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山形市街 夏のおすすめ緑陰めぐりポタリングルート

去年の当地の夏は格別に暑かった。5月から梅雨入りまでを初夏と呼ぶならば、梅雨明け以降の死人が出る暑さは「厳夏」とか「猛夏」とか別な名前で呼びたい気になったものだ。今年はどうなるだろうか。

そんな激夏のサイクリングは、適宜クールダウンが必要だ。陽射しの下をちょっと走ったら木陰でひと休み、そのあとまた次の木陰までちょっと走る。そんなアフリカ人の知恵みたいな走り方が適切だ。
山形市街の随所には神社仏閣や公園の緑濃い木陰が点在する。それらを渡り歩く木陰ハンティングルートを編んでみた。

一周10kmちょっと、ほぼ平坦であるから、レンタルのママチャリでも十分楽しめる。
市街中心部辺縁をめぐる雰囲気のよい裏道を選んでみたところ、はからずも普通に山形市街観光おすすめルートになったのであった。静けさの中で内省できるクワイエット・コーナーを巡って夏の悟りをひらこう。

1) 山形美術館と最上義光記念館

霞城公園のお堀をはさんだこのエリアから走り出そう。緑陰もふんだんにあるし、噴水も涼しい。
山形に絵を見るために来る人もいないだろうが、この美術館はあなどれない。タイガーボードの吉野石膏(南陽市の吉野鉱山発祥)コレクション、かつての地元財界のドンの名を冠した服部コレクション、ふたつのコレクションは、ドガ、ルノワール、シャガールなどのフランス近代美術作品を擁する。
隣接するのはゴッドファーザーオブ山形たる最上義光の記念館。なんと入場無料だ。このあと巡るいくつかの義光スポットの予習もできる。

名所たる霞城公園にももちろん緑陰はあるが、昔は旧軍の練兵場だったぐらいだから基本的に覆いのない部分が多く、夏場の観光には不向きだ。

2) 六椹八幡宮

駅前の商業地区にはコンビニもマツキヨもある。冷たい飲料を仕入れて出かけよう。
その一帯から一歩奥に入ったところにある古刹。境内に立ち並ぶ巨木の成す木陰は駅近なのが信じ難い。異世界に入ったかのよう。

3) 光禅寺

方向を変えて東へ。鉄砲町から八日町にかけては古くからの職人や商人の街だった。今は古い建物も少なくなってしまったけれど細い裏道や商家に面影が残る。
光禅寺は最上義光が創建し、自らの墓で眠るゆかりの寺である。

境内の木陰もよいけれど、奥にある江戸時代作の庭園も名高い。浄土を模した造りなのだが池に水がないことが多く、極楽ぽさがいまひとつなのが残念だ。

4) 小荷駄町公園(市立図書館)

次なる木陰。木陰で涼み足りなければ隣接する図書館に入ろう。

5) もみじ公園

ここから北に進路を変え、古くからの住宅街である東原町の裏道をいく。山形大生のアパートも多い。わたしも学生時代の前半この町に住んでいた。
もみじ公園はかつて宝幢寺という古刹の庭園だった。明治初めに本体が廃寺となったあとも庭園は残って整備されて公園になった。もちろん紅葉の時期でなくとも巨木と池のなす緑陰の風情は格別だ。
近くを通ると用がなくても立ち寄ってボーとしたくなる、オールシーズンチルスポットだ。

6) 専称寺

東原町に隣接する小姓町はかつての花街、その隣の七日町は今も続く飲み屋街、そしてその隣の緑町は寺院が集中する一角だ。飲む・買う・祈るが集約されたコンパクトシティであったといえる。
かつては寺町という名だった一角でひときわ目をひく大伽藍が専称寺。ここも最上家ゆかりの地、義光公の娘駒姫の菩提寺である。

東国一の美少女の誉高き駒姫、時の関白豊臣秀次(秀吉の甥)にみそめられ、15歳にして側室となるべく上洛。しかしついてみれば秀次は太閤から青少年保護育成条例、謀叛の謗りを受け切腹、その咎は駒姫にも及んで非業の死を遂げる。愛娘を奪われた義光公の遺恨は深く、この寺を建てて供養するとともに以後は豊臣絶対殺すマンとなり、のちの慶長出羽合戦では東軍に付き無双したのは知られるところである。

7) 県立図書館と文翔館

遊学館こと県立図書館で涼んでいこう。エアコンなしの部屋に住んでいた学生時代のわたしが勉強部屋として愛用したことでも知られるわたし的に有名なスポットだ。木を多用した内装もいいし、小洒落たカフェもある。
いい庭園もあるが専ら館内から館内から鑑賞するためのもので、散策とかはできない。

すぐ近くの文翔館こと旧県庁は言わずと知れた名所であるので初めての向きは外せない。入場無料。

8) 六日町熊野神社

さらに北に向かうと静かな住宅街の中に突然佇む緑陰スポット。
小さな境内だがこの突然感がいい。隣にそびえるマンションとの対比もいきなり感を増幅する異化作用がある。

9) 国分寺薬師堂

終盤に控えるはわたしの推し寺社No.1だ。例年の初詣もここに決めているほか、事あるごとに自転車やジョグで訪れては憩うお気に入りの場所である。
巨木の並ぶ広大な境内の緑陰もよいが、隣接する薬師公園もいい。池のほとりの東屋で夏のサウダーヂを味わおう。

10) 鳥海月山両所宮

トリは山形名刹界の北島三郎、鳥海山と月山の二大名峰を祀るこの神社である。壮麗な楼門に圧倒されるが、境内の池と緑陰の成す清涼感もヘイヘイホーという感じだ。


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