見出し画像

SS08

 おはようございます。六時前に起きちゃった。笑
 部屋の窓を全部開けて網戸にして、「散歩行くか」と思ったらほんのり雨降ってたので、昨日書けなかった分ということで一筆。だいたい六月末の鬼の如き猛暑日の連続はなんだったのか。六月末と七月頭来る順番待ちが得ただろ。まぁ、書き終わる頃には止んでるでしょう。


SS08「貯金」

 迷走。今の僕に一番当てはまる二文字を述べよ、と聞かれたら、少し考えてこの言葉に辿り着くだろう。僕は今色々なことに迷い、悩んでいる。その迷走の中心にして原因となっているのは「金」だ。
 社会人になってまだ短いが、友人達とお金の話になると不安になる。学生の頃から、金遣いが荒かった。マニア気質ということもあり、稼ぎはするのだが、「欲しい!」という衝動に勝てない。「欲しい!」の衝動が起きると、さながら一方通行のようにその道一本を突き進み、止めてくれる対向車も現れず、購入してしまう。
 今日の社会人同年代の友人達との集まりに参加した時は、一人が「そろそろ車買おうかな」なんて言い出した。それくらい、貯蓄に余裕があるのだろう。アルコールを交えながらどの車にするかの話題で持ち切りだった。車に関しては疎いので、スマホで写真を見せてもらい、「俺はこっち派かな」くらいの意見しか出せなかった。
 解散後、アプリで三つ持っている口座を確認してみた。諸々の支払いが済んだ後で、三つの口座合わせて五桁中盤。七桁どころか、これから給料日まで、この五桁中盤のお金でやり繰りせねばならない。食事にこだわりはないが、友人との集まりに参加するのは好きなので断れない。もしまた「欲しい」の衝動が出たらどうするか。そもそも、次の給料日まで持つのか。七桁なんて、夢のまた夢。
 幸い、車は親が譲ってくれたものがあり、家賃もそこまで高くない。そのせいだろうか。生活に少し余裕があり、余った金を貯められなかったのは。情けなく思う自分がいる一方、我慢できずに買ってしまう自分がいる。今は「賢者モード」に近い状態である。買ってから飾ったものを眺める。「これ買って本当によかった」なんてものは一割にも満たない。「何でこれ買ったん?」というものの方が多い。
 その中の、一つのストラップを手に取った。いずぞやどこかに旅行した時の博物館で、響きがかっこいいという理由で二千円くらいで買ったものである。とても小さい黒曜石がついているもので、あの時は魅力的に思えたが、今現在見てみると、「なんじゃこりゃ」としか思えない。まだ、旅行の思い出の品としては価値があるのかもしれないが、そもそもどこ行った時に買ったか覚えていない時点でもう僕にとっては無価値だろう。石マニアでもないし。手に取って弄んでいると、チクッとした痛みが走った。指先を見ると、黒曜石の角が刺さってしまったらしい。微量だが、出血してしまった。
 それをもとあった場所に戻し、絆創膏を指先に貼った。記憶の彼方に消えた旅行の思い出の反逆だったのかもな。その時、母親から電話がかかってきた。日付が変わる間際だったというのに、珍しい。
 話を聞くと、酔っ払って親父と喧嘩し、親父が「こんなとこで寝られるか」と怒って出て行ったところらしい。終わりの見えない愚痴を聞いていた。ほぼ頭に入れていない。今度親父からも話を聞いて、何だったのか聞いてみるか。
 適当な相槌をしていると、酔っ払った母親から突然、「あんた、貯金いくらあんの?」と聞かれた。突然悩んでいたネタを突かれ戸惑ったが、嘘を吐いたところですぐバレるのは明白だったので、正直に「四万後半」と答えた。こりゃ絶対怒られんな、ただでさえ夜遅いのに説教直撃だ。嫌だ嫌だ。
 ところが、返事はお説教ではなく、酔っ払いの警告だった。
「お金はね、坂道を転がる雪玉みたいなもんなんだよ。一度転がればほら、漫画とかであるでしょ?どんどんでっかくなるやつ。それと一緒。まずは少し大きい雪玉作って転がしてみな。あとはそれを壊れないように追っかけていけば、いつの間にか百万くらい貯まってっから。」
 んじゃ、眠いから寝るね、おやすみー。と言って一方的に切られた。黒曜石でできた傷を見つめ、今の言葉を反芻する。ボーナスを貰ったり、給料日を迎えたりした後、僕は何していたか?必要最低限だけ残してお金を降ろし、欲しいものを買ってばかりだったな。
 今、僕の中で何かが何となく変わった。気がするだけかもしれないけど。まずは、雪玉を転がそう。給料日まで、切り詰めれば一万円あればいけるだろう。残り三万ちょい。小さすぎる雪玉だが、壊れないようにそーっと積もった雪の上を転がしてみよう。衝動に負けたら、折角育て始めた雪玉は脆くぶっ壊れてしまう。ゲームか何かで「黒曜石は砕けない」という言葉を耳にしたことを思い出した。砕けない黒曜石は、僕の指に傷を残すとともに、何かを教えてくれたようだ。「良い車に乗りたい」とか、「あのブランドの財布が欲しい」なんてものはないけれど、ふとした欲望に負けないように、この三万円を儚い雪玉にして転がし始めよう。何年出れば結果が出るか、楽しみになってきた。俺も酔っ払ってるのかな。雪玉育成ゲームに、毎月一回小さなチャンスが、そして半年に一回大きなチャンスが来る。そのチャンスをどう活かそうか。上手にチャンスを活かせれば、夢のまた夢と思っていた七桁は、案外そう遠くもないのかもしれないな。頑張れ、俺。でっかくなれ、雪玉。いつか雪だるまにしてやるからな。


 寝起きであんまり頭が回っていないので、主人公のモチーフはまんま俺。貯蓄皆無、さらに休職中で減給中。それ故、銭ゲバ精神をメラメラに燃やそうと決めた。独り身になったもんだし、金使わなくても楽しめることは沢山ある。「贅沢は俺にとって敵だ」である。別に飯なんて、ちょっと高い寿司じゃなくても、生卵ぶっかけ飯で十分。ふりかけもあれば、十二分。ひとつ百円のレタス何枚か千切って洗って、ドレッシングかけて食ったら美味いやん。
 クーラー?要らん要らん。まだ熱帯夜と呼ぶには涼し過ぎる夜でしょこれ。七月中盤から八月にかけては必要になってくるかもしれないけど、まだまだ涼しいから扇風機で余裕。ケチれケチれ。極限までケチって、いつか誰かを見返してやる。俺が金貯めて、だれが「ぎゃふん」言うねん。知らんけど、少なくとも散財壁の酷かった過去の俺が見たら「ぎゃふん」と言って泡拭いて倒れる。それで上等。
 さて、六時五十七分。外、ちょっと晴れてきた。散歩行って筋トレしよ。

さて、前回のキーワードは、


「立春」「ルナティック」「正門」

でした。ルナティックってちょいちょい聞くけど、普段いつ使うねん!ってツッコミ一人で入れてた。作品に、違和感なかったっすか…?今回のキーワードは、二つはシンプルで一つ「何やお前」って感じのやつでした。わっかりやす。笑

 今回の一曲は、大好きDEZERTの「脳みそが腐る」で。金遣い荒かった頃の俺に送ります。今に見とけ、昔の俺といると脳みそ腐っちまうから、俺は決別して変わるぞ。爆笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?