さな体育館というイメージだった。普段は瞑想やヨガなど様々なクラスを提供しているようだが、その日の夜7時に参加したのはSoundのクラス。前方にはインストラクター2名(声での誘導担当と楽器担当)座っており、頭にターバンのようなものを巻き、カラフルな装飾品を身につけている。最初に片鼻ずつ呼吸を行う呼吸法を練習し、ヨガのキャットポーズなどでストレッチを行った後にクッションに横たわる。クリスタルボウルなど複数の楽器を使いながら、身体の各部位に意識を向けたり、呼吸をコントロールしたりしていく。こちらのクラスでもやはり気づいたら寝ていたが、他の参加者からも寝息が聞こえていた。このスタジオは全体的にスピリチュアルな要素が多めで好き嫌いが分かれそうだ。ちなみに参加者は4名だったので2名のインストラクターでは採算割れではないかと思われる。

LAの前半に視察したスタジオは以上であるが、どれも個性豊かで楽しめるものだった。特に印象的だったのはお客さんの層が幅広く、スピリチュアルな体験に対してオープンな姿勢だったことだ。日本で言葉にしたら少し引かれてしまうであろう誘導も自然に受け入れている感じがする。もちろん文化的、人種的な多様性があることも理由にはあるかもしれないが、近年このようなスタジオが増えてきていることに鑑みると、やはり時代として精神世界への興味やニーズが高まっていることも背景にあるのかもしれない。今この記事はNYに向かうフライト中に書いているが、明日からのNYのスタジオ巡りも楽しみである。

クリスマスイブの日はちょうど移動日で夜8時過ぎにNYのホテルに到着。極寒も覚悟していたものの、日本より少し寒い程度で安心した。お一人様クリスマスディナーの後はSmallsというジャズクラブに行く。ここはNYに来るたびに訪れるお気に入りの場所の一つだ。最前列で気持ちよく曲を聴いていると、まだ時差ぼけもあるのか気づいたらウトウトしていた。さすがにアーティストの方に失礼と思い早めにホテルに引き上げる。

翌日は午前中からヨガのクラスを2つ予約していた。最初に訪問したのはSacred Sound Yogaという比較的小さなヨガスタジオで、偶然にもその日は日本人のインストラクターだった。野澤さんというその女性はもともとバレエをやっており、今ではバレエとヨガのインストラクターをお仕事とされているそうだ。もう15年ほどN Yにいるので生粋のニューヨーカーとしてローカルに溶け込んでいる姿が格好良かった。自分自身も15年ほど前からヨガはやっているのであるが、最近はめっきり足が遠のいているため、かなりヘトヘトになってしまう。そのスタジオはリノベーションをしている最中で、来年からはホットヨガのスタジオに生まれ変わるそうだ。LAにもホットヨガのスタジオを見たが、調べるとNYでもけっこう流行っているようだ。この日のクラスは自分以外には女性が4名と男性が1名だった。こちらでも少し年配の方が多い。野澤さんとは連絡先を交換し、これからも情報交換をさせて欲しいとお願いしておいた。

次に向かったのはWoom Centerというヨガスタジオだ。ウェブサイトの写真からオシャレ感が漂っていたのでとても楽しみにしていた。到着すると予想外に小さなエントランスの前で女性が2人待っている。開始10分前なのに鍵が空いていないようだ。そうこうするうちに8名程が集まり始めたが、みんな慣れている様子で待っている。5分前にやっと扉が開き、長髪を束ねたいかにもなヨガインストラクターのお兄ちゃんが受付をしてくれた。ロビーの内装は外から見たよりだいぶ良い雰囲気で、テイストは以前に訪問したMNDFLにも似ている。ここはスタジオが特徴的で、プロジェクターで四方の壁に画像が映し出され、音にもかなりこだわっているようだ。驚いたのはクリスマスのランチタイムにもかかわらず、25名分ほどのマットが全て埋まっていたことである。ここも女性が8割ほどで、比較的若いお客さんが多めの印象だ。プログラムも特徴的で、ほとんど休憩なしで変化していく音楽と画像の中で動き続ける。普段からかなり体は動かしている方だが、2本連続でしっかりしたヨガのプログラムを受けた事はなかったので、けっこう疲れてしまった。他のお客さんも同様のようだが、皆さん動きを既に覚えていたのでリピーターが多いようだ。これだけクラスが埋まると事業としては成功しているのだろう。

この日の午後はもう一箇所だけ行ってみたかったところに足を伸ばした。Three Jewelsという仏教系のNPOのヨガ・メディテーションスタジオ兼カフェだ。スケジュールを確認したところもう年内の営業は終了していたのだが、せっかくだから外見だけでも見ておきたいと思って伺う。外から写真を撮って中を覗き込むと、白髭のおじさんが鍵を開けてくれた。とてもフレンドリーな方で、どこから来たのか、誰かから紹介されたのかなど色々聞いてくる。事情を説明して中を見学して良いか聞くと、もちろんとスタジオを案内してくれた。入り口を入ると完全にカフェと見違えるオシャレな空間だ。リノベーション中でごちゃごちゃしていたが、雰囲気は伝わってくる。奥のスタジオには4、5名ほどの若者がペンキを塗ったり、床を直したりしている。聞くと全員ボランティアでクリスマスにもかかわらず働いているという。皆さん仲良しそうで、オーナーさんの人柄もあってこの場の空気を柔らかいものにしている。スタジオのプログラムはほとんどボランティアによる提供だそうだ。今のリノベーションは宗教色をなくして、よりオープンでカジュアルな場にすることが目的だそうだが、もともとのデザインも普通にオシャレで素敵だった。日本でも同じようなスタジオを作るつもりだと伝えると、何かあったら相談してくれと言ってくれ、インスタに上げるから自撮りをしようと言われる。とにかくめちゃくちゃ気の良いおじさんだ。帰りにキーホルダーやらシールやらお土産を頂き、インスタの連絡先を交換して失礼した。NYに来たらまた行きたい場所が一つ増えた。

翌日はクリスマスだが、メディテーションとヨガのフルコースだ。午前中は前回の視察時にも訪れたグリニッジのMNDFLというメディテーションスタジオでEmotionというクラスを受講。インストラクターのDanさんは心理学にも詳しく、自分の感情とどのように付き合っていくかというテーマで簡単な説明と瞑想の実践をガイドしてくれた。その中で心理学の世界でも有名なアイオワ・ギャンブリング・タスクと呼ばれる実験も紹介してくれた。これは自分の情動や意思決定が認識できるようになる前に、脳と身体は無意識下でその反応や判断を行なっているという内容の実験で、とても面白いので興味のある方は調べて欲しい。参加人数は5名で自分以外は女性で、全員瞑想の経験はあるようだ。30分のクラスだったがとても内容の濃い充実したセッションだった。やはりインストラクターの知識と経験はとても大切と感じる。次のクラスにはもう少し人数は集まっていたようなので、休日は午後の方が稼働率が高いのかもしれない。前回も感じたが、このスタジオの雰囲気は落ち着いていて、お客さん、店員さん、インストラクターの距離が近くて安心できる空気だ。自社のスタジオを開設する際には参考にしたい。

次に向かったのはInscapeというメディテーションスタジオだ。こちらも前回も来たが、ドーム型のスタジオが印象的で少しミステリアスな雰囲気がある。ここではWater – Deep Soundというクラスを受講した。ドームの中にクッションが置いてありそこに横たわる。音声ガイダンスで呼吸を整えた後は、さまざまな水の音(雨、川、波など)と音楽に意識を集中していく。音響にこだわりがあると謳っているだけあり、重低音から繊細な音まで体全体で音が感じられ気持ちが良い。寝ても良いけどイビキをかいたら起こしますよと言われていたので寝落ちないように気をつけていたが、いつの間にか寝ていたらしく、あっという間の35分間であった。マッサージと同じで、気持ち良くても完全に寝てしまったら満足度が下がってしまう問題がないか気になる。こちらのセッションの参加者は7名ほどで自分以外は女性。前回との比較ではラウンジのデザインの怪しさがなくなって、観葉植物が増えカジュアルな雰囲気になっていた。その効果もあるのか女性のお客さんが増えている感覚がある。相変わらずロビーは物販スペースが大きくとられてあり、マテリアリズム・資本主義臭は強めだ。笑

ここで余談になるが、行きの飛行機で観た映画を思い出したので紹介しておく。「アドアストラ」というブラピが主演のSFで、遠くの惑星で危機が迫っていて人類を救うべく旅に出る系の映画で、それ自体はよくあるテーマだ。映画の内容はさておき、そこで描かれる宇宙飛行士の健康状態のチェック時に、必ずAIに自分の心理状態を報告するシーンがあり興味深かった。また主人公が自分の精神状態と脈拍をコントロールできるという点も関連して、(良くも悪くも)マインドフルネスや心のコントロールがテーマとして注目されている気がした。また映画には宇宙を長期間にわたり旅する宇宙飛行士の心の健康を維持するため、安息室という部屋が出てくる。(ちょうど前述したWoom Centernに似ている。)音楽と壁全体に投影されるさまざまな自然の風景でリラックスできる環境が整えられている空間だが、宇宙の無機質でデジタルな世界観とのギャップに違和感も感じられた。(意図的にそう描いているのかは不明ですが。)なかなか言葉でうまく説明できないのだが、テクノロジーで心をコントロールしていくことが可能になるブレインテックやトランステックの世界が遠からずやってくることに複雑な心境になる。テクノロジーの進化それ自体に良いも悪いもない。またそれを人間にとってネガティブなものの解消に使われるのも良いことだ。しかし本来ストレスが少ない環境が人間にとっては幸せであるはずなのに、それを目指さずにマインドフルネスを使って人類のストレス耐性を上げる方向に向かっていくことには、マインドフルネス界の一部でも危険性が指摘されている。このテーマに関しては長くなりそうなので、また別の機会に考察してみたい。

閑話休題。次のスタジオはHumming Puppyというヨガスタジオだ。ウェブサイトの世界観や口コミでの高評価に期待感を持ってきたが、店舗が2階にあるため、またも入り口がシャビーだ。(NYでは既に慣れてきた)やはり1階の路面店では家賃が高すぎて採算が取れないのであろう。集客とブランディングはウェブで行うと割り切っている感がある。ヨガは既にかなり普及してきたため、新規開拓をしなくても顕在化している需要をネットを通じて汲み取れているのかもしれない。一方でメディテーションはヨガほど普及しておらず、新規層にどのようにアプローチするかは課題である。人通りが多い路面店を設けることができれば、まだニーズが顕在化していない層にも訴求できるのであろうが、採算が取れるようになるまで時間はかかるかもしれない。いずれにしてもHumming Puppyはウェブでの集客に成功しているようだ。エントランスを入るとラグジュアリー・ブティックホテルのロビーのような空間である。ハーブティーを自由に飲めるようになっていて、次のクラスを待っているお客さんもリラックスしているようだ。スタジオもブラックを基調にしたミニマルなデザインで素敵だったが、更に驚いたのは稼働率である。クリスマスの午後2時のクラスだったが30名ほどのマットの8割は埋まっていた。こちらでも女性が8割という印象。ヨガは特に呼吸を意識させるフローヨガで、瞑想から始まりオームを唱えて終わるトラディショナルなものだ。ちなみに今回訪れたほとんどのヨガスタジオでオームを唱えていた。(例のオウムとは関係ないが)宗教色を感じる人もいるので日本のメジャーなヨガスタジオでは取り入れていないところも多いと思う。やはり米国では宗教的なものやスピリチュアリティに対する姿勢が寛容なのであろう。またBGMは意識しないと気付かない程度の重低音のアンビエントミュージックで、スタジオの重厚なイメージにマッチしており、ここにもこだわりを感じた。

この日最後に向かったのはReCOVERという最新のウェルネス機器を体験できる施設だ。こちらもビルの上にあり、看板も出ていないため入り口は極めて分かりにくい。ビルの1階でインターホンを押して鍵を開けてもらい小さなエレベーターに乗り込む。ここまでのカスタマーエクスペリエンスとしてはかなりイマイチだったが、入り口を開けると意外とそれっぽい雰囲気だ。受付に1人女性がいて、お客さんは誰もいない。予約していたNuCalmという機器を体験してみる。この女性の説明によると20分の仮眠が2時間の睡眠に匹敵する効果になるという。首に何やらクリームを塗り、電極のようなものを2つ取り付ける。ノイズキャンセリング付きのヘッドホンとアイマスクをして準備完了。ヘッドホンからはいかにもリラックスさせてくれそうな音楽が流れている。そこそこ大きい音量のため半分覚醒しているような状態ではあるが、ヨガの疲れもあり比較的すぐ寝てしまったように感じる。終了すると確かにスッキリはしたが、普通の昼寝との違いは正直わからなかった。他にも赤外線サウナや酸素カプセルのようなものなど色々あって気になったので、今度はそちらを体験してみたい。(ちなみにNuCalmの仕組みを後から調べたところ、てんかんの治療などに用いられる経皮迷走神経刺激療法という技術が使われているらしい。)このお店でN Yの視察は終了した。

NYの視察後、トランジットのために再度半日だけLAに戻ってきたのでDEN Meditationを訪問できた。ネットで見た通り内装はいかにもLAっぽいデザインだ。レンガの壁や木製の家具のブラウンを基調としたデザインのなかに東洋のスピリチュアリティが不思議とマッチしていて、全体的に照明が落としてある。今回の視察で見た中では一番内装に凝ったスタジオだったのではないだろうか。クリスマス後の平日夕方のクラスかつ指導者養成クラスを卒業したばかりの若葉マークのインストラクターの担当だったためか参加者は3名のみ。ちなみにこのクラスだけ料金は破格の5ドルだ。内容はいたってスタンダードな呼吸瞑想で宗教色は全くなく、普通のマインドフルネス瞑想のガイドと同様だったが、このスタジオではマインドフルネスという言葉をあまり使っていないようだった。終了後インストラクターと少し話すことができたので、自己紹介をして日本でメディテーションスタジオを運営していることや今回の視察のことを話す。好奇心旺盛でフレンドリーなアジア系の男性だったが、今回の視察から何が得られたのかなど色々質問してくれて、日本に遊びにくる時には連絡をくれると言っていた。

L Aでのトランジットの半日にもう一箇所スタジオを訪問した。急遽決めたため下調べは一切していなかったが、なかなか刺激的な体験ができた。Mystic Journey Yogaというそのスタジオはベニスビーチの近くにあり、お店の半分はクリスタルやアートを販売しているスタイルだ。こちらのスピリチュアル感は前述したBe Crystal Clearの雰囲気にも似ていた。受講したのはDeep Kundalini Meditationというクラスで、ウェブサイト上の説明によると呼吸法の練習をすることで深い瞑想に入ることができるという。クラスの直前にお店に入ってきたそのインストラクターの第一印象は女版ヒクソン・グレイシーといったところだ。(ご存知ない方のために、ヒクソンは400戦無敗と言われる伝説の格闘家です。)小麦色に焼けた筋肉隆々の肉体にキャップとサングラスがよく似合う。トライアスリートかUFCの選手と言われたら普通に信じたであろう。しかし非常にフレンドリーだったその女性がスタジオで豹変することをこの時はまだ知らない・・・。参加者は自分以外には若い女性が2名だけで、1人はクンダリーニの経験があるという。自分はその人とインストラクターの両方が視界に入る位置にマットを敷いた。最初にこのクラスで唱えるマントラの説明があり、かなりドスの効いた声でマントラを唱え始める。自分はまだマントラに慣れていないのでちょっとドキドキしてしまう。クラスは既にこれまでの視察で練習をしてきた片鼻呼吸からスタートだ。ただし鼻の穴の押さえ方がこれまで練習した方法と違いガイドも聞き取りにくいため、目を閉じるように言われていたが目を開けて前にいる2人を確認していた。すると目を閉じているように見えるインストラクターから目を開けないようにと強い口調で注意される。見えてはいないだろうと思って気にしていなかったが、すぐに「目を閉じてサードアイ(第三の目)に集中しなさい!!」と指導が入る。「サードアイ!?」下調べをしてから来るべきだったと後悔しつつ、薄めを開けながらも呼吸に集中しようとするが、「サードアイ」が気になって仕方がない。このインストラクターは目を閉じてるのになぜ自分が目を開けているのが分かったのだろうか、まさかサードアイで観察しているのか、など邪念が消えず呼吸に集中できない。そうこうしているうちに次の呼吸法に移っていく。速いテンポで腹式呼吸を繰り返すそれはまさにヒクソン・グレイシーが取り入れていた「火の呼吸」だ。知識として知ってはいたが実際にやってみるとかなり難しい。横隔膜が疲れてしまい速いテンポが維持できないのだ。女版ヒクソンを薄目で確認するといとも簡単に続けている。さすがはヒクソン、サードアイも開いていて火の呼吸もマスターしている。本当に親戚なのではないだろうか?などとまた余計な邪念が頭を渦巻きつつも、呼吸法のせいかだんだん不思議な感覚になっていく。60分のクラスであったが瞑想というより呼吸法で40分程度が経過したようだ。ここから瞑想に入っていく。呼吸法によって意識レベルが変容しているのか、確かにいつもと違った感覚がある。(緊張感漂う呼吸法が終わった安心感もあるが)座位の瞑想を終え、仰向けに横たわる頃にはかなり深い瞑想ができた。最後に何やら長いマントラを唱えてもらいクラスは終了。クラスが終わると女版ヒクソンはまたフレンドリーなアスリートに戻っていた。色々聞いてみたいことはあったのだが、ちょっと躊躇してしまいお礼を言いスタジオを失礼した。

長くなってしまったが、以上で今回の視察を終えた。多くの学びがあったが、まとめとしてメモしておく。

・ (おそらくある程度昔から)米国における東洋のスピリチュアリティに対する姿勢は寛容で、ヨガや瞑想に対する興味を持っている層はかなり存在している
・ ヨガは既にメジャーになりつつあり、まだ市場としては伸びそうな印象。他にもピラティスやパーソナルジムなどの新しいエクササイズ系サービスを多く見かけた
・ 宗教色が薄い瞑想に特化したスタジオはまだ少なく、訪問したスタジオでもお客さんはヨガほど多くはない
・ ヨガも瞑想もプログラムの種類が多くそれぞれ個性がある
・ 全体として宗教性やスピリチュアリティを抑えた新しいスタジオの方がお客さんが入っている。スタジオの内装や世界観は個性豊かでこだわりを感じさせるところが多い
・ ヨガも瞑想も女性のお客さんが8割程度だが年齢層は幅広い

今回の視察で多くのヒントや気づきがあり、もともと持っていた店舗のイメージもある程度リアルになってきた。どのような形態のメディテーションスタジオであれば日本で受け入れられるのか更にブラッシュアップしていきたい。

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