見出し画像

その傷と静かに暮らす。

男の子と女の子が
夜の町を歩いていた。
沈丁花の薫りがするから
遠回りしよう
男の子が言った。
海の近くの町だったから
春の海のほのかな薫りと
沈丁花の薫りが混ざりあった。

男の子はそれが一生の
傷になるとは思わなかった。
そしてその傷と静かに
暮らせるようになるとも
思わなかった。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

みんなでつくる春アルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?