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1992年 SideA-2「晴れたらいいね/Dreams Come True」

吉田美和作詞・作曲 中村正人編曲

・「ひらり」(NHK総合 1992/10/5~1993/4/3)主題歌

 1992年後期(10月度)NHK朝の連続テレビ小説主題歌。長い歴史を持つ番組には必ずいくつか節目があるが、この年は朝ドラにとっての節目の一つであった。前年1991年に「おしん」以来8年ぶりに1年間放送された「君の名は」が、相応の手応えを残さなかったのがひとつのきっかけだろう。1992年前期は切り札橋田壽賀子を起用しての「おんなは度胸」(大阪製作。泉ピン子・桜井幸子のダブルヒロインは意表をついたが、ここでの桜井幸子が素晴らしく、それが翌1993年の「高校教師」につながっていく)、そして後期がこの「ひらり」であった。

 90年代に始まった民放発のドラマムーブメントにすかさず呼応した脚本・内館牧子、主演・石田ひかりという布陣は確かに新鮮だった。ヒロインのアイデンティティが「相撲好き」ということだけというのもよく考えると画期的だが、若貴ブームに沸いていた当時の状況と、なんといっても内館牧子がガチの相撲好きだったということが不思議なリアリティーを担保していた(ちなみに当時の貴花田と宮沢りえの婚約会見、大関昇進、貴ノ花への改名、および破局会見はすべてこのドラマの放送期間中の出来事である)。

 そして朝ドラにとって最も大きなポイントは主題歌の採用である。それまで朝の連続テレビ小説のテーマ曲は基本的にインストゥルメンタルで歌はつかなかったのだが(例外はある)、第48作のこの「ひらり」以降は基本的に歌がつくようになった(こっちも例外はある。それも結構たくさん)。民放ドラマの主題歌がチャートを席巻していたこの時期、当たり前の選択のようだがこれは相当思い切った決断であった。

 そして、なによりDreams Come Trueを起用したというのが絶妙だった。広い世代の視聴者を意識せざるを得ない朝ドラという枠を考えれば、当時のトップアーティストの中でベストの選択である。個性的で普遍的、という二律背反をクリアした楽曲の出来がまた素晴らしく、番組側にとってもアーティスト側にとってもプラスとなる理想的なタイアップとなった。「決戦は金曜日」とは違いCDシングルも番組開始の翌々週にはリリースされチャート1位を記録、アルバム「The Swinging Star」のウルトラメガヒットへの呼び水となる。石田ひかりが紅組司会を担当したこの年の紅白歌合戦でもドリカムは「決戦は金曜日」とメドレーにした「晴れたらいいね~紅白バージョン~」を披露、ラストステージとなったチェッカーズの「フェアウェルメドレー」などを抑えてこの年の歌手別視聴率トップとなった。

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