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【流星ワゴン】を読んで

 今日初めて、自室ではなくリビングでこれを執筆している。復職トレーニングの為にこの端末を持っていき、帰宅して読み終え、散歩の前に何としても残したかった。だから、自室まで端末を持ち運ぶ手間すら惜しんで執筆している。

 今日は通院日で、薬の副作用で睡魔に襲われ、なんとか受付間際に滑り込んだ。しかし、初診や順番待ちの方が今日は多く、買って途中まで読んでそのまま読まず終いだった「流星ワゴン」を持っていき、一ページ目からずっと読んでいた。
 自分の番が来た時、二百六十四ページまで読んでいた。診療が終わり、会計待ちと薬の処方待ちの時間も合わせると、三百四十ページまで一気に読んでいた。

表紙。
あらすじ。

 復職トレーニングから帰宅した時、スーツも脱がずに真っ先にこの本を手に取った。そして、最後まで読んだ。

 私が「流星ワゴン」と出会ったのは、テレビドラマからであった。大学時代、友人が見ていたのを思い出してレンタルDVDで借りて全話見た。香川照之さんの演技がとても好きなので、迫力ある演技と感動するストーリーだったことはよく覚えている。

 そして、原作を買った。百数ページ読んで、仕事に忙殺され、病気になり、エネルギーが漸く充填されて読むことができたのだった。私はネタバレをするのもされるのも嫌いなので、内容については、掲載した写真以上のことは語らない。ただ、ドラマ版と原作ではやはり違いはあった。

 読み終えて最初に残った感想は、作中に出てくる「チュウさん」のような男になりたい、だった。ドラマを見た時から思っていたが、荒々しく、猛々しく、強い。それでいて「親」としての姿をしっかり持っている。息子の前で見せるべき姿も、見せるべきではない姿も、きっちりと描かれていた。ドラマ版以上に、文字の羅列だからこそ伝わる「感情」が確かに届いた。

 私は、現状親になるつもりは無い。過去の記事を読み漁って頂ければ分かる。結婚願望は皆無ではないが、ほぼゼロというか、諦めている。何かを追う為には、荷物は多くは持っていけない。遠くにあるものを必死で追いかける為には、身体は軽い方が良い。だから、諦めた。それでも、例えば妹が子を授かり、「叔父」の立場になることができたなら、チュウさんのような雄々しい男で在りたい。
 もしも仮に、億が一御縁があって素敵な人と結ばれ、「親」になることができたなら、「チュウさん」のような親になりたい。子を思い、子の為に笑い、𠮟り、泣き、そして子と楽しめる親になりたい。

 映像は、やはり役者の良い演技を見せようとする。その上で、原作の良さを存分に活かせる台本を作る。その為、原作に無いシーンもドラマにはあった。それはそれで味があって良いと思ったが、やはり原作の、文章から脳内でその場面場面を想像する楽しさは何物にも代えられない。

 アニメに関してもそうなのだが、私は映像化したものから原作を購入する傾向がある。「半沢直樹」もそうだった。ライトノベル関係も、アニメから入って原作を購入したものが殆どだった。
 映像で情景をイメージし、文章で(あのシーンだな)と考えたり、(このシーン、映像には無かったな。でも、あの人が演じるならこうかな)と考えて読むことが好きなのだ。
 だが、「流星ワゴン」については、香川照之が演じた勢いあるチュウさんのイメージ以外はもう完全に忘却の彼方だったので、久々に新鮮だが、どこかで目にしたような何とも表現し難い感覚で読書を純粋に楽しめた。

 テレビドラマで「流星ワゴン」を観た方には、特にお勧めしたい。台詞の合間に描かれる苦悩や葛藤が、何とも素晴らしい一作だった。重松清氏の作品は、教科書に載っている(いつからかは知らないが)「卒業ホームラン」を読んだことがあった。「卒業ホームラン」も、父親の背負う苦悩が描かれている。台詞と台詞、「 」と「 」の間に描かれる心情こそが、読書の醍醐味である。映像では、ナレーションが入るものもあるが、基本的に台詞と台詞のやり取りが感情を読み取る主な手段となる。文章は、台詞だけではない。その面白さを強く伝えてくれた、そして「朋輩」の大切さ、そして「男親の尊厳」を教えてくれたのが「流星ワゴン」だった。

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