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SS06

 おはようございます。今朝は特に早く目が覚め、六時くらいから散歩して筋トレしました。昨日のおばあさんにも会えました。「頑張ってるね、倒れないでね。」と、相変わらず優しいお方でした。おばあさんの息子さん(か娘さんの旦那さん?)にもご挨拶できました。爽やかな笑顔で返してくれました。嬉しいことですね。
 さて、朝食も軽く摂ったことですし、ゲームする前に一筆。昨晩、かつてSNSで繋がっていた友人からLINEで誘いがあったのでマルチプレイを一月ぶりくらいにやりました。距離が離れていても、通話で繋がっている。私は相変わらず狂っていましたが、仲間と共通の趣味で遊ぶって楽しいことですね。
 私をフォローして下さっている方の記事に、素敵なことが書かれていました。私も含めて、ここに目を通してくれている悩める友人にの何かになればと思い、引用させて頂きます。

 さて、今回のテーマは今までである意味一番難しいかも。上手く書けるか心配で仕方ありませんが、行動しないと始まりません。挑戦あるのみ。

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SS06「廃墟」

 俺は今、寒空のもと、夜光に照らされながらベンチで煙草を吸い、今日の出来事を思い出していた。
 夕方頃である。大学の講義が終わり、JRの駅までの道を歩いていた。面倒な時はバスや最寄りの地下鉄を使うのだが、冬は暗くなるのが早い。暗くなり、街灯の光る道を歩いてみたくなり、歩いた。それだけの理由である。特別遠いわけでもないので、帰る時間が十五分ほど遅くなるだけだ。
 すれ違った、おそらく女子大生であろう女性が、くしゃみをした。その時に、着けていたワイヤレスイヤホンが片方車道に飛んだ。その子は慌ててイヤホンを取りに、車道に柵を越えて飛び出した。俺はその子にバスが迫り来るのを見ていた。危ない。咄嗟に身体が動き、柵を飛び越え、その子がイヤホンを拾うのと同時にその子の身体を掴んでこちらに寄せた。直後、大きなクラクションと共にバスは俺達の真横すれすれを通過していった。どうやら、その女子は飛んで行ったイヤホンに夢中でバスに気付いていなかったらしい。俺の背中側に回して助ける形になったのだが、なんと背後からその子に抱き締められた。
 震える手から察するに、純粋に怖かったのだろう。背後で見えないが、涙ぐむような声が聞こえた。偶然にも、一人の女性を助けてしまった。その女性はハンカチで顔を覆い、一礼して去っていった。落ちた化粧を見られたくなかったのかな、位の感覚で駅へと足を進めた。
 そして、一度帰宅し、夕飯や風呂その他を済ませ、明日の講義の準備も終えた。後は自分の時間を堪能するだけである。そこで夕方のことを思い出し、散歩がてら近所の廃墟のベンチに足を運んで煙草を吸っている、という流れだ。
 この廃墟は、そこまで古いものではないが、潰れたばかりとも言い難い旅館の廃墟だった。この廃墟は、特に夜は不気味である。人の気配は勿論ない。当時置かれていたベンチと灰皿がそのままになっていて、自販機が目の前にあるので、外の空気を吸いながら煙草を嗜みたい時は大体ここである。第一、喫煙所は滅びゆく運命にあるようで、どんどんなくなっていくし。
 この廃墟が不気味だからいう理由なのかは定かではないが、俺が住んでいる賃貸物件はこの地区では破格の値段と言っていい額の家賃である。両親には反対されたが、俺は近場の物件を探して、この凋落した建物に一種の魅力を感じ、反対を振り切って今のところに住んでいる。風呂とトイレ別だし、部屋数ちょっと多いし、十分満喫した生活を送っている。部屋の中では加熱式煙草だが、やはり紙巻の方が美味しい。紙巻を吸いたくなったら、ここにきて吸っている。灰皿はあまり大きいものではないので、月に一度ゴミ袋に入れて捨てている。たまにメンソールの煙草の吸殻が入っていることを考えると、同じ考えの人もいるのだろう。
 話は変わるが、俺はいわゆる彼女と呼べる人はいない。正直、女の子の温もりを直接感じられたのは幸せだった。この年頃で、顔は見えなかったが、同じ年頃の女子に抱きつかれて喜ばない奴いるん?それだけで、無我夢中だったが、「助けてよかったな」と思うには十分過ぎるお礼だった。
 二本目の煙草に火を点けようとしたら、ZIPPOライターのオイルが切れたらしい。何度回しても、火花が夜を照らすだけで、煙草の火種を作るのは難しそうだ。普通のライターは家に置いてきてしまった。火のついてない煙草を咥えたまま、口の隙間から溜息が漏れた。喫煙者にしか分からないことだろうが、「吸おう」という気持ちになっている時に吸えないと、何とも言えない虚しさに包まれるのだ。伝われ。無理か。
 諦めて帰ろうかと思った時、目の前にライターの火が現れた。落胆していた時に、救いの火が灯されたのである。奇跡か、と思いその火で火種を燃やし、煙を吐いた。最高かよ。
 ここで我に返り、何で目の前に火が?という真っ当な疑問が浮かんだ。隣をみると、同世代位の女性が笑顔でライターを持っていた。
 俺は心臓が跳ね上がるくらい驚いた。普段俺以外にここに煙草を捨てている人がいるのは認識していたが、ここで煙草を吸う時に誰かと会ったことはなかった。動揺を隠せなかったが、とりあえず、「火、あざます」といって再び煙を吸い込んでは吐き、落ち着きを取り戻そうとした。
 すると、その女性は思いもよらぬ返答をしてきた。「お礼言うのアタシの方なんだけど」と。俺は煙草を吸い込んだ瞬間だったので、思いっきり噎せた。どういうこと?ここで人と会うのも初めてだし、こんな、ぶっちゃけ可愛い女子友達にいない。というか女友達自体超少ない。テンパりの極み。
 その女性は微笑みながら軽く溜息を吐き、イヤホンを取り出した。見覚えがある。というか、夕方のあの子か。あの時はマスクしてたし、ハンカチで顔隠してたから分からなかったのか。やっとこさ色々繋がった。
 「あんたのお陰で、本当に助かった。ここで煙草吸ってる大学生いるの知ってたけど、あんただったとはね。偶然ってすごいね。」と言いながら、その子はメンソール煙草に火を点けた。成程、時々見かけるメンソール煙草の正体はこれだったか。女子は言葉を続けた。「ここ、なんかいいよね、なんか。」俺も返した。「わかる、何がいいの?って聞かれると、なんか、としか言えないけど、なんかいいよね」
 その後も近所に住んでいることや、実はその女子が同じ大学の先輩だったこと等、ヤニトークはそれなりに盛り上がった。すると、唐突にその女子が「実はここ、外階段の扉ぶっ壊れてて屋上上がれるんだよ。行こっか。」と意外なことを言い出し、手を引かれるまま屋上まで連れていかれた。そこそこ高い建物で、七階か八階くらいまで上った。すっかり息が上がってしまったが、女子は慣れているのか涼しい顔だ。
 屋上の柵の手前に、真新しいベンチと灰皿がある。明らかに下のものとは違う。その疑問は、次の瞬間あっさり解決した。「これ、ここ気に入ってアタシがこっそり持ってきたんだよね」という女子の一言で。よくもまぁこんなことするもんだ。アクティブだねぇ。
 ベンチに腰掛けると、海岸が遠くに見えた。空を見上げると、若干曇ってはいるが、雲の隙間から見える星も綺麗だ。持って来たくなるのも分かる。そもそも入っていいのか、という野暮な質問は置いておいて。
 「ここ居心地よくてさ。アタシ実家暮らしで親厳しいから、煙草も黙ってるんだよね。下でもいいんだけど、特別な日にはここまで上がってくるんだ。」と語る。「特別な日って?」と聞くと、「あんたに命救われたでしょ。あんた、普段バスとかだよね。何であすこ歩ってたの?」と質問返しされた。
「気分だよ、気分。夜の街灯ってなんかいいじゃん。」
「成程ねぇ。じゃああんたが街灯好きじゃなかったら、最悪アタシ死んでたんだ。ありがたや、ありがたや。」
 二人はその後、言葉を交わすことなく煙草を一本ずつ吸った。吸い終わる頃、霙が降り出した。
「今日寒いと思ってたら、やっぱり降ってきたね。これ、使いなよ。命のお礼にはヘボ過ぎるかもしれないけどね。」といって、壊れかけのビニール傘を渡してきた。
「アタシ家近いから、またここで会ったらヤニトーク付き合ってね。今日はありがと!」と言って先に階段を下りて行った。折れかけたビニール傘だったが、ないよりはマシだった。霙は徐々に、微々たる量ではあったが積もり始め、階段を下りるのが少し怖かったが、何とかいつもの一階まで降りてきた。
 俺が車道に飛び出した時、邪な感情は一切無かった。偽善のつもりもなかった。目の前に危険が迫っているから、何とかしようと思う前に身体が勝手に動いたのだ。お陰で、友人が一人増えた。また会うのかもしれないし、もう会わないかもしれない。霙の降る中、ボロのビニール傘を片手に家路を歩く。この傘は、暫く思い出の宝物として持っておこう。次にあの子にあったら、返してあげよう。俺は傘二本持ってるし、要らないなら屋上に返してこよう。俺も、何かいいことあったらあの海岸と星を見に、屋上まで上がってみようかな。

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 いかがだったでしょうか。実はこれ、元々「小説書いてみよ」って思った時に考えてたストーリーの一部と、何ヶ月か前見た夢を織り交ぜてできた一作なんです。私も時の経過を感じさせる建造物とか廃墟とか、あとはレトロを感じさせるもの大好きマンなので、自然と主人公に投影しちゃっているところありますね、はい。今回のお題は中々に難しかったけれど、なんとか上手く文中に入れられたんじゃないかな。
 さて、前回のキーワードは、


「午後十一時」「職員室」「灯」

でした。これは書きやすかったですね、今回と違って。極力一日一作を目指して書きますが、医者行ったり、親父の手伝いがあったりするので、毎日書くお約束はできません。でも、完全に「趣味」と言えるものになったので、時間がある時にまた書きます。では、マイナーながら大好きでライブ行きたいなーってV系バンドの一曲で〆とします。まだ日記の方で会いましょう。

興味はないが死んでくれ 悪意も知らない無邪気な指
名もなき感情 それを全て毒々しい色に染まったら
叩け
(※合ってるか分かりませんが…)

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