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SS13

 おはようございます。今日は十時半から外出以外予定が無いので、他の時間は家で過ごそうと思います。表題は、散歩の距離を伸ばして訪れた沼。子白鳥達が、一生懸命泳ぐ練習をしていました。
 今回のお題は、かなりややこしいというか、一つをどう使うかな、といったところでしょうかね。それでは。


SS13「将来」

 「約束通り、没収ね。」
 母親からの、厳しい一言でした。何故この言葉を貰うことになったかというと、僕が悪いからです。部活を引退し、本格的に高校受験に向けて行かなければならない時に、持て余した時間を勉強に回すべきだったのに、スマホ弄りに没頭してしまったからです。
 全く勉強していない訳では無かったのですが、他の皆と比べるとSNSや動画サイトを見る時間の方が長く、それを母親に咎められ、次の実力テストで四百点を取れなければスマホを没収するという約束をさせられてしまいました。結果は三百七十六点。僅かに届かずでした。それも、ケアレスミスや、基本的な部分をそれぞれの教科で数点ずつ落としていて、日々勉強していれば何とか四百点に届いたというところがまた悔しいところでした。
 僕の心の中は、さながら極夜のようで、真っ暗です。この言葉も、スマホを弄っていた時に見かけた言葉で、かっこいいなぁと思って調べてみただけですが。
 凹んでいる時に、勉強などできるはずもありません。だって、やる気が起きないから。母親は僕の将来のことを思って没収したのでしょうが、今の僕にはただの偽善者で、勉強させるための嫌がらせにしか見えません。
 翌日、登校して教室に入ると、友人から声を掛けられました。
「昨日話あったのに、何で出てくれなかったの?」
 友人に訳を話しました。だから、しばらくやり取りができない、と。
「成程ねぇ。まぁ、しゃーないよな。次のテストで見返してやれよ。」
 友人には恵まれたものです。しかし、家に帰ると、その友人とコミュニケーションを取る手段が無いのです。僕の心は、一層落ち込んでいきました。授業も、頭に入れようとするので精一杯です。内容理解や応用は、家に帰ってから持て余している時間でやらないと…。
 いつもは美味しく感じる給食も、今日はあまり味がしないような気がしました。掃除も、「身が入っていないよ。大丈夫?」と担任の先生に心配されてしまいました。自分で言うのも恥ずかしいですが、普段は活発で真面目な僕が、ぼーっとしていたからでしょう。先生は優しいです。僕達のことをよく見てくれています。だからこそ、声をかけてくれたのではないでしょうか。
 昼休みもサッカーに誘われましたが気が乗らず、ぼーっと外を眺めていました。教室には、僕と文化部の数名の女子だけ。世界に僕一人しかいないような感覚です。外は太陽が照り付けているのに、僕の心の中は夜のままです。
 そんな時、突然肩を叩かれました。振り向くと、顔は知っているけど名前の出てこない先生が笑顔でこちらを見ていました。確か、相談員の先生でした。
 「少しお喋りしない?」
 意外な言葉でした。断る理由も無く、相談員の先生とカウンセリングルームに行きました。
 「いつも元気なのに、今日元気ないじゃない。何かあったの?」
 僕は昨日の夜の出来事を話しました。スマホを没収されたこと、母親が偽善者にしか見えないこと等、気づけば腹の内を全て曝け出していました。
 流石、相談員の先生です。話を聞き出すのがとても上手でした。そして、アドバイスを頂きました。
 「君は何か、これからしたいことある?」
 「うーん…。強いて言うなら物書きとかやってみたいです。」
 「小説とか?」
 「はい、そんな感じです」
 「そっかぁ。そしたら、やっぱり高校生になって、将来についていろいろ選べた方がいいよね。そうするためには、どうすればいいと思う?」
 「やっぱり、少しでもレベルの高い高校に行くべきですよね…。」
 「そうだね。その為には、何すればいいかな?」
 「勉強ですね、はい。」
 「その通り!スマホ弄りは受験終わってからでもできるし、かえって勉強に打ち込めるじゃん!チャンスと捉えて、目一杯やってごらん。」
 「はい、頑張ってみます。ありがとうございました。」
 気づけば、五時間目が始まって十五分程経っていました。少し焦りましたが、相談員の先生が一緒に来てくれたので、授業担当の先生にも笑顔で受け入れてもらえました。
 心の中に、太陽が昇り始めました。母親は、偽善者ではなかったと気づけました。やる気も出てきました。次のテストで、見返してやるとしましょう。遅れて参加した国語の授業でしたが、これが頭にどんどん入ってきて面白いこと面白いこと。六時間目も、この調子で受けられました。
 帰宅して、少しチョコレートを食べて、勉強机に向かいました。出遅れた国語の復習をして、過去問に挑んでみました。まずまずの結果でした。自分の弱点も見えてきました。
 将来、僕はどんな大人になっているか分かりません。想像もできません。でも、毎日を満足して生きられる大人になるために、少しだけスマホと距離を取ってみよう。何日この気持ちが続くか分からないけど、とりあえず、「やってみよう」。


 やっぱり暗い所から明るい所へ向かう話になってしまいますね、私の手癖(?)です。笑
 終始暗い話は書けても、終始明るい話はきっと書けないと思います。私の人生観・死生観によるものだと勝手に考えています。
 今朝、散歩の帰りに出勤途中の、遅刻ギリギリの友人に会いました。距離感をどうしようか悩んでいましたが、悩んでいたことが馬鹿らしくなるくらい、やっぱり親しいと思える友達でした。ただ、お誘いも断る理由がある時はきっちり断らないといけません。給料八割の分際ですから。今後、貯金していきます。笑

 さて、前回のキーワードは、

「雨」「モノレール」「排水口」

でした。この話は、かつて私が高校時代に使っていたスポーツセンターをモデルに書いたものです。といっても、競技は違いますが。ただ、高二の時の、陸上部長距離エースに負けずに一位で帰ってきたマラソン大会は、今でも私の黄金期だったと思います。

 今回の一曲は、ムック「My WORLD」。脱退してしまった元ドラム・SATOちのバースデーライブに行き、CDも買いました。凄く元気が出る一曲です。それを思い返すと、やっぱり少し寂しいですね。それでは、また。

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