見出し画像

#31  寒波がブリテン島を襲うので缶ビールを買って飲みながら帰る 30代からの英国語学留学記 2018年2月27日

歴史的寒波がブリテン島を襲っているらしく、パラっと雪が降ってきた。

2月の終わりのこの季節に雪が降るのはここイングランドではかなり珍しいらしい。

還暦近いおじいちゃん先生であるドミニク先生もこの時期にここまで冷えて雪が降るのはあまり記憶にない、とのこと。
イギリスは緯度が高い割には暖流の影響で日本よりも若干温暖で雪がたいして降らない国である。この現象はBeast from the Eastというらしく、スカンジナビア半島ら辺で気圧が高まり、東側から寒気がなだれ込む現象を指すらしい。日本でいう所の西高東低のような表現なのだろうか。
だが毎年発生する現象ではないため、このような寒気がブリテン島になだれ込むとインフラへの影響がとても大きい。

特に鉄道は世界最古の歴史を誇るが故に、産業革命当時に作られたモノを未だ騙し騙し使い続けている区間がかなりある。
日本最古の駅である新橋駅のホームが当時の基準、価値観で作ったため異常に狭いが拡張できないが、そのような状況がイギリスの各駅で起こっており、予想外の寒波、降雪への対応が物理的に出来ない。そのため多くの鉄道が休止という大惨事に。

だからかバス通勤や車通勤に切り替えた人が多いため、道路は大渋滞。
いつもの2.5倍ほどの時間がかかり見事遅刻。しかし僕以外の生徒、先生も軒並み遅刻しており、遅刻によるペナルティは今回は免除された。天候理由の遅刻はどうしよううもないからね。

この日は放課後に誰でも参加できる特別授業がある、とのことでそこに飛び入り参加した。
この語学学校はオックスフォードという世界有数の学園都市にあるため、夕方以降はオックスフォードの大学入学を狙う学生や、それに準じた高度な学力を持っている人たちをターゲットにした特別プログラムが設けられている。

普段は彼ら彼女らと交流する機会は全くないのだが、この日は普通の生徒であっても彼らと同じ授業を受けられるプログラムが実験的に設けられていため、自己研鑽のため参加した。
一応オヌールとカルロスも誘ったのだが、オヌールはやる気がなく、カルロスは数日後には帰国という状況で余裕がなかったため二人とも参加を断ってきた。独りで参加か、キツイぜ!でもしゃあない

特別プログラムを受けている生徒たちの集団に一人乗り込む。
思いの外、人は少ない、というか、午前午後の語学学習プログラムを受けている人間で参加したのは僕だけであった。
そして悲しいことに日本人も僕だけ。多くは他の東アジア系の連中、韓国人が中国人の若者ばかり。

正直初めて知り合う若者たち、それも超エリート候補生と絡むのはシンドイと思っていたが、風貌から判断すると僕と同じ世代、寧ろ年上の人たちが彼らと離れた所に陣取っていた席があったため、これ幸いとそこになだれ込む。

彼らは皆、僕の来訪を歓迎してくれたが、話をすると母国の大学で助教を務めていたり、リアル医者であったりと極端にエリートな人ばかりで恐縮。そして何故か全員理系。
当然ながら俺なんかより遥かに英語力がある人であり、全体的に気後れしてしまった。一応日本の大学で文系のそれなりの大学で語学を専門としていたが、理系の人間に語学力で圧倒されるというのはとんでもない屈辱である。

一体俺は大学で何を納めてきたのか

だが幸か不幸か、皆年の功故に人間力が優れており、僕が置いてけぼりにならないよう、最大限に配慮してくれた。日本人だと伝えると宮崎駿と村上春樹の名を挙げて良い国である、と褒めてくれた。宮崎駿はともかく僕は村上春樹が好きではないため、正直リアクションに困ったが、何かしらこちらが得となって話ができるような話題を振って褒めてくれるのは本当にありがたい。

特にアルゼンチン人の小児科医の推定40代の女性は、MC能力が異常に高く、明らかに英語力が劣る僕へのケア能力が高くかなり助けられた。
カルロスも非常に良い奴である、アルゼンチンの大人は人間的に非常に優れている、と僕の中でアルゼンチンの評価が爆上がりしてしまった。

ちなみにログラム自体は各自気になる出来事をフリートークする、というものであり、SNSによる影響、特にフェイクニュースについて、という中々込入った話題になった。
語学力の問題で正直大して参加できなかったが、どの国でもSNSで少数派へのヘイトが公言されており、拡散されるフェイクニュースが大きな問題になっていること、そして皆ドナルド・トランプとアメリカが大嫌いであることがわかった。

全体的に話が高度であり、僕の語学力では全くついていけなかったが、一応ついていこうと尽力したため、プログラム終了後は知恵熱が出たかのように物凄い徒労感に包まれた。そして同世代、年上の様々な社会人に囲まれ大して何も爪痕を残せなかった事実に胸を潰され、自己嫌悪がより一層高まることになった。

Beast from the Eastから来る無慈悲な寒風に曝されるのはツライ。
だが3週経って流石にオックスフォードの町もイギリスでの暮らし方も慣れてきたので、帰宅のバス停の反対側にあるSainsbury'sというスーパーでビールを買って苦しみを紛らわす。

前の職場で嫌なことがあり自己嫌悪に陥っている時は、いつもコンビニで酒を買って飲みながら帰路についたものだが、ここイギリスでもこの種の悪しき習慣を実践するとは。
2缶別のビールを買い、バス停で待っている間一つを飲み干し、残りの一つはホストファミリー家へ戻る道中で歩きながら飲み干す。

正直ツライ。僕は価値のある人間なのか。今までそれなりに頑張ってきた筈だが全然ダメだったのか。意味がなかったのか。

悪い自問自動をしながら異国の硬いベットで寝る。

何とかしなくては!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?