小さな波

初めは見えないぐらい小さな波だった
木の葉も揺れないほどの微風
小さな波も年数が過ぎれば
高波になり津波になる
最大になった波はついに行き止まりにきて
天まであるコンクリートにぶち当たる
その高波の勢いは
そのまま我が身にぶち当たる

初めは小さな波だった
吹く風も次第に強くなってくる
空の観客は他人事の声援
届かない所に手を差し伸べてくる
この波が青いからって海とは限らない
潜らないと見えない真実の色がある
潜ってみないと本当に海かどうかなんて
神様にだって解らないこと

初めは小さな波だった
所々あるテトラポットにぶつかり
波しぶきに目をつぶる
一度荒れると手遅れ波に勢いがつく
戻りたくても二度と小さな波にはなれない
泣いて振り返ってもそこは砂の崖
本物の海ではどんな高波も
最後は砂浜に打ち寄せる
寄せては返す波に浜にいる人も癒される
本物の海では海底で
泣き叫ぶ者もいないのだろう
水面下で狂者に弱者が喰われて流す血で
水が汚れることもないのだろう
たぶん本物の海は広くて大きくて
深い愛があるのだろう

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