歪んでも、なおそれを愛と呼ぶ 06
Before…
【十】 秀太が出勤した時、陽に微小たる変化が起きたことを知らされた。意思の疎通が図れるようになっていた。図れる、と言い切っていいものかは疑問符が付くが。
陽の独房は独自形態で、巡回ではなく交代で常に見張りが付く。それに堪忍したのか、自死を諦めるより仕方無かったようだ。ずっと部屋の片隅に座り込んでいる。その時、ふと漏れた言葉を当番者が聞いた。そこから若干の会話が続き、また元通りになってしまった。その記録を見る。
―午後十一時八分
藤瀬が呟いた。内容は以下の