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ミュージカル「生きる」-歌の必然性-

「突然、歌いだすのが不自然」
と、いうのはミュージカルを苦手とする方々の言葉。
ミュージカルが好きな人、嫌いな人がいて良いと思いますが、この台詞には細やかながら意を反したい。
ミュージカル「生きる」を観劇して、そんな気持ちを強くした。

念のため・・

         「生きる」のざっくりしたあらすじ
戦後まもなくの日本。
市役所の市民課課長 渡辺勘治は、職場と家庭の往復のみの楽しみのない日々を繰り返していた。
定年間近のある日、勘治に胃癌がみつかる。
余命半年。
これまでの無味乾燥な人生に気付き、残された人生をイキイキと送りたいと考え始める。
職場の部下であった〝小田切とよ〟の溌剌さに刺激され、兼ねてからの市民の希望〝公園建設〟に邁進する。

ひとつ前に、公開動画を載せたので、ご覧いただくと雰囲気も味わって頂けます⤵️





歌わない主人公・渡辺勘治(wキャスト市村正親さん、鹿賀丈史さん)

一幕は、小説家とアンサンブルが渡辺勘治の人となりを解説しながらテンポよく進む。
しかし主人公 勘治は、まったく歌わず、うつむいてボソボソ台詞を語るのみ。

ミュージカルなのに歌わない稀有な主人公‼️

胃癌で余命半年と知った勘治は、自暴自棄に陥り、無断欠勤に妬け酒をあおるも、生きる意味を見いだせない。

もし私が、このミュージカルを製作するのなら、きっとここで、絶望にくれる歌を勘治に歌わせただろう。

しかし、「余命幾ばくの人間が歌うのは不自然」と考えた製作陣は、勘治に絶望の歌を歌わせなかった。


勘治ついに歌いだす‼️

「死ぬ前に一日でいい、君みたいに 溌剌と過ごしてみたい」と語る勘治に、
〝小田切とよ〟は、
「私は工場でおもちゃを作っているだけ、
課長さんも何か作ってみたら?」と告げ去る。

「作る?市役所で? もう遅い。」

ここで初めてしっかり歌いだす勘治!
一幕終わり。


「二度めの誕生日」

遅くはないのか 間に合うのか まだ
私の命 燃え尽きた訳じゃない
今のままならば
死ぬ日を待つだけになる
それでいいのか 一度だけの人生

こんな私でも できることが何か
見つかるかも いや 必ず見つかるはず
ひとに喜ばれる 何かできないか
残りの日々 全てを捧げて

もう今までの私ではない
胸に力がわいてきた
希望が私に光をくれる
新しい夜明けがきた

今日から変わる 私は変わるんだ
絶望の暗闇には もう戻るものか
最後のときまで 生き抜いてみせる

今日が二度めの 誕生日だ
私は生まれ変わろう 


ミュージカルの歌う意義

以前受講したミュージカル歌唱講座で、講師の北川潤先生(元劇団四季)に、ミュージカルでは、
「感情が溢れて歌になる」
と伺ったことがある。

まさに「二度めの誕生日」は、勘治の感情の爆発で生まれた歌。
絶望の暗闇から一縷の希望の光を見いだし、魂を震わせた勘治。
それまで歌わなかったことで、「二度めの誕生日」での希望を より際立たせることができた。

勘治の歓喜の歌声に包まれ、鳴り響く拍手の中、一幕の幕が下りる。


今回は、初演を見逃したことを大後悔した「生きる」から、ミュージカルの歌の役割について考察してみました。
ご覧いただき、ありがとうございます✨


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