見出し画像

ハレもケもハレ 1 : 家探しを始める前から、問い合わせをするまで

お付き合いをしている人と同棲をするべく動き出したことで人生の岐路に立っている気がしてきたので、心に移りゆく由無し事を綴ることにしました。経緯を綴った前回はこちらから。

🕊

本格的に初めて同棲の話が出たのは10月のこと。
明日なに食べようかと話していたとき、急に彼がLINEでリンクを送ってきたお店でのことだったのでよく覚えている。

そのとき同棲について出た結論は「アリかナシかで言えばかなりアリ」「でもお互い今の生活が整っているので、そう急ぎはしない」というものだった。
大学時代から数えてもう6年一人暮らしをしているわたしは他人のいる生活に怯んでしまったし、今年実家を出て都内で一人暮らしを始めた彼はやっと整えた生活がまた変わることにたじろいだ。そこで一旦話は帰結。

その次に会ったとき、それでもまだどちらからともなく話が出てきたので、デニーズでもうすこし踏み込んだ話をした。

お互いの貯金額。年収。ボーナスの金額。奨学金の有無。生活費と、その使い方。家賃に幾らまで出すつもりか。そのほかお金にまつわることをいくつか。

あとは家に求める条件を共有した。

完全シフト制のわたしと土日祝日休みの彼。病院勤務でフル出勤のわたしと、商社勤務で出社とリモートワークがそれぞれある彼。もともと1人の時間が必要なタチであるのは共通していたし、ライフスタイルが違うので、寝室を分けるというのは最初から共通認識だった。



となると、間取りは最低でも2DK、可能なら2LDK。そのほかに譲れないのは、コンロ2口以上、バストイレ別、独立洗面台、温水洗浄便座、室内洗濯機置き場、エアコン付き。あったら嬉しいのは、宅配ボックス。


同じ都内とはいえ、お互いの勤務地がそこそこ離れているので、なかなかエリアも決め難い。ひとまず付き合って1年が経つ、6月前後を目処にどうするか再度方針を固める旨を共有した。

それでも、浅草のフルーツパーラーで甘いものを食べてヒイコラ言っていた後に彼が帰り際に「多分また何年後かにああいう甘さ欲しくなると思うから、そのときはまた付き合って」と話してくれたことが嬉しかった。「いつまでも一緒にいようね」なんてことは言わないけれど、何年後かの彼の人生にも自分がいる前提なのが嬉しい。 

周りを見ていても「一緒になりたいからとりあえず結婚!」という人よりも「結婚を前提にまずは同棲から」という段取りをする人が多い。後戻りが出来なくなる関係になる前に、ある程度お互いの嫌なところを含めて真正面から向き合う期間が必要だと思うから。自分たちもそう思っていた。


そして「一緒に住む話のことなんだけど」と、我が家で食後にお茶を飲みながらくつろいでいるときに、久々に彼が持ちかけたのがつい最近のこと。

ここにも書いていたように、そう甘やかで穏やかな日々ばかりではなく喧嘩だってするようになった。それでも自分たちなりに、不器用ながら軌道修正することも覚えてきた頃だった。

「何月、というよりは良い物件に巡り合ったらかなと思うようになってきたんだけど、どうですか」

「たしかに」

そう言って彼が見せてくれたのは、幾つかお気に入り登録がされたSUUMOのアプリだった。
わたしの職場寄りで、彼の職場にも電車で1本で行けるようなエリアの物件。彼自らこうして動いてくれていることが嬉しかった。
というのも、あまり感情の起伏があるほうではなく、付き合っていてもたまに何を考えているか分からないことがある彼だからだ。一緒に暮らしたい!と思っているのは自分だけではないだろうか…?と思っていたので、こうして彼のほうから提案してくれることが嬉しかった。

その場でわたしもSUUMOのアプリをインストールして、物件を探す。そのタイミングで一旦話をおいて、一緒に住んだ場合の家賃・光熱費・家具家電の購入費・生活費の管理の仕方を話した。( これに関してはまたいずれ )

2点のポイントから所要時間や乗り換え条件を出して絞れる機能を見つけて、それを試す。最初の設定は、わたしの職場から60分/乗り換え1回、彼の職場から30分/乗り換え1回だったのを、「俺も同じ条件にして」と言うので切り替える。出てきた物件を見て、お互い「え?」と声が出た。

まさに自分たちの条件にピッタリで、しかも想像の半分程度の価格で、とても魅力的な物件が新着物件として挙げられていた。
「心理的瑕疵物件( いわゆる事故物件である )の跡地?!」「なんでこんな安いの?!」と2人で驚いてしまうほど魅力的な価格に、魅力的な立地。
え、え、とびっくりしている間に隣で彼がわたしの携帯からメールアドレスを打ち込んでいた。

「空き情報、問い合わせてみようか?」

こんなに容易く話が動くとは思わず、相変わらずびっくりしているわたしに「嫌じゃない?」と彼が問う。驚くほどあっさりと動き始めたことに戸惑っているだけで、嫌なはずがなかった。わたしがこくこくと首を縦に振るのを見て、彼がいとも簡単に問い合わせを済ませる。


【この度はSUUMOをご利用いただきありがとうございます。

お問い合わせ内容をお送りいたします。
今後改めて、お問い合わせいただいた不動産会社より、ご連絡をさせていただきます。………】


自分の手のなかに、ぽんと現れたメールを見て、内心ヒャッと声をあげた。すこしずつ日々が動いている。それは戸惑いでもあり、でもそれを超える喜びでもあった。

訳なのだが。


その日ちょうど父の誕生日だったので、実家の両親に電話をかけた。空き情報をすでに問い合わせたことは伏せて、「同棲するのってあり?」とごく軽い雰囲気で聞くと、母からピシャリと返ってきた。


「絶対にナシ。同棲するくらいなら結婚しなさい。婚約して両家の挨拶を済ませて入籍の日取りを決めて、それまでの数ヶ月間ならまだしも、とりあえず、なんていうのは絶対にダメ。」



あ、これは。と血の気が引いていくのがわかった。
人生は、うまくいかない。分かっていたけれど。
1歩進んで2歩下がるというべきか、はたまたこれはどう向き合うべきか。
続く母の言葉を聞きながら、じゃあ家族ってなんだ結婚ってなんだ、働くとは、大人とは。とごく抽象的な疑問ばかりが頭を飛び交う。

実は、ここまで事が起きたところで、このnoteを綴ることにしたのである。人生哲学モードは、続いていく。明日がどちらを向いているのかは、わたしにも両親にも彼にも、まだ分かっていない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?